第47話舎弟を守るために渋々
戸惑いながらシャンドは「では、いただこう」とサンドイッチを手に取る。が、ジッとカシアを眺めるばかりで口に運ぼうとしなかった。
「どうしたんだ、食べないのか?」
「我が一族は礼儀を重んじているのだ。姐さんを差し置いて、私が先に食べる訳にはいかぬ」
……前はお頭が先に食べるのを待っていたけど、今はアタシが先に食べられるんだな。なんか変な気分。
妙なこそばゆさを覚えながら、カシアは大きく口を開けてサンドイッチにかじりつく。こちらが半分ほど食べ終わってから、ようやくシャンドも食べ始めた。
食べている途中、ヌッとカシアの背後から人影が覆い被さる。口を動かしながら見上げると、ランクスが薄笑いを浮かべてこちらを見下ろしていた。
「ザコ魔王に食わせる分があるなら、オレにも分けてくれよ」
「誰がランクスなんかに……あ、でもアタシの舎弟になるって言うなら考えてもいい」
カシアが薄ら笑いを返すと、ランクスが「最弱のくせに」と口元を引きつらせる。
「オレを舎弟にしたいなら、少なくともオレより強くなれ。ザコ魔王連中の上にいるからって自惚れるなよ。師匠を超えたいなら、まだまだ力も体力も魔力も鍛え足りないんだからな」
不愉快だが事実なので、カシアは言葉を詰まらせる。その様子を見てから、ランクスは割られた薪の束を見やった。
「薪割りは終わったみたいだな、感心感心。じゃあ――」
ぽん、とランクスがカシアの肩を叩いた。
「午後からはオレの服を洗ってきてくれ。お前さんの訓練に付き合ってたら、洗濯物がたまってしょうがないんだ」
「げっ……面倒くさい。自分の物ぐらい自分で洗えよ」
あからさまにカシアが顔をしかめていると、食べ終わったシャンドが腕を組み、胸を張りながらランクスと対峙した。
「姐さんが嫌がっているではないか。洗えというなら、この私が自ら洗おう。光栄に思うがいい」
「……弱っちいクセに威張るのは、親分と同じだな。しかし残念だが、お前たちにその暇はないぜ。雑用は山ほどあるんだからな」
目をつり上げながら、ランクスは前に身を乗り出す。
「文句言わずに雑用して体力つけるのと、オレに斬って捨てられるの――どっちがいいんだ?」
低くなった声に気圧され、シャンドが後ずさる。そしてカシアに視線を送り、「姐さん、すまない」とあっけなく引き下がってしまった。
言うことを聞くのはシャクだったが、せっかくできた舎弟を斬られる訳にはいかない。カシアは口の中の物を呑み込むと、「……分かったよ」とつぶやいた。
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