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自信を持てるのか先生は拳を強く握って語った。確かに先生は美少女に詳しそうだ。詳しいというよりはするどいというのかもしれない。
写真じゃなく実物に会えば絶対わかるだろう。
「それでその美少女は先生に何したんだよ」
リーチ君が焦れた様子で尋ねた。先生の自信はともかく、私達は先生がこうなってしまった理由を知りたい。一体何をしてもらって、先生はこんなになってしまったのか、感謝を伝えたいのか。
「助けてもらったんです。当時、私は男性教師からセクハラを受けていたので」
まるで授業のように感情を込めずに語る先生。
男子三人はびっくりして何も言えなくなった。小学生男児とは思えない程しっかりしている彼らは、これが踏み込んでいい話題かわからないのだろう。
なので同性である私が代表して尋ねる。
「それは、私達が聞いていい話ですか?」
「あぁ、ごめんなさい。気を使わせましたね。大丈夫ですよ。助けられたからこそ未遂で済んだのですから」
未遂だって怖かっただろうに、先生は笑って言った。私達もほっとして肩の力が抜ける。
先生は続けた。
「その男性教師は仮にSとしておきましょうか。普通の教師でした。授業が優れてはいないけど遅れてはいない真面目で、生徒からは好かれても嫌われてもいませんでした」
教師Sは見るからに悪い教師ではなかったのだろう。まぁ見た目から問題がわかるようじゃ誰だって避けるしクレー厶も来る。
「さっきも言いましたが、中学生の頃の私は孤独でした。両親とも友達とも踏み込んだ話ができなかったんです」
「両親とも?」
「ええ、不仲という訳ではないのですが、あまり感心を持たれていないというか」
私達からしてみれば信じられない事だった。特に家族全員に溺愛されている末っ子リーチ君はぼかんと口を開けている。きっと虐待されているわけじゃないし、ちゃんと育てられている。でもきっと、困りごとを相談できるような両親じゃなかったんだ。
「Sは私のそんな所につけ込もうとしたのでしょうね。何かと私の相談に乗ろうとしていました。そして私もSの考えに気付けずいい先生だと思っていました」
本心をさらしだして話せるような相手が志水先生にはいなかったという。
もし誰か相談できる相手がいれば先生はSに騙される事はなかったし、誰かが気付いて助けてあげたはずだ。
ひきょうとはこういう事だと思う。
「そのうちにSは私を自宅に誘いました。珍しい本があるからおいで、と」
「それは……」
「小夜子さんも絶対にそういうのについて行ってはいけませんよ。他に誰かいるとか、いくらでも嘘はつけますからね。どうしても行く場合はご両親に相談して下さい」
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