火の鳥と白狼はソラで踊る

 コスモナウトたちが去った後に、俺とマイラは宇宙のなかにいた。

 上下左右、全て星に囲まれて。目に見える1000億の星の輝きは、命の灯だ。

 ひとりなんかじゃない。この宇宙には無限の命と意思に溢れている。

 かれらとも、いつか会える日が訪れる。その日が待ち遠しい。

 そして、眼下には――ひときわ輝く星ひとつ。

 地球、俺たちの故郷。色は、あお。

「マイラ、君の瞳と同じだね」

「宇宙で一番きれいな星。わたし、ずっと思っていた」

 マイラは地球と同じ色の瞳を輝かせて、俺に教える。

 美しいとともに、愛おしさも覚えた。

 このちっぽけな星で、たくさんの命がせいいっぱいに生きているのだ。

 俺の知らない言葉で話し、見たことのない服を着て、想像もできない味を食している。

 俺は自分の星のことをまだ、何もわかっていなかった。

 ああ、故郷に戻りたい。旅に出て、世界を知りたかった。

 俺たちをここに送り出してくれた命に、感謝を伝えたい。

 今目にしている美しさを、見て欲しかった。

 この溢れる想いをどうすれば……。

「まるす、踊ろ。わたしも同じ」

 マイラは右手を差し出す。

 頭には白銀のティアラ、純白のドレスを着て、薄いピンクのシューズをはいている。

 今の姿は、彼女の憧れたプリマ、それに、花嫁のようだった。

「うん。伝えよう、みんなに。俺と君のありったけの想いを」

 俺は彼女の手を取った。


 俺とマイラは手を繋ぎ、心を重ねる。

 踊りは、人生と同じだ。

 一人でもできる。けれど、手を取り合って一緒に踊れる人がいれば、もっと楽しい。さらに、美しく、輝ける。

 自分の想いを、二乗になって伝えることができるのだ。


 この宇宙に生きる全ての命たちに、伝えます。

 自分のソラを失わないでください。

 あなたが生まれたのは、必ず意味があるのですから。 

 夢を追い続けるのは、楽な道ではありません。

 道の途中で傷つき、嫌になることもあります。

 夢を捨てて、楽になりたいと思うのは何度もあるでしょう。

 けれども、諦めないでください。

 羽を休めて、ソラを見上げる。

 その間は、決して無駄ではないのです。

 あなたが諦めなければ、救いはあります。

 わたしが、マイラと出会ったように。

 ひとつの出会いは、より多くの出会いに繋がる。

 師、友との出会いは、あなたを強くします。

 だから、あなたはひとりじゃない。 

 そして、あなたが羽ばたくとき――


 わたしは、ここにいます。いつか、この宇宙で会いましょう。

  

 

 

 

 





 

 


 

 


 

 

 


 


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