第42話 『転換』 その3

 副首相と社長一行は、地下の『星の館』に現れたのです。


 しかし、どうやら、副首相様はここが初めてではないらしい。


「ふん。以前より、すっきりしたかな?」


「そうですか? まあ、確かに、ちょっとチャラチャラした装飾は取っ払いましたから。高級感の方を出したかったものですから。」


「高級感ねぇ。まあ、結構なことだ。首相は喜ぶことだろう。」


「まあ、珍しい。首相様を持ち上げるとは。」


「ははは。余裕と言うものだよ。当時は、ぎりぎりになっていた。」


「なるほど。どうぞ。例のお部屋を経由しないと、その先に行けませんから。」


 『被保護者』が案内された、あの部屋の事でしょう。


 そうして、今、その部屋には、完全に女性化した彼が待っていたのです。


 私が言いますのもなんですが、大変に妖しい美しさに輝いておりました。


 変身後に身につけた、あの下着姿のままの上に、透き通ったレースのガウンを纏っていました。


 大変に興味深い場面です。


 私は、詳細に観察を行い、そこをそのまま、地球に中継送信しておりました。


 まさか、地球側が、あのような事態になっていたとは、さすがに考えてはおりませんでした。


 明らかに、システム上の欠陥だったのです。



  ********     ********



 これは、『保護者』も『被保護者』も、見てはいない光景である。


 「君たちは、なんだね?」


  長官はうめいた。


 「あなたを、逮捕します。」


 「誰の命令だね?」


 「もちろん、首相閣下です。」


 「ばかな。聞いてみる。待ちたまえ。」


 「無駄です。首相閣下は、保護されました。」


 「む。クーデターか?」


 乱入した一団のリーダーらしき男が言った。


 「そう言うなら、それでも結構です。」


 「首謀者は? ふん・・・どうせ、あいつだろうがな。」


 「連れて行け。ああ、ここにも中継が来ていたな。ぶざまなことだな。」


 画面を見ながら乱入者のリーダーが罵った。


 長官は、ただちに、どこかに連行された。


 その時、本部にいたエージェントやスタッフたちも、みな捕獲された。


 政府の職員同士でもあり、銃撃戦などには、ならなかったのだ。


 しかし、ひとりだけ、脱出に成功した『スパイ』が、いたのだった。



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