第4話 Anfang(4)

「コネクト・バリア」

 半透明の球体が怪獣周囲を覆った。

「これでよし」

「どうやって……アレと戦う……ギガンティックに……なれるのか……」

 ジンの呼吸は激しく、土気色の表情で胸をおさえうずくまっている。

「正直に言おう。まだ部品が足りない」

「もっと……吸え」

 手首をぐっと差し出した。

「駄目だ。これ以上はお主が死ぬ」

「ギガンティック……になれば戦えるんだろ……頼む姉貴やダチ達を守ってくれ……」

 苦渋に満ちた表情でジンに近づく。

「ごめんなさい。我らのせいで」

「気にすんな……悪いのはアクゥだ……叩き潰せ」

 油汗を流しながらニヤリと笑う。

「わかった。お主の命、我が預かる」

 玄武は力強く手をにぎりしめた。


 身を守るバリアの中で、二人の裸体が激しく動いていた。

 ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ。性的な音と甘い淫靡な匂いが汗と混じり合う。

「せめて快楽の中で」

 玄武はジンの上で腰をグラインドする。

「ヌッ」

 快楽か苦痛か、ジンの声が漏れだす。

「……我慢するな……体内の快楽に身を委ねよ」

 のそりと花弁の中で無数の触手が蠢く。蜜にまみれたオスの首筋に絡むと、強く締め上げた。

「ヒッッ」

 透明な液体が気泡となり、たらりたらりと口から溢れカチカチな体の潤滑剤となる。

 蜜と溶け合ったソレが力を分散させ、マウントから逃がさない。

「ふっ、ふっ、ふっ」

 ジンは呼吸を小刻みに刻み、頭上で跳ね回る乳房へと掌を突き上げた。

 ぷるんぷるんと、肉厚のクッションが衝撃を吸収し指先をハジく。

「触りたい?」

 ジンの上で朱にそまり、蠢く体の重心を前方へと移動する。

 乳房は重力に引かれ大地を目指した。

「んんっ」

 初めて玄武は可愛く声をもらした。

 転がす。螺旋の動きでツンと尖る先端を指先でハジく。だがジンの反撃をここまでであった。

「っぎぃ」

 ピンと足首が伸びる。

 ぶるぶると体が小刻みに震え、声を出して大きくのけぞった。

 大量に吐き出されるナノマシンを花弁は美味そうに飲み込む。


「コネクト・ジン・インサート!」


 全てを共有した玄武は、ジンの快楽を自らの体でも味わった。

「あぁぁぁッッッ」

 二人は今一つとなる。


 ジンは気づくと椅子に座っていた。

 ドクンドクンドクンドクン。

 心が落ち着く音が周囲に響いている。

「ここはどこだ」

 立ち上がろうとするが動けない。肉体が黒い触手で創られた椅子と融合しているのだ。

 不思議と恐怖感は無かった。椅子しかない球体の中に拘束されていても聞こえてくる音のせいなのか自然体でいられた。

「気づいたか」

 少女の姿をした半透明な玄武が宙に浮いていた。

「ここはなんだ?」

「我が本体の中だよ」

「ふ~ん……なんかコクピットみてぇ」

「お主ごと残された部品を体内に取り入れたのさ。急造だがよく出来てるだろ」

「あぁ。文字通り合体したわけか」

「お主は我で」

「俺がお前か」

 ジンの視界が本体とリンクする。

 外の景色が見えた。目の前にはビルの屋上と住宅街の屋根。そして蜘蛛型の怪獣。

「アクゥ……」

「いやあれは只のジャンク(分身)、オリジナルではない」

「ならジャンク獣だな」


「ギャアアアァアアアス」

 現れた巨神を敵と認識した獣は叫び声をあげ、襲いかかってくる。


「来る!」

「体をお主に託す。地球での戦いまだ慣れぬ」

「任せろッ!」

 デュワァァァッと気合いを入れ前屈みに構えた。



『こいつは誰だ』

 ジャンク獣は目の前に現れた巨神を見てそう思った。

 オルジナルから引き継いだデータによると、こいつはギガンティック・玄武だ。

 黒い外皮骨格に鱗状の装甲。ツルツルとしたシンプルなデザイン。

 フルフェイス型の頭部にフェイスガード。そこからつり上がった目が見える。

 両手の指に鉤爪と長い尾てい骨が生えていた。

 なる程ここまでは記録通りだ。

 ……アレか。

 違和感の正体に気づいた。

 へそにあたる箇所に丸い球体があった。

 そしてだ、睨みつけてくるあのムカつく瞳を俺は知っている。

 獣はそう思考した瞬間、体内から湧き出す負の感情に支配された。

『ギャアアアス』



「行くぞコラッ!」

 ジンは巨神をまるで自分の体のように違和感なく操る。

 大地を踏みしめる感触。頬にあたる風のリアルな感覚。

 ロボット(巨神)をマスタースレーブシステムで操縦するというよりも、一体化してロボそのものになったという方が、しっくりくる。

「お主の五感はこちら側でコントロールする。安心して戦え」

「おぉッ!」

 獣の複数の瞳がライトの様に点滅する。

 八本の腕が襲いかかる。

『目だ!』

『鼻だ!』

『耳だ!』

 人体の急所である箇所を徹底的に攻撃してくるが、五姉妹の中で最強の防御力をもつこの機体には全く効かない。

 かわしきれない打撃も有効打にはならなかった。

「糞がッ。ずいぶんと人間に詳しいじゃねぇか」

 連打の中、一本の腕に狙い定め左腕を絡める。右拳の中指の関節を少し立たせ、獣の鎖骨と鎖骨の隙間に捻り込む。

 ギチリッ。装甲が軋む音が鳴る。

 そこを支点に風を切り頭部に叩きつけるは、硬く鋭利な右肘。

 蜘蛛の顔面の半分が割れ、体勢を崩した。

 ジンの攻撃は、まだ終わらない。重心が一点に集中した足を右踵で刈り上げる。

 ズズズン。激しい地鳴りとグラグラと揺れる大地。

 倒れた獣の上でジンはマウントを取っていた。

「馬波(ばなみ)流格闘術『鎌斧(れんぷ』」

 ニイッとフェイスガードの下でジンは笑った。

「す、凄い。我が本体をこの様に操るとは……」

 キュュンと胸が高鳴り、下腹部が疼き濡れる。

「お前の肉体とても具合がいいぜ」

「ぐ、具合がいい」

 頬を真っ赤に染めて、バタバタと足をバタつかせた。

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