「我を見よ。己を見よ」と大鹿は言った。かつて王子は臆病者と呼ばれていた。今、尊き龍の風と共に在る。

(異フ)41.龍の国の歌姫(作:高岡ミヅキ 様) ※完結お疲れ様でした※

『第2話 レッドの意思』について感想書いてく


(作品URL)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884371213

(エピソードURL)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884371213/episodes/1177354054885252451



 主人公が決意を持って帰還するエピソード。

 新たに使命を抱き、生まれ変わった王子はどこへ進むか。


>闇が月の光を覆う夜だった。城は静まり返り、空気は冷たく体をこわばらせた。それは孤独をあおり、明日の不安が押し寄せる。柔らかく暖かいベットは、安眠をもたらすものではなく、ただ時間だけを食っていく魔物の口のように思えた。

 そのため、ずいぶん昔に寝室は寝室ではなくなってしまった。ただただ振り回し続けた剣の傷が、壁や床、カーテンに残っている。光をまっすぐに受け止めていたはずの窓には、蜘蛛の巣のような亀裂が重なり、部屋の中に光を乱反射させた。それがチラッと動いただけで、無意識に手に握る剣が虚空を斬った。



 戦に取り付かれた偉大で孤高な王を描いた部分。『寝室は寝室ではなくなってしまった。』という描写が、すっと胸に入ってくる。

 冒頭も拝読したが、まさに正統派ど真ん中のファンタジーといった深い趣がある。剣や魔法で派手に、強く戦うのも良いが、現代日本では決してあり得ない異世界で、現代日本人にも共通するような深い孤独や悩みを抱え、自らに欠けたものを埋めようと立ち上がり進み出す姿は、ファンタジーに正面から向き合った作者の在り方の反映ではないかと思う。

 図書館でじっくり味わえるような作品を求めている読者にお薦めしたい。

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