第41話 『転換』 その2
現代の地球人ならば、みな学校で教えられるのですから、知らない方は少ないでしょうけれど、現在『月』と『火星』には、おおかた100万人近くが移住していると考えられます。
『月』の場合は、『月』生まれの『地球人』と言うことで、大方、共通の認識ができておりますが、『火星』の場合は、そうは行きませんでした。
『火星』に移住した第1世代の子供たちは、事実上『火星人』となったわけなのです。
でも、『第2世代』は、まだ『地球』に対する親密感がありましたが、その子供たちとなると、地球を目の前で見たこともない子の方が多くなり、経済や力による格差も生じたため、『火星人同士』のいさかいも多くなりました。
そうして、当然ながら『独立派』が生じ、『地球派』と争い、内戦、独立戦争とエスカレートしてゆきました。
しかしながら、まだ『火星人』の力は、それほどは大きくなく、結局は『地球』の前に敗れ去りました。
ところが、その後、地球自体が滅亡の危機に見舞われ、『火星人』は、恐ろしい感染病の侵入を防ごうと必死になったのです。
にもかかわらず、火星移住地にも疫病が広がり、地球と共に共倒れになる寸前まで行きました。
そこで、『火星』に、ついに偉人が生まれました。
ダーダマリベス博士です。
移住4世の博士は、この疫病の治療方法を確立し、『火星人』のみならず、『地球人』も救ったのです。
それ以来、『火星』には、自治権が認められることになったのです。
これには、地球側にも『ウナ』首相と言う、偉大な女性首相が誕生したことも、非常に大きかったのではありましたが。
彼女は、闘いではない解決方法を見出すべきだと主張しました。
滅亡寸前にまで至ったことから、彼女に頑なに抵抗する男性政治家を、生き残りの『地球人』は見限り、最後は彼女にかけたのです。
火星では、いまこそ、『地球人』を壊滅させるべきだと言う、『火星統一党』の過激な主張が主流になりつつあったものを、ダーダマリベス博士は命がけで退け、ウナ首相とともに、協調の道を選択したのでした。
しかし、今になって、この、副首相様たちは、また復古主義を目指しておりました。
確かに『地球人』の力は、急速に回復してきていたのです。
現在の首相は、ウナ首相の子孫と言われます。
私は、彼を支持しておりますが、副首相様は、アンドロイドの人権を、軽んじるような発言を時に行っており、『人間至上主義者』ではないかと疑われてもいました。
アンドロイドたちは、当時、『地球人類』を、必死に救おうとしたのです。
その功績は、誰もが知るところです。
けれども、最近、『人間至上主義』に、共感する『地球人』が、増加してきていました。
彼らは、『火星人』も、敵視する傾向があったのです。
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「今、入った情報では、あの方は、すでに『星娘』に生まれ変わったとのことですわ。」
社長さんがエレベーターの中で言いました。
「ほう。そりゃあ、見てみたい。いや、是非、会ってみたいな。」
首席秘書官が、副首相の耳元で、何か、ささやきました。
「まあ、そう言うな。会うだけなら、危険はなかろう。どうかな、社長さん。」
「まあ、問題はないでしょう。過去の記憶は、すべて消去しましたから。今は、完全な、女ですわ。でも、会うだけで良いのですわね? 副首相様?」
「また、社長さん、危ない事を言うな。」
「ほほほほほほ。誰かが、彼女の初体験をしてやらなくては、なりませんから。是非、彼女と、子孫をおつくりになってはいかが? 間違いなく、『新人類』となる子供ですよ。」
「そりゃあ、まあ、止めとく。君子、危うきになんとかだ。」
「では、その様子をご覧になりますか?」
「いやあ・・・そういう趣味はない。自分は、そこまで悪趣味ではない。」
「あらまあ・・・ほほほほほほ。意外と、臆病な方、ですわね。他人には、お勧めになるのに。ほほほほほほ。」
副首相は、少し、むっと、したようでした。
まあ、そこまで自主的にやる人ではなくて、よかったと言うべきでなのでしょうか。
しかし、物事と言うものは、大体、なぜか奇妙な方向に行くものなのです。
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