第26話 『関係性』その4
社長が、やたらお酒が強い、というのは、嫌というほど、この時、認識させられたのである。
しかも、大食いである。
滅亡しかけた人類だが、お酒は最後まで捨てなかった。
おかげさまで、今日でも世界のかなり多くのブランドが生き残ったというわけだ。
「あなた、恋人は?」
「はあ~~~。恋人ですかあ~~~? いませんよ、そんなもん。いたら、ここに来ません。」
「うん。そりゃあ、説得力がありすぎね。」
「でしょう?」
「あなた、でも、女の子が欲しくない?」
「いやあ、まあ。特に必要でもないですよ。お酒と同じです。」
「ふうん・・・まあ、会計係としては、それが良い適性にはなるけども、ここは孤独なところよ。」
「ぼくは、孤独が趣味ですから。」
「あらま。ほら、飲んで・・・・ふうん。そ・う・な・ん・だ。」
ぼくは、実際、よほどのお酒を飲んでも、そう狂わない。
そのように訓練したから。
しかし、この社長は、やはりただ者ではない。
「まあ、いずれ、ほっといても、貴方はすぐに見つけるでしょうから、こちらから言っておこうと思うの。ここには、隠し保養施設がある。」
「ひぇ? 求人上に書いていたものでしょう?」
「ほらほら、お酒、こぼしてる。あのね。まあ、そうです。さすが。でも、そこは、会社のモノではなくて、あくまでわたくしの個人財産なんです。別事業よ。しかも、慈善事業みたいなもので、収益はほとんどない。経費は、個人が負担してる。だから、会社の会計には入らない。別のモノなの。」
「はあ~~~~~。でも、土地は会社のモノでしょう?」
「ぶ~~~! 違います。そこまで調べてなかった? この星自体が、私有物ですもの。」
「おわ~~~~~!」
いや、もちろん、知らないわけではない。
この星全体が、もともと彼女の所有物である。
確かに、細かいところでは、いいささか、きわどい事をしているらしいのは分かっているが、滅亡の危機以来、地球政府は、辺境惑星の開発では、あまりうるさい事は言わない。税金上の特例とか、まあ、いろいろ、特例は山とある。つまり、すぐに違法脱税や公序良俗違反とかではない。
それでも、さらにあやしいと、当局が睨んだから、ぼくは、ここにいるわけだが。
ついでを言えば、大物が後ろで絡んでると、上は見ている。
わが大臣とは、大方、反目している大物である。
社長が、あえて、こう言ってきたと言うことは、やはり、ちょと、怪しまれたかな?
「会計処理や、税務処理や倫理上の問題なども、きちんと整理して、ちゃんと政府の承認済み。問題はない。適正な『娯楽施設』よ。」
「まあ、そうなんでしょうね。」
「でもね・・・・・。まあ、あたくしのお家の中みたいなものだから。公然と見えてるわけでもない。プライバシーは、守らなくてはね。いい、これは知っていても、口外はしないお約束の種類のものよ。」
「はあ~~~~~、了解しましたあ。」
「見たい?」
「いやあ~~~~。今日は遠慮しますよお。酔っぱらっちゃったです。」
「確かに。いいわ、また、時間が出来たらね。マスター、『ジャヤコガニュアン風ステーキ』の大ね。」
「ひぇ。社長まだ食べるんですか?」
「あたりまえ。エネルギーの元だもの。あなたもどう?」
「じゃ、いただきます。」
「よしよし。じゃ、マスターもう一つ追加ね。」
「あいよ!!」
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