第11話 Iunctio(終)

 機体とジンがリンクする。

 視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚。

 五感全てが、ニセイオンとシンクロした。

「!」

 目に映るは、大きな空と広がる大地。

 刹那、足が重力に掴まれた。

「ジンどうした? 高度が落ちている」

「飛び方、わかんねぇ」

『な、なんと……』

 唖然とする二人。

 当然である。自力で地球人は、飛ぶことが出来ないのだ。

 グルグルグルと回転しながら、真っ逆さまに地表へ落ちていく。

『装甲展開。スラスター開放』

 白虎のアシストにより、速度が緩やかになっていった。

 ズシン。舞う土煙。大地を足で踏みしめる。

「危機一髪だな」

「助かったぜ白虎」

『これぐらいおやすいご用さ……ジン殿、操縦は私か姉さんが……』

 首を振るジン。

「それは呑めねぇ」

『どうして? これは遊びじゃない。ヘタしたら死ぬよ』

「わかってる。それでもだ。俺がやる」

『ジン殿!』

 白虎は声を荒げる。

「白虎、ジンの好きなようにやらせる。これは命令だ」

『……姉さん……』

「お願いだ白虎、最後までやらせてくれ。ジャンク獣は大事な女に手をだした。だから、その落とし前は俺自身がつけなきゃならねぇんだ」

「格好つけさせてくれ。頼む」と、頭を下げる。

『むう……もしかしてジン殿は馬鹿なのか……』

「カッカッカッ、うつけよ、しかも大うつけだ」

 玄武は笑う。

「だがそれでいい。尻拭いは我らにまかせろ」

『……ホントにヤバくなったら、私が操縦するぞ……』

「あぁ。二人共ありがとう」



 翼の再生を終えたジャンク獣は、また一つ地球人について学習した。

 残虐と慈愛を合わせもつ生命体か。この世界の人間は我らに限りなく近い。

 ジンを興味深く観察する。

『戦闘中のデーターを送れ』

 本体(アクゥ)からの指令に、獣は触手を構えて了承する。



「ジン来るぞ!」

 複数の触手先端が開かれ、そこにエネルギーが集まると光線が放たれる。

「デュワッ」

 回避。前転しながら、次々とかわしていく。

「ダァッッ!」

 掌を上に向ける。銀色のナイフが具現化。狙いを定め、それを弾丸のように撃ちだした。

『ほぅ』

 獣は翼を大きく羽ばたかせ、刀を避けると空を飛ぶ。

『白虎の技か。ジンよ、貴様どこまで機体を操れる』

「その体で試して見やがれッ!」

 両腕をクロスし取り出したのは、三日月に反った刀身。それを左右重ね合わせると上空へ放った。

 勢いよく回転するそれは、獣を襲うが身体をひねり回避される。

『!』

 獣の目に映るは、刀を矢の様にして弓を構えるニセイオンの姿。

『そのための布石か』

「ゴッド・アローォォォォォォオオ!」

『無駄だッ!』

 翼から眼が出現し、怪音波のアンコール。

 刀が腐食し、錆びていく。

 ジンは口角を釣り上げ、逃げずに重心をグッと下げる。

「……」

 玄武はジンを信じ、何も言わない。

『……!……』

 白虎は、姉が信じたジンに命を預けた。

「にぃいい」

 ジンは笑い声をあげた。 

『ま、まさか』

 ザクリッ。肉を抉る音がする。

『な、何だと』

 大きくバランスを崩し、飛行できない。

 何故ならそれは……。

『右翼が千切れたッッッ!』

 上空で弧を描くは、三日月の刀(ブーメラン)。

「ゴッド・ブーメランってな」

 刀が獣の背後から翼を切断したのだ。

『な、なんとジン殿はそこまで考えていたのか!』

「まだだぜ。白虎! 見せてやるぜ地球人の底力ッ!」

 錐揉み状に落下する獣目掛けて、ニセイオンはジャンプする。

「オラッ!」

 獣の胴体に重い右蹴りの一撃。そのまま膝を曲げ背後へ回り込むと、触手蠢く頭部と左翼を両腕で、胴体を両足で挟み固定する。

「セイハッッッッ!」

 そのまま真っ逆さまに大地に落ちていく。

 受け身を取れない獣は、脳と脊髄にあたる部分を破壊され、生命活動を停止した。

 馬波流奥義【玄武】がトドメをさしたのだ。


「むしゃむしゃ」「はぐはぐはぐ」

 戦闘形態を解いた姉妹は、ジャンク獣の生体パーツを貪る。

 身も心もクタクタのジンは、大地に横たわりそれを眺めていた。

「なぁ、そんなの喰って大丈夫なのか」

 ジンの脳裏に浮かぶは、洗脳された白虎の姿。

「んんっ」

 汚れた唇を手で拭い、潤んだ瞳で近づいてくる成人姿の玄武。

 ゆっさゆっさゆっさゆっさ。ボインボインボインとおっぱいが揺れ動き、空間を支配する。

「大丈夫だ。コアは破壊した。あれはもう只のパーツに過ぎない」

 そう言って、ジンの上に跨がる。

 うふふふと淫靡に笑みを浮かべ女神は、学ランのボタンを一つ一つ外していく。

「こ、こんなところで……」

 視線が、揺れ動くおっぱい様から離れない。

「早くしないと、ジンの身体に支障をきたしちゃう。これは医療行為だから……ね」

 ペロペロと乳首に舌を這わせた。

「はぁん! なら私はジン殿の荒ぶる神をお祓いする神聖なる行為を」

 白虎は慌ててジンの顔面に座った。

「く、苦しいっ」

「大丈夫だから大丈夫だから。五秒前からカウントダウンするから。ぴゅっぴゅっぴゅって、すぐに楽になるから」

 白虎は、尻をぐいぐいと押しつける。

「だから、息がっ……ぬっ!」

 轟。突如激しい殺気がジンにぶつけられた。

「ジャンク獣まだ生きてたのか!……って」

 ゴゴゴゴゴ。

「ジンちゃんの……」

 ザワリと髪の毛が逆立ち、悪魔の形相を浮かべたほむらが仁王立ちしている。

「ひ、ひぃ」

 ジンは悲鳴をあげ、姉妹は抱き合い震えた。

「バカぁッッ!」

 八坂流奥義ドリルほむらパンチが、ジンの顎を貫いた。

「あまぞんっ!」

 ばったりと大地に倒れ、三途の川を覗いた。



「はわわわわ、お姉ちゃん達が地球人の魔の手に落ちてしまったですぅ」

 赤髪を肩まで伸ばした玄武に似た少女が、その光景を空の上から見ていた。

「……先帰るよ朱雀お姉」

 朱雀の背後から金髪ツインテールの少女が話しかける。

「はうぅ待ってよ麒麟ちゃん、お姉ちゃんを置いてかないで~」



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