第9話 『鉱山』その1
この星で、レアメタルなどが取れるという。
レアメタル(希少金属)という言い方は、どうも、地球でも我が地域だけのようで、大方では、大昔から、マイナーメタルと呼ばれる。
宇宙開発の進展とともに、さまざまな貴重なものが、あちこちの星で見つかってきた。
当初は多くの国の国家戦略として、ばらばらに開発されてきた。
しかし、戦争や環境破壊や、超大規模な自然災害で、気が付いてみたら、地球上に生き残った人類は、もうわずか1万人弱という、人類滅亡の大危機を迎えていたのだ。
それで、やっとこさ、地球は地域自治国家の集合体としての、一つの国家となった。
最近は、人口も3億人くらいにまで回復したが、ここまでゆかないとまとまらなかったことは、人類自身の大きな悔いとなって残っている。
しかし、回復してくると、また悪い癖が出てくるものだ。
どうして、人類は争いを止めないのか、という結論は、まだ出ていない。
滅亡しないと、出ないかもしれない。
さて、工場長に案内されて、ぼくは、鉱山の中に降りて行った。
かつて、鉱山は厳しい労働の現場だった。
収入は、それなりにあったけれども。
現在は、危険な場所の作業は、ほぼロボットが行うので、後方にいる人間には、あまり大きな危険はない。
とはいえ、ロボットは故障する。
修理ロボットもいるが、最終的には人間が面倒を見なければならない。
人数は昔に比べて、ぐっと少なくて済むが、結構、手はかかるのである。
驚いたのは、先ほどの美しい女性も同行していたことだ。
なんでも、本来は、彼女が案内役で、工場長がわざわざ出てくることは、あまりないらしい。
「いやあ、社長からの指示ですよ。あなた、気に入られたらしい、良い事だが、・・・気を付けた方がいい。よけいなことだがね。」
工場長は、ぼくの耳元で、そうささやいた。
「はあ? ・・・」
彼女もいるので、あまり詳細に聴くことも出来ないような感じがした。
ぼくたちは、3人とも、けっこう立派な作業服を身につけている。
と、言っても、宇宙服に比べたら、そりゃあ簡素なものだ。
「この作業服を、甘く見てはいけません。ナイフなどはまったく通さないし、拳銃の玉でも大丈夫です。少々の熱線銃とかも、撥ね退けてしまいます。この靴もそうですよ。もし、溶岩踏んでも大丈夫です。また、このヘルメットも、危険を感知したら、自動的に頭部全体をカヴァーしてくれます。」
彼女が、そう案内してくれた。
「なるほど。」
と、ぼくは感心してみせる。
ぼくたちが乗ったモノレールは、地上部にある選別工場内を、ぐるっと巡って行く。
ロボット作業員がぼつぼつと見えるが、人間らしき姿はない。
「あそこが、選別集中管理室ですよ。」
彼女が手を挙げて指し示してくれた。
確かに、巨大な窓があって、その中では、照明が薄明るく輝いている。
「これから、ぐるっと回って、あの管理室の中も、ゆっくり通過します。でも、人が多くいるのは、もう少し深い場所です。そこに、作業員の『第1詰所』があります。その先に、作業の先端部が広がっております。今日だけで全部見ることは不可能なので、その中の二つを見て回りましょう。」
彼女がそう言った。
「なかなか、面白いですよ。最先端の掘削装置の一部が見えますよ。全体はとても巨大で、見えるのはしっぽの部分だけですけども。ははは。」
工場長が、陽気に笑った。
見た目よりは、良い人らしい。
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