誰がために鍛。誰がために進。誰がために志。

(異フ)38.碧涙~碧血双傳【上篇】~(作:宵白蓮 様) ※完結お疲れ様でした※

『武龍双侠第一 (三)』について感想書いてく

(作品URL)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885876821

(エピソードURL)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885876821/episodes/1177354054885985966



 惨状の集落を訪れるエピソード。

 そこで主人公たちは一人の女性を助ける。


>埃を含んだ風が吹く。その風は、思わず鼻を覆いたくなる程の異臭が混ざる。それは今や、この国のどこにでも当たり前の様に漂う、――死の臭いだった。

 かしいだ木製の扉がギイ、ギィ、と耳障りな音を立てる。その扉というのも、腐食が進んで殆ど意味を為してはいない。半壊した家屋には米をかしぐ煙も絶えて久しい。

 くすんだ白い布が、風に幾重にも棚引く。啾啾しゅうしゅうと響くのは、亡き人を悼む生者の哭声なきごえか。或いは己が身に降る非業に喘ぐ亡者のそれか。村はずれに簡単に土を盛っただけの墳墓はかの群は今や、村の人々の居住の空間にまで及ぼうか。

 弊衣ぼろを纏う人々はただ、その前に力なく伏しては嗚咽おえつし、九天そらを仰いで哀号なげいては、惨たる世を呪詛した。或いは、すでに、その力もなくしてただ座り込み、息をしているのかどうかすら定かでない者も少なくはない。

 それが、今の珱国えいこくの姿だった。



 少し長い引用になったが、とても印象深い書き出し。

 その場の空気感が伝わってくるような描写だと思った。すごく感じ入ると同時に、こんな風に描けたらなと思う。

 個人的には、最後の一文「それが、今の……」がすごく締まってばっちりはまっていると感じた。

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