第10話 Iunctio(5)

「あんっっジンちゃんらめぇぇぇん……そこは出すところだよ……」

 ほむらの寝言が聞こえる。

 一体どんな夢を見ているのだろうか。へらへらと口元は締まりなく、涎が垂れている。それでもその表情はとても幸せそうで、この感じならメンタル面も大丈夫だろうと、胸をなで下ろす。

「ジン、彼女は無事だ。どこも異常はない」

「そうかよかったよ」

 ほむらを抱え、地面に座るジンの元へ急いだ。

 上空では巨神同士の戦いが始まっている。

 ジンはほむらを受け取り、優しい眼差しで幼馴染を見つめると髪を撫でた。

「ごめんな、巻き込んでしまって。お前になにかあったら俺は……」

 ギュウッと抱きしめる。

「約束する。もう二度とお前を危険な目にあわせない」

「……ジン……すまない……」

 玄武は唇を強く噛む。

「お前のせいじゃないし白虎のせいでもない。悪いのはアクゥだ。だろ?」

「あ……あぁそうだな」

 玄武は心のモヤモヤを振り払うように頭を振り、手を差し伸べる。

「さぁ立て、反撃開始だ」

「あぁ、いくぜ相棒。次はこっちの番だ」

 手を強く握り、ジンは口角を釣り上げた。

「コネクト・ジン・インサート!」

 光輝き、黒の球体に三人は包まれていく。

 


 走っている。

 太く逞しい四肢が空を蹴り、白虎は大空を走っている。

 それを追う様にして、巨大な翼を生やしたジャンク獣が飛んでいた。

 翼を羽ばたく度に強風が吹き荒れる。

「ガルルルルルッ」

 彼女の生体装甲が異変を察して逆立つ。

 蝙蝠型の翼から眼のような模様が現れると、そこから怪音波が鳴り響いたのだ。

 あれはマズいと、全速力で離脱する。

 かわせない速度ではない。スピードならこちらが上だ。

『ほう。流石に素早いな』

 二発三発と音波を発生させる。

 タンッタンッタンッ。空を蹴り全てかわす。

『ならばこれならどうだ』

 翼が下方に向く。

「まさか」

『そのまさかよッ!』

 音波を地上に向けて発射する。それに触れた建物が一瞬で錆、腐食し崩れていった。

「しまった! 地上には姉さん達がッ」

 尻を振り、尾を形成する蛇腹刀から無数の刃をミサイルの様に撃ち出し、牽制。急いで地上に向かう。

『背中ががら空きだ!』

 翼を羽ばたかせ、発生させた竜巻が刃を吹き飛ばす。

『死ねッ!』

 背中に狙いを定め、瞳の模様が振動する。

「死ぬのはてめぇだッ!」

 斧を握りしめたジン玄武が、模様を切断する。

『おのれぇぇぇぇぇぇぇ!』

 重力に引かれ、錐揉み状に落ちていった。


「姉さん達無事だったのね」

 安堵した白虎が横に並んだ。

「おぅ!」

 ジンの元気な声が、コクピットルームに響く。

「あの子も?」

 心配そうに、ほむらの身を案じた。

「大丈夫だ。ぬかりはない」

 玄武が簡易ベッドで寝息をたてている、ほむらを見つめ微笑む。

「良かった……なら全力で行けるね、姉さん」

「あぁ、我らを舐めたことを後悔させてやるぞ」

 ニィィッ。

 姉妹は口角を釣り上げた。

「ジン、準備はいいか?」

「お、おぅ? 何する気だ」

「決まってるだろッ合体だッッ!」

 玄武は腕を寸胴な腰に当て、平らな胸をそらした。



「はぁっ?」

「カカカカカカ行っくぞぉぉ!」

 玄武と白虎は光球になると、大空高く急上昇。

「ぐぐぐぐぐぐっ」

 急激なGは生身にはキツイ。歯を食いしばり耐える。

「雰囲気つくりだ。これを引け」

 頭上からレバーが降りてくる。

「そうか! そういうノリ嫌いじゃないぜ!」

 レバー強く握りしめる。

「ウオオオオオオオオオオオオオッ!」

「聖獣合体ッッッッッッ!」

 玄武が叫び、ジンもノリノリで叫ぶ。

「ニセイオンッッッッッッ!」

 白虎が吠えた。

 ジンはレバーをスライドすると、黒と白の二つの光球は混ざりあい一つとなった。

「デュワァァァァァァァァァ」

 光球から現れたのは、女性型の白いフォルムに黒い甲冑を纏った巨神。(ギガンティック)

 額には二本の角。ツルッとしたフェイスガード。二つ胸の膨らみの中央には白光球が埋め込まれている。

 腰はくびれて異常に細いが、両腕両足は太く逞しい。

 仮面から覗く瞳が、地上で吼えるジャンク獣を睨みつけた。


『ジン殿、その……あの……』

 どんよりと沈んだ白虎の声が、ルーム内部に響く。

「おぅ白虎、改めて宜しくな。俺は黒鋼ジンだ」

『う、うん。私は【聖世界】の機械人。銀河連合に所属する宇宙刑事、暁・白虎だ。好きな食べ物はアン……』

「自己紹介はあとにしろ。来るぞ」

 地上に落ちた獣は口を大きく開くと、周囲に散らばる残骸を喰っていた。

 むしゃむしゃむしゃと咀嚼し飲み込む。

 スクラップを取り込み、攻撃で失った翼が再生していく。

「地上にはアイツを治す部品がうじゃうじゃってか。玄武、やらせろ」

「こ、こんなところで…………そ、それに戦闘中だし……妹見てるし……ほむらに悪いし……で、でもジンが望むなら……んっ……」

 頬を真っ赤に染め、目をつぶる。

『わ、私だってジン殿が望むならやぶさかでは……』

「ち、違うわ! エロ姉妹! 操縦をや・ら・せ・ろ」

 そうかこいつらは姉妹はこういう性格なのかと、ジンは頭を抱える。

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