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それもそのはず。中学生のような年上が、私達小学生に頼るような事はあまりないからだ。
「頼まれたって言うのかな。藤子ねーちゃんから聞いた話だから」
ややめんどくさそうにリーチ君はお姉さんの名前を出した。
藤子さんはアイドル志望で小さくて可愛い中学生。ただ性格は素直じゃないから、『頼まれた』なんて事はないのかもしれない。
それでもリーチ君は弟としてなんとかしたいと思った事なのだろう。
「なんでも、中等部に幽霊が出るらしい」
「ユーレイ?」
「あぁ。図書室で居残りしていると女の笑い声がするんだってよ」
ユーレイ、なのかな。それ。
普通に女子生徒が笑ってるだけとか、そんな風に考えられるけど。しかも藤子さんが怖がるような話だとは思えない。だって笑ってるだけなら別に怖くないし。
「これは俺のねーちゃんが体験した話だ。ねーちゃんが図書委員の友達を迎えに行った時、図書室に女の笑い声がしたらしい。『うふ、うふ』と……」
リーチ君による怪談が始まった。
普段の元気で明るい雰囲気の彼の声は怪談用に落ち着いた声に変えている。
たすく君はそれをわくわくした様子で聞いているし、ザクロ君は……お面でわからない。
「誰か女子が残ってる。なら図書委員的には居残ってる奴は追い出さなきゃならねー。だからねーちゃんと友達はその人に図書室から出て行くよう伝えようと、声の聞こえる方向に向かったんだ」
怪談らしい展開になってきた。私は予想した展開に備えて息をのむ。
「ただ、そこに誰も居なかった。確かに笑い声がした方向なのに。聞き間違いだと思ったが、その場には本がやたらと散らばっていたんだ」
「ひっ」
まるでついさっきまでそこに居たような、幽霊らしき存在に悲鳴を上げたのはザクロ君だった。そこにリーチ君はたたみかける。
「その本ってのは中等部の卒業アルバムで、この学校でいじめ自殺した幽霊がいじめっこへの復讐のためにアルバム探してたんじゃないか、って説が出てる」
「こわい……もうむりこわい……」
相変わらずたすく君は楽しそうに聞いていたし、私は予想がついていてさほど怖くはなかった。
ただザクロ君はそうでもなく、素直に怖さを口にした。
さっきから微動だにしていないように見えたけど、それは硬直していたのだろう。今は震えている。怯えた表情はお面で見えないけど、怖がっていることはよくわかった。
キツネのお面をつけて怪談の一部になっていそうなザクロ君が、ここまで怪談が苦手というのは意外だ。
「ザクロは相変わらずこういうの苦手だなー。運動神経良い奴ってなんでか幽霊は苦手だからな」
「幽霊は殴っても効かないし走っても追い付かれる……!」
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