3章 青龍

第12話 Liar(1)

 無限に広がる大宇宙イザナギには、異なる世界が無数に重なりあい(パラレルワールド)存在する。

 ジンのいる世界とは、別の進化した玄武たちの聖世界もその一つだ。

 聖世界は宇宙の平和を守る組織、銀河連合に所属している。連合には次元の壁を越えて沢山の異世界人が所属していた。


 ある日の事だ。最新兵器鬼神阿修羅が盗まれた。犯人は直ぐにわかった。阿修羅担当のエンジニアであるアクゥが奪ったのだ。

 すぐにゴセイオンチームに出撃命令が出された。二つの理由があったからだ。一つは阿修羅と互角に戦える事。そしてアクゥが同じ聖世界出身の同族だったからだ。同族の汚名は自分達で雪げとの上からの指示であった。 

 

 無数に輝く星々の光に見守られ、三体の巨神が戦っていた。

 赤き鳳凰型の朱雀と蒼い龍型の青龍が、金色の人型の鬼神阿修羅と交戦している。


「はううぅぅ、どうしようお姉ちゃん。鬼神がご機嫌ななめで怖いです」

 四枚の翼をはためかせ、阿修羅の三面の瞳から発射する光線を、朱雀はかわしていく。

「どうやらアクゥが小細工をしたようですわね」

『ギィィィィィィッ』

 暴走する機体は、華麗に宇宙(そら)を泳ぎ近づいてくる青龍を捕まえようと、六つの腕を伸ばした。

「残念ね。使い手(パイロット)がいない鬼神など、わたくし達の敵ではありません」

 青龍は長いボディを阿修羅の身体に巻き付かせ、動きを抑え込む。

「やったね!」

「うふふふふ。そうね、でもまだ……よ」

『ギシャアァァァァァ!』

 拘束を解こうともがく。鬼神は癇癪を起こした子供の様に暴れだした。

「しつこい殿方は嫌われますわよ。いい加減大人しくしなさいな」

「合体してニセイオンになれば……」

 首を振る青龍。

「朱雀さん、ここはわたくしに任せて、あなたは玄武さん達を探すのです」

「はぅぅっ、でもっ!」

「おほほほほほ。わたくしを誰だと思って。名門、暁家の長女青龍ですわよ」

 口に手をあてて、おどける。

「そしてみんなのお姉ちゃん。わたくしは大丈夫。お行きなさい朱雀さん」

 不安げな朱雀を安心させる為に、優しく微笑む。

「うん。待っててね。みんなを連れて戻ってくるから」

 朱雀はその場から離脱した。


「……お姉ちゃん……」

 朱雀は飛ぶ。姉妹だけが感じるシグナル目指して、地球へと向かう。

 見えてきた。宇宙の蒼いエメラルド地球。

「朱雀姉」

 そう言って月から黄色の鯨型宇宙船が近づいてきた。五姉妹の末っ子、麒麟であった。

「麒麟ちゃん、無事だったのね良かった。青龍お姉ちゃんが……」

「うん。知ってる。急ごう助けに」


「見つけた鬼神」

 麒麟の声が船内に響く。ブリッジにいる朱雀の目の前には、闇が広がっていた。

「うぅここは何?」

「次元と次元の狭間。異空間だよ」

「こんな不気味なとこにお姉ちゃんが……あんっ」

 チクリと首筋に針が刺さる。

「な、何をし……た……の」

 薄れていく意識の中で朱雀は見た。金色に輝く鬼神の姿を。



 夜が来る。日は落ちて闇が訪れる。成神市の隣街、神嶋の繁華街は平日最後の仕事を終えた人々で賑わっていた。

 湿気が混じる熱気と、刺激の強いアルコール臭が大気に溶け込む。

 酒と食事と自由恋愛。あらゆる娯楽欲求を提供できる店舗が立ち並ぶ。その通りを明らかに場違いな少女二人が歩いていた。

 お揃いのパーカーとミニスカート姿の朱雀と麒麟であった。

 裾をヒラヒラさせながら早速と熱気の中を進むは麒麟。

「人ごみは苦手ですぅ」

 はわわはわわと、妹を追う朱雀。

「なんだ姉ちゃんら、援交か。いくらでしゃぶる?」

 油と泥で汚れたツナギを着た酔っ払いの集団。その中の一人が二人に絡み出した。

「チッ」

 麒麟は舌打ちし、顎を打ち抜く。

「メッだよ! 麒麟ちゃん」

「絡んでくる方が悪い」

「ガキッ!」

 酔っ払い達に囲まれる二人。殴られた男は顎をさすり、麒麟の胸ぐらを掴む。

「あちぃぃぃぃぃッ」

「どうした!」

「こいつ、ライターで俺っちの指を焼きやがったぁぁ」

 麒麟の手から煙が出ていた。

「鬱陶しい死ね!」

 掌から砲身が飛び出し、光が集まり出す。

「駄目ッッッツ麒麟!」

 ウォォォォンンンン。

 刹那、腹の底に響く重低音。

 ビリビリと空間が揺れ周囲の人々は耳を押さえ、音がした方向を見た。

「はうっ、あ、あなたは……まさか……」



 車道に一台の大型のスクータ。それに跨がる少年がアクセルから手を離し、フルフェイスのヘルメットを脱ぐと、赤く染めた短髪が外気に触れた。

「何してる。俺の庭で」

「あっ! 誰の庭だってこらっ」

 頭に血が登りきった男は、少年に足を向けるが仲間に止められる。

「おいっ、あの狼マークのスカジャンに赤髪。影狼のジンだ。止めとけ、恨まれたら最後、徹底的に追い込まれるぞ」

「夜道の一人歩きに気をつけろぉぉぉ」

 納得はいかないが、家族まで襲われたらたまったもんではないと、去っていった。

「朱雀に、麒麟か」

 ジンは夢で知った二人の名前を呼ぶ。

「うぅ私たちを知ってる!?」

「探してたよジンお兄ちゃん、お姉達の元に連れてって」

 麒麟は人懐っこい笑顔を見せた。

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