【第2部】 第44話 『地球探索』 その1
私は、郊外地区の荒れたビルが建ち並ぶ区域にいました。
この地下のどこかに、『禁断の都市』に続く、地下高速交通機関の駅があるはずなのです。・・・噂では、ですが。
郊外地区にも、もちろん、住んでいる方たちはあります。
昔の映画によく登場するような、『ゾンビー』さんとか『キョンシー』さんとかは、さすがに存在しません。
みな、尊厳ある『人間』さんなのですが、中央政府からは、一定の距離を置く『世捨て人』と呼ばれる方がたなのです。
その事情は、様々です。
みな、自由に生きてはいるのですが、経済的には、大概の人が困窮しています。
人類が絶滅に瀕していた時期に、何らかの事情で、巨大都市の中央部と外縁部が、それぞれ孤立状態になったのです。
大変、プライバシーに障ることでもあり、その事情を、あえて研究し、そこに立ち入ろうとする人は、ほとんどいません。
しかし、現在の大統領は、それ自体が問題だと考えていて、なぜこうなってしまったのか、その事情をよく精査しながら、この分断や、格差自体の是正を図るべきだとお考えでした。
郊外で暮らす方々には、中央政府の補助制度がいくらかは、あります。
また、『郊外居住者対策事業』として、中央政府の『公共事業』が割り当てられたりもしています。
ただし、郊外地区の『管理』は、多くある『自治会』が自ら行う事になっていて、中央政府は口出しがほとんどできません。
補助を受けることは、政府に介入の余地を与えることになると考えて、受け入れない『自治会』も、かなりあります。
こうした事情は、長い時間の中で作られてしまったことで、そう簡単には解消できないことなのです。
郊外部で力を持っているのは、『自治会長』さんたちです。
現在、50人ほど、いらっしゃると、聞きます。
本来、スパイである私は、このうち数人の自治会長さんとは面識があります。
会うためには、お互い、ギブアンドテイクなので、お土産は、必要です。
しかも、禁断地域行きの『地下高速交通路』については、特に巨大な価値がある情報のひとつで、現政権はその情報を持っていません。
それは、このシステムを構築した、当時の権力構造は破壊され、情報は散逸してしまい、誰がその情報を、どのように、現在持っているのか、あるいは、もう消滅したのか、そういうことも、すでによくわからないのです。
『地下高速交通路』は、大繁栄期には、地球上のいたるところに設置されていました。
もちろん、宇宙空間を利用する、『高度交通システム』もありました。
しかし、地球上の大部分が壊滅状態になり、意味が無くなったため、現在は動いていません。
政府や、その高官や、『彼』が潜入している、あの女社長さんのような、大金持ちさんの、会社や経営者ご自身さんたちは、自らの宇宙船を保持していますし、それに次ぐような人たちや、ビジネスマンには、月や火星行きの『定期航路』が開設されています。
生活がやっとな庶民には、まあ、あまり縁がありません。
これはいつの時代も似たようなものです。
高速鉄道や、飛行機など、かつて存在したそうした交通機関も、毎日使う方もあれば、一生ほとんど縁がない方も、それなりに、多かったわけですから。
なお、もうひとつの、『超貴重情報』と言われるのが、『残された核弾頭』の所在情報だったのです。
地球政府の公式見解では、『核兵器は廃絶された』ことになっていますが、実は、『どこかに』、まだ使用可能な『核弾頭』と『ICBM』が残されているという、情報が秘かに流れてはいたのです。
しかし、・・・・まあ、つまり、いずれにせよ、現在、地球の大部分は放射能汚染や水没、荒廃などで『利用不可能』になったため、その分、人類は宇宙に進出していたわけなのです。
今回、私は、どうやら、自分の政府からも、追われる身になったようですし、ある目的の為に、伝説の『禁断』の都市に行く決心をしたのです。
そこは、地球の反対側の、深い『海の底』にある、と考えられています。
上空からは見えないのです。
しかし、そこが本当に存在するのか、あるいは、行くことが出来るのかが、確実では、ありませんでした。
ある『自治会長』さまが、その秘密を握っているらしいという情報がありました。
その人は、中央から来る人間とは、絶対に会わないのだそうです。
私は、面識がある『自治会長』さんに、なんとかして、仲立ちしてもらおうと思ったのです。
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