第39話 最終決戦(終)

「そのうっうしい髪、叩き斬ってやるぜッ」

 刀を十字に重ねる。

「ゴッド・ブーメラン!」

 うらっっっっと、投げ飛ばす。

 勢いよく回転するブーメランは、向かってくる蛇髪を手当たり次第に斬っていく。


『邪ァァァ』

 肉体にたどり着く前に、それを剣が叩き落とす。

 失敗か。違うこれは次なる攻撃への布石であった。

「ハァァァァァァ」

 Gゴセイオンは弓と刀を取り出すと、音々に狙いを定め構える。

「ゴッド・アローッッッッッッッ!」

 刀を矢として放つ、白虎の必殺技を放つ。

『チイッ!』

 盾を構えて矢を防ぐが、突き抜けた刃先が左目に触れた。

 ゴクリと生唾を飲み込む。

 

 これほどなのか、このイザナギ宇宙の戦士の力は。受肉しココのルールに縛られてるとはいえ、自分はヨモツ神の一柱。それが押されているとは。ゴセイオンそして黒鋼ジンよ。貴様らは強いと、音々は素直に賛辞を贈った。

 

「はぁはぁはぁはぁはぁ・・・・・・そいつはどうもご丁寧に」

 ジンの呼吸は荒く乱れている。

「大丈夫ですか兄さん」

「あぁ、ヨモツを見てると、こう魂をギュッて掴まれる感じがしてよ」

「あれは別宇宙から来た侵略者。わたし達とは真逆の存在ですからね」

「反発しあうってか」

「! 攻撃来ます!」

 ガンッ。刀と剣がぶつかり合う。

 ギリギリギリギリギリギリ。重い一撃にもジンは臆する事も無く均衡を保っている。

『邪ッ』

 ナイフを握る三本目、四本目の腕が機体の脇腹を襲う。

「ふんにゅっ!」

 朱雀の翼の一対が、腕を押さえて通さない。

『まだまだッ!』

 五本目六本目の腕が機体を持ち上げ、大地に叩き落とす。

 シュュュュル。下半身の尾が両足に絡み浮き上がる。

 ガンッ。ガンッ。ガンッ。何度も何度も繰り返し大地に叩きつけられた。

「はうっっ」

「くそっっっ……分・身」

 Gゴセイオンは六つの光球になり、尾から脱出。上空高く舞い上がり再び合身した。


『しぶとい奴らめ』


「お前に言われたくないわ」

 太ももの左右カバー開放。柄を取り出すと接続する。

 両肩のアームが外れ、柄の先端部分に合体。

「グラビティ・ハンマー」

 ジンはブンブンブンブンと振り回すと、機体よりも長いハンマーを頭上で構える。

「これならどうだッッ!」 

 重力を振り落とす。

「グラビティ・ハンマァァァ・ブレイクッッッツ!」



『ッウッッッッ』

 音々は唸り声をあげる。

 メキャメキャメキャ。足場が球体の形に潰れていく。

 攻撃が効いてる。蛇の鱗に亀裂が走りだす。

 自分の周囲だけ、ハンマーから放たれる超重力で押し潰される。

 この技の範囲内では打つ手がない。

 反撃しようにも身動きがとれないのだ。

『…………』

 歯を食いしばり耐えている。

 待っているのだ。その時が来るのを。

「俺達の勝ちだ!」

 ジンの喜びの声に、音々は笑みを浮かべ反応する。

 慢心、おごり。それとも恐怖からくる焦りか。

 ほんの僅かな気持ちの揺らぎ。

 それを音々は待っていたのだ。

「ぐはっッッッ」

 Gゴセイオンが真横に吹き飛ぶ。

 空間に穴が開いていた。そこから蛇の尾が伸びていた。

 潰れた足場に黒い穴があり、その中に尾が入り込んでいた。


(消耗激しいから、あまり使いたくないがな)

 音々は重力から解放され、ゼェッゼェッと肩で息をする。

(全く肉の体は重くて扱いづらい)

 脳裏に浮かぶは、フェルト姿の自分を抱きしめる北斗の姿。

 別宇宙から来た侵略神である自分を、嫁として愛してくれた青年。信仰する一柱の神では無く、一人の女性として北斗は接してくれた。

 その愛しき夫を神殺しの炎焔で、もう二度と再会する事が出来ない虚無へと誘ったゴセイオン。

 絶対に許すものかと、音々は牙を剥き出して吠えた。

『邪ッッッッッッッッ』



「な、なにがあったの」

「わかんねぇ」

 次から次へと、Gゴセイオンの周囲に穴が開く。

「はうっっ嫌な予感」

 シュッ。頭部の角を何かが掠める。

 鱗が生えた腕が通り過ぎて、穴へと消えていく。

「やっぱりぃぃ」

「朱雀大丈夫だ。俺が守ってやる」

「うん」

 ぷしゃゃっ。嬉しくて湯気が吹き出す。

「わたしもお姉ちゃん達も、兄さんを守るから!」

「おぅ!」

 再び襲ってくる腕をかわした。


 シュッシュッ。

 次から次へと、縦横無尽に攻撃を仕掛けてくる。

 何処の穴から出てくるか、全く予想がつかない。

「まるでモグラ叩きだな」

「高難度過ぎますぅ」

「いやノーミスでクリアしてやるぜ」

 そう言ってジンは一番近くの穴へ飛び込む。

「に、兄さん?」

「うりゃぁぁぁぁ!」

 抜けた先は音々の背後。

「出口はいっぱいあっても、入り口は一つってな!」

『貴様ぁぁぁぁぁぁぁ』

 気づいた時にはもう遅い。

「おらっ!」

 ゴッド・ブレイドを背中から突き刺した。

 火焔の刃が、肉体を守る鎧と皮膚を覆う鎧を突き破る。

『ギャアアアアアアアアアアアアアッッッ!』

「どうした自慢の防御力は?」

『あたしから離れろォォォッッッッ!』

 腕が機体を掴み強引に引き離されると、大地に叩きつけられた。

「痛ッッうまくいかねぇか」

「いえ。このままショートレンジでいきましょう。攻撃は効いてます。やはり奴は、火焔に弱い」

 目の前で腹部の傷を再生していく音々を見て、朱雀はそう断言する。

 妹がそう言うならば、自分は素直に信じよう。

 勝利の為に、無心で戦う。只それだけでいい。

(何度でも立ち上がり、刀を構えてやるぜ)

 再び大地を踏みしめる。


 ギンッギンッ。ぶつかり合う刃と刃。

 ナイフでの素早い攻撃を落ち着いて、刀で受け流す。

 変だ。動きが単調すぎる。

 火焔を恐れて、踏み込んでこれないのか。

 いや違う。この首筋がチリチリとするこの感じは、殺気。

 音々が何かを企んでいるのは、間違いない。

(……来るッ!)

 爆発するように四散するは、音々の象徴的な長い蛇髪。

『ジャァアアアアアアアアアアア』 

 機体を覆う様に蛇達が一斉に牙をむく。

「オラッッッッッッ!」

 白刃一閃。襲ってきた髪全てを斬った。

『フフフッ』

 音々は笑い、舌をシュルシュルと動かした。

 それが合図になり、切断して周囲に散っていた全ての蛇が活動を再開する。 「これが狙いかよ」

 足元から絡みつき、這い上がってくる蛇を追い払おうとするが数が多すぎる。瞬く間に身体全身に絡みつかれ、動きを封じられた。

『シャアァァァァァ』

 音々の口が耳まで大きく裂け、白い牙がむき出しになる。

 がぶりと首筋に噛みつき装甲を貫くと、デッドオアアライブを体内に流し込んできた。

 もうすぐ修理が終わるというのに、このままではいけない。

「ふんぬうううううう!」

 朱雀の火焔の翼が、Gゴセイオンの機体と共に音々を包み込む。

 たちどころに激しく燃え広がる紅蓮の炎。

「わたし達の本体がイカれるのが先か、そっちが塵になるか我慢比べよッ!」


『ひぃぃぃぃ』

 灼熱の炎の中で、音々の悲鳴が聞こえた。

 燃えて朽ちて再生を繰り返す蛇神の体は、炎への恐怖の為かガタガタガタと震えている。牙を抜き攻撃を止めて逃げ出そうと、もがき苦しむ。

 音々は気づいていたのだ。

 この震えが実は恐怖の為ではない事に。 

 これはゴセイオンの攻撃であった。

 それに気づき、彼女は逃げ出そうとあがいているのだ。

「カカカカ、どうかな我が毒の味は……」

 Gゴセイオンの胸部が蛇の頭部へと変化し、音々のわき腹を噛んでいる。

「目には目を。歯に歯を。そして蛇には蛇ですわ」

 青龍は口元に指を当てて、二イッと笑う。

「パパ、これくらいの量の硫酸なら問題ない。今の私たちに敵は無し!」

 白虎は腹を愛おしそうに撫でた。

「おまたせっお兄ちゃん! イッていいよ! 溜まってたの一気にどぴゅーって出しちゃえッ! あたし達が見ててあげるから!」

 麒麟はジンにロック解除コードを伝えた。


「へへへっ、頼もしい姉妹達だぜ」

 バサッ。ジンは火焔の翼を大きく広げ上空へ羽ばたく。

『おのれぇぇぇえええええええ!!!!!!』

 音々は毒によって麻痺した体を動かせない。

 隅々まで浸透した毒で再生しても直ぐに汚染される。

 毒の威力が再生を上回り、治癒が間に合わない。

「これで終わりだ」

 そしてジンは叫ぶ。麒麟より教えられたコードを。


「ゴセイオン・ビームッッッッッ!」


 右掌から発射したそれは、太陽の光。

 全ての生きるものに降り注ぐ、命の輝き。


『……ホクト……ッ……』

 音々は愛しき夫の名を呼ぶと、塵となり虚無へと旅立って行った。



「見事だよ。ジン、ゴセイオンチーム」

 月にある次元の門に手をかけ、アクゥは結末を見届ける。

「お父さん?」

「帰ろう。僕達の世界へ」

 アクゥは取り戻した娘と共に門をくぐった。

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