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私にはまだ理解しきれない理由だった。

皆もそうで、志水先生はさらに説明する。


「私は孤独で、人の優しさを知らなかったんです。だからSの下心を優しさと思いこんでました。けど美少女に助けられて本当の優しさを知りました」


志水先生は小さい頃は男子からいじめられ、成長してからは遠巻きに騒がれていた。

女子にはいじめられずにいたが敵意は向けられていた。

これでは本当の優しさを知るはずがない。

だからSに騙され、美少女に一度注意された時だって信じられなかった。


それを証拠を用意してまで信じさせた美少女こそ優しい。

そしてその美少女は今の先生のように女の子が好きだったはずだ。美を守りたかったのだろう。


「女の子は本当の優しさを見抜けないと不幸になります。不幸な女の子より幸せな女の子の方がかわいいに決まっています。だから私は女の子に優しくしようと決め、女の子を守るために先生になったのです」


先生が先生になったいきさつ。

女の子好きという心配になる先生の振る舞いだけど、私はその優しさに救われた。

髪を切られた私を最初に慰めたのは志水先生だ。リーチ君達ゼロ組も優しかったけど、今でも私は考える。

誰にも優しくされなかったら、私はどうなっただろう。

きっとモデルの仕事なんてしなかったし、男子に苦手意識を持ったままかもしれない。この高い身長だって好きになれなかったはずだ。


「ちなみに先生、男子には優しくしようとは思わなかったの?」

「男子は優しくすると勘違いをして付け上がるじゃないですか。だから普通にします」

「……うん、まぁ俺らは普通で十分だけどさ。実際男が先生みたいな美人に優しくされたら勘違いしてストーカーになるだろうし」


リーチ君は別に先生に甘やかされたい訳ではない。それに志水先生の普通は『普通に優しい』という事なので不満はないだろう。

でもリーチ君達のようなしっかりした人なら『付け上がる』事もなさそうだ。


「そういやSはその後どうしたの?」

「私が卒業するまでに教師を辞めましたよ。ていうか、逮捕されたみたいですけど」

「逮捕!?……そりゃあ手慣れてたようだから他にもやってただろうけど」


教師というのは普通の人がしたら許されない事でも許されてしまうものだ。なのに逮捕なんて、かなりの事をしていたに違いない。


「どうやらSは私より先輩の世代でかなり酷い事をしていたみたいです。それが決定的だったようで」

「もう教師を辞めたならよかった。でも美少女は?当時の先生だってその後探したんだろ」

「……見つかりませんでした」

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