第38話 最終決戦(4)

 右腕を失い体は傷だらけ。幸い出血は止まったが、状況が不利なのは変わらない。

 音々に攻撃は当たるが、ダメージは与える事は出来ない。これでは只の消耗戦だ。

 それでも倒さなければならない。

 蛇は太古より、死と再生のシンボルとされていた。その説話通り治癒を繰り返す敵の目的は、この世界の侵略。

 生きる物全てを黄泉へと導くことだ。敗北すれば世界は滅びる。


「負けてたまるもんですかッッ!」

 左腕を胸の前で曲げ、ドリルを回転させる。

「ドリルブレイク・クラッシャッッッ!」

 螺旋を描き炎焔のドリルとなり、音々に突っ込んでいく。

 牙を向く蛇髪を燃やし、盾をはじく。

「今度こそッッ!」

 先端が胸の中心に届いた。

 ガリガリガリガリガリガリ。

 鱗で覆われた鎧を抉る。

『グウゥゥゥゥゥッッ』

 初めて苦痛の声を引き出す。

「だぁああああああああッッッ!」

 上半身を貫き、空へ飛ぶ。

「ここまでしてもダメなのか」

 ギチギチギチギチギチギチ。

 時を巻き戻す様に、音々の上半身は元の状態へ戻る。

(あの再生能力をアイツは過信し肉体その物はもろい。そこに反撃のチャンスはある。まだなの麒麟ちゃん……お姉ちゃん……)


「!」

 朱雀はゴセイオンの体に付着する泥に気づいた。

「いつの間に」

 今の攻撃でついた汚れか。この泥には大量の水分が含まれている。

「ま、まさか」

 ジュウジョウジュウ。外装が煙をあげて溶けていく。デッドオアアライブの力か。

 マズい。この攻撃で確実に防御力は落ちてしまう。

『ジャアアアアアッッ!』

 下半身から伸びる尾の攻撃。

 雑念に気を取られた為に、避けられない。

 腹部に強い一撃が、ゴセイオンを地に沈める。

「あっ……あぁ」

 駄目なのか。やはり私はあの人にはなれないのか。

 ごめんなさいお姉ちゃん達、麒麟ちゃん。

 私が弱いから皆を巻き込んでしまったと、朱雀は意識を失った姉妹に懺悔する。

 

 チロチロと舌なめずりをして、音々が近づく。

 髪の一部から剣を作りだすと、トドメとばかりに大きく振りかぶる。

「いやっいやぁッッッ助けて兄さん!」

 朱雀は死を覚悟し、愛する兄に助けを求めた。

「ウルフ・トマホークッッ!」

 回転する黒色の斧が、剣を吹き飛ばす。

「あっ……あぁ……にいさん……」

 ポロポロポロポロと、涙が溢れていく。

「よく頑張ったな。あとは俺がやる」

 それは待ち望んだジンの声。

「ジンやっと来たか」

「お兄ちゃん遅いよ」

「無事でよかったパパ」

「ここから反撃開始ですわね旦那様」

 姉妹も意識を取り戻し、空に浮かぶ巨神を見上げた。

「てめぇよくも俺の家族に手を出したな。絶対に許さねえ!」

『ジャァアアアアアアアアアアア』 

 音々は威嚇の声をあげ、鎌首をもたげた。



「悪い遅くなった」

 ゴセイオンの前に降りると、腕を取り立たせる。

「行けるか? みんな」

「はい!」

 二機は音々から距離を取る為に、大空へ飛ぶ。

「青龍! 合身だイケるな」

「えぇよろしくてよ」

「聖獣・合身ッッッ!」

「Gゴセイオンッッッッッ!」

 ジンが叫び、五姉妹が叫ぶ。

 

 色とりどりに輝く六つの光球。

 その中で変形合身が始まる。

 黒鋼色の頭部とコアになったジンは、黒色の胸部と寸胴の中に飲み込まれる。

 その胴体の下に、膝から角を生やす脚と太い尾の下半身が合体。

 胸部に山吹色の巨大な肩が結合し、肘に刀を装備し三本の爪を拳から生やす白銀の腕がはまった。

 そして紅蓮の炎焔で出来た紅の四対の翼が、背中に近づくと一体化する。

 ジンと暁姉妹の六人は心も体も一つに結ばれたのだ。

 超機神となったその姿は、荒ぶる魔獣の王。

「荒神王……ってやつかな」

「いやGゴセイオンの方が名前カッコいいぞ」

「麒麟さん、白虎さん集中」

 長女の一声で、ピリッと緩んだ気持ちが引き締まる。

「修理はどうだ?」

「もう少しだよ。玄武姉」

「では引き続き頼みますわ……朱雀さんは旦那様を支えてあげて。わたくし達はバックアップにまわります」

「はい!」


『邪ッッツツ!』  

 音々の放つ槍がGゴセイオンを襲う。ジンは超越した動体視力で受け止めた。

「効くかよ、こんなもん」

 メラメラメラメラと槍は炎に包まれて、灰となる。

 火焔。

 原初に産み出された力は、死の女神を焼き殺した最初の神殺し。

 ジンは炎の中から鞘を取り出し、刀身がそりあがった火焔の刀を引き抜く。

「ゴッド・ブレイド」

 胸の位置で肘を曲げ、刃先を蛇神に向けた。


「朱雀」

「はい兄さん」

「全てが終わったらよ、遊びに行こうぜ」

「そ、そ、それはまさかデー…………」

 語尾がだんだん小さくなって、聞きとれない。

「みんなで遊びによ」

「み、みんなとですか……」

 急に声のトーンが落ちていく。

「あぁ、お前達と姉貴、ほむらや中島も誘ってよ」

「ワー、トテモタノシソウー」


「そういや学校に麒麟と二人で来た時はびっくりしたよ。偽名まで使ってさ」

「変でしたか? 制服姿」

 朱雀が照れて、頬が真っ赤に染まっていく。

「嬉しかった……かな」

「はうっ。そんなに喜んでくれるなら、毎日こ、こ、こすぷ……」

「夢だったんだよ。兄弟で学校にってのが」


 脳裏に浮かぶは、二人の腹違いの兄一真と桜が学校に通う姿。

 偶然それを見てしまい唇を噛みしめる幼きジンは、可憐の手を強く握りしめていた。


「……夢叶ってよかったね。兄さん……」

 朱雀は笑みを浮かべて頷く。

「うん。ならさっさとコイツを倒して楽しもう。みんなで幸せになろう」

「あぁ、俺達の日常を守るんだ」

 ジンは火焔の刀で立ち向かう。

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