第二幕ノ二十ガ結 楓の修練――正式な弟子
「本題って――普通に修練するんじゃないんですかい?」
煉弥がおっかなびっくりといった感じで、楓に問いかける。
「修練するにはするのだけどぉ、今回の修練は皆に自分のことを、今一度よく知ってもらいたいっていう目的もあるのよぉ」
「自分のことを知ルゥ?」
オオガミが目を細めて言うと、その横で凛がうんうんとうなずきながら言った。
「たしかに、それは非常に肝要なことでございます。敵を知り、己を知れば、百戦危うからずとも申します」
「しかし、楓さんの言うことはわかりやすが、俺たちは一応自分のことは承知しているつもりなんですがね……」
「ふぅ~ん? じゃあ、レンちゃん、自分の長所と短所を楓さんに説明してもらえるかしらぁ?」
「そうですねぇ……」
あごに手をやり思案する素振りを見せる煉弥。そして、うん? と何かに思いあたり、それを楓にぶつけてみる。
「えっと、楓さんのおっしゃる長所と短所ってのは、戦闘における長所と短所でいいんですよね?」
「そうよぉ。私生活の長所と短所なんか聞いたって意味ないでしょぉ?」
そりゃそうですな、と苦笑する煉弥。そして、ごほんっ! と咳ばらいを一つして話し始めた。
「俺の長所はやっぱり力でしょうなぁ。この鬼薙乃太刀と俺の力が合わされば、ぶった斬れないもんなんか、そんなにないと思いやすよ」
腰の大太刀にぽんっと手を置きながら、そういう煉弥に、楓はキツネ目細めながら言った。
「そうねぇ。それは楓さんも認めるわぁ。じゃあ、短所はどうかしらぁ?」
「短所は、この間も小袖さんから指摘されやしたが、軽快さが足りないことでしょうな。ですから、足の速い外道との戦いに関しちゃ、やはり不得手と言わざるを得ませんや」
「ふぅ~ん? レンちゃんの短所って、本当にそれだけかしらぁ?」
疑り深いキツネ目を向けてくる楓に、煉弥はうろたえながら、
「そ、そうだと思っていやすがね」
「じゃあ、レンちゃん――楓さんに一振り打ち込んできてみなさいなぁ。あ、もちろん、楓さんを殺すつもりで本気で打ち込みなさいなぁ♪」
楓のこの一言に、煉弥は目を丸くして言った。
「は? 木刀とかじゃなく、鬼薙乃太刀で打ち込めって言ってるんですかい?」
「そうよぉ。ほぉらぁ。さっさと打ち込んできなさいなぁ」
キツネ目細めて、獣耳をぴこぴこ動かしながら、楓が煉弥を促した。複雑な表情をする煉弥にオオガミが、
「まあ、言われた通りにしたほうがいいんじゃねえカ?」
煉弥の背なかを押すように言った。
「……そうだな」
ここで楓の言うことを聞かずに渋っていると、それはそれでまた面倒なことになりそうだ。煉弥は腰を落とし、腰の太刀に手をかけて楓をにらみつけた。
「本当に、本気でやっていいんですね?」
「ええ、本気で来なさいなぁ♪」
すっちゃらかっちゃんちゃん♪ と妙な踊りをする楓に向かって、凛が心配そうに、
「し、しかし楓殿――真剣でございますよ? もし、間違いがありでもしたら――――」
「だぁいじょぉぶよぉ♪ レンちゃんごとき、楓さんが遅れをとるわけないわよぉ♪」
この“レンちゃんごとき”という言葉が、煉弥の心をざわつかせた。
「……わかりやした。なんかあったとしても、恨まないでくださいよ」
「お、おい、煉弥――――」
と、そこまで口したところで、凛は言葉を飲み込み、そして息も呑んだ。煉弥の周囲の空気がひりつき始めていることを、肌で察したのだ。
「ヘェ? あのバカ、本気みてえだナ」
オオガミはそう呟くと、変な踊りを続けている楓に視線をやった。
さぁて、楓のやつ、どんな方法であのバカをいなすつもりなんダ。
楓の一挙手一投足を逃すまいと、じぃ~~っと楓を見つめ続けるオオガミ。
しかし、楓は特に構えたりすることもなく、ひたすら変な踊りを続けるばかり。あいつ、いったいどうするつもりなんダ? と、オオガミが訝しみはじめた、その時だった。
「――――だぁらぁ!!!!!」
煉弥の
「いやぁぁ~ん♪」
楓がなんと、秘部と乳頭に葉っぱがついた、ほぼ素っ裸の状態になっていたのであった。
「おぉおぉお?!」
育ての親でもあり、母親でもあり、仕置き人としての師匠でもある、いわば憧れの人と言っても差し支えない女性のあられもない姿に、裂帛の気合を引っ込ませて素っ頓狂な声をあげながら、大きく目を見開いてガン見してしまうイケナイ煉弥。
そんな童貞浪人に向かって、キラーーン☆ と楓が目を光らせた。
「お・ば・か・さ・んっ♪」
ぱちんっ♪ と軽快に指を鳴らす楓。すると、煉弥の頭上から、轟音を響かせながら落雷が一閃。
「ふげぇっ?!」
哀れ童貞浪人は、落雷の直撃を受け、身体からぷすぷすと黒煙をあげながらその場に突っ伏した。
「なっ?! だっ、大丈夫か煉弥?!」
慌てて凛が突っ伏した煉弥に駆け寄る。それを見て、楓はキツネ目細めながら微笑を浮かべた。
「ほぉら♪ まだまだ修行が足りぬぞぉ♪」
ぼむっ! と元の割烹着姿に戻り、愉快そうにキツネ目細めて笑う楓。
「レンちゃんの最大の弱点は、今でもわかったようにスケベなところよぉ♪」
「い、いや……たしかに煉弥はスケベかもしんねえが、今のはそれ以上にビックリしちまったってことも強かったようナ……」
楓のまさかの行動にオオガミもびっくりしたのか、煉弥に助け舟をだしてやると、楓が真面目な顔になって言った。
「だとしてもぉ。殺されちゃったら言い訳のしようがないわよねぇ?」
うぐっと痛いところを突かれ、オオガミは、まあそりゃそうだけどヨ……と渋々といった感じでうなずいた。
ところで煉弥に駆け寄った凛はというと、
「キサマ……真っ向からの勝負で後れをとるのならいざ知らず、あのような破廉恥なことで後れをとるなど、キサマそれでも武士かッ!! 恥を知れッ!! この痴れ者がッ!!」
煉弥の容態を心配してくれているのかと思いきや、いつもの小言の説教を容赦なくあびせかけていた。
「そうねぇ。リンちゃんの言うことはもっともねぇ。でも、リンちゃん、とりあえずは今は置いておいて、レンちゃんを脇にひっぱっていってあげてくれないかしらぁ?」
「しょ、承知いたしました」
楓に言われた通り、身体から黒煙をくすぶらせている煉弥を、凛が脇へとずるずるとひっぱっていった。
「さて、今度はオオちゃんよぉ♪」
楽しそうに、すっちゃらかっちゃんちゃんとまた妙な踊りを始める楓に、オオガミは大きくため息をついた。
「イヤって言っても無駄なんだろうナァ……」
「と・う・ぜ・ん・よっ♪」
仕方なしに、腰を軽く沈めていつでも駆け出せる姿勢をとるオオガミ。
「いつでもいいんだナ?」
「はぁい♪」
「――――よシッ!!」
掛け声と共に、わずかばかりの風が薙ぐ音をその場に残してオオガミはその姿を消した。
「え?!」
思わず声をあげて驚く凛。だがすぐにオオガミは、踊っている楓の頭上へとその姿を現し、
「オレは、煉弥みてえに甘くはねえからナッ!!」
と、威勢のいい声をあげながら、楓に向かって全体重をかけたカカト落としをお見舞い――――しようとしたその瞬間。
「まぁっ! あぁ~~んなところに上等な骨付き肉が落ちてるわぁっ!!」
楓が踊りの足を止め、心底驚いたような声をあげながら、竹林の中を指さした。
「肉ッ?!」
思わず楓の指さした方へと目をやってしまうオオガミ。しかしすぐに、楓から視線を外してしまったことに気づき、慌てて楓の方へと視線を戻すが、そこにはすでに楓の姿はなかった。
「ど、どこダッ?!」
落下しながら辺りを見回すオオガミだが、楓の姿がオオガミの視線の中に入ることはなかった。
だが、それもそのはず。楓は、落下しているオオガミの頭上へとその身を跳躍させていたのだ。
「お・ば・か・さ・んっ♪」
楓の声に、頭上へと目をやるオオガミ。そして、すぐにこの後待ち構えている自分の運命を察し、
「そりゃねえヨ……」
と、消え入るような悲しい声をあげた。
キラーーン☆ と楓がキツネ目を光らせ、オオガミに雷をまとったカカト落としをくらわせる。
「ふんゲッ?!」
悲鳴をあげながあオオガミが地に激突すると、さながら隕石が地に落ちたような衝撃が辺りにはしった。
砂煙が巻き上がる中、楓がすとんっと着地する。そしてキツネ目細めて愉快そうに、
「ほぉら♪ まだまだ修行がたりぬぞぉ♪」
すっちゃらかっちゃんちゃんと変な踊りをしながら笑って言った。
凛が呆気にとられていると、砂煙が晴れてきて、クレーターのようにえぐれた地面の中に、上半身が見事に地面に埋まったオオガミの姿が現れた。
「お、オオガミ殿ッ?! 大事ないですかッ?!」
慌てて凛はオオガミに駆け寄り、オオガミの腰に手をまわし、力いっぱいオオガミを地面から引き抜いてやる。完全に目を回しているオオガミに、楓が、
「オオちゃんの弱点はねぇ、その食欲よぉ♪ そして、レンちゃんとオオちゃんの二人の共通した弱点は――精神攻撃に弱いってことなのよぉ♪」
「た、確かに……」
脇でぶっ倒れている煉弥と、腕の中で目を回しているオオガミを交互に見つめ、凛が複雑な表情でうなずいた。
「まあ、精神の鍛練というものは、肉体の鍛錬と違って、そうそう早く進まないものですから、二人に関しては楓さんがじっくり時間をかけて鍛錬を積んであげますからねぇ♪」
「た、多少はお手柔らかにしてあげてはいかがでしょうか?」
「それじゃあ鍛錬にならないじゃなぁ~い? 鍛錬っていうのはねぇ、できないことをするから鍛錬になるのであってぇ、できることをやるのは鍛錬じゃなくて日課になっちゃうものよぉ」
「そ、そう言われるとそのような気もしますが……」
「そ~れにぃ~♪ リンちゃんは、人の心配の前に、自分の心配をしたほうがいいんじゃないかしらぁ?」
うふふぅ♪ と、乙女が身の毛のよだつ悪い笑みを浮かべて見せる性悪女狐。凛は身を震わせ、うろたえながら楓に問うた。
「とっ、とととおおおおっしゃいますと?」
「まぁまぁ、鍛錬に入る前にぃ、リンちゃんに聞きたいのだけどぉ。リンちゃん、いつもの腰に差した刀はどうしたのぉ?」
小首をかしげて悪びれる様子もなく聞いてくる楓に、凛はいささかムッとして、
「楓殿が折ってしまったではありませんか?」
「あらぁ♪ そうだったわねぇ♪ ごめぇ~んなさぁ~い♪ でもねぇ、あの程度で折れちゃう刀なんて、仕置き人の仕事を遂行する上では、なんの役にも立たないから、無い方がいいわよぉ」
「……かもしれませんが、一応、あの刀は私なりに愛着があったのです」
「愛着があっても、その刀のせいで死んじゃったら元も子もないじゃなぁ~い」
ずけずけと痛いところを突いてくる楓に、さしもの凛も閉口した。なるほど、煉弥が言っていた楓殿に逆らうな、口ごたえをするなとはこのことか。
押し黙っている凛に、楓が、
「とりあえず、オオちゃんも邪魔だから脇にどかせましょうねぇ♪」
弾んだ声で言ったかと思うと、凛からオオガミをひったくり、煉弥の倒れている方へとオオガミをぶん投げた。
「おふっ?!」「ぐエッ?!」
どすんっ! とオオガミが煉弥の上に落下すると、二人のうめき声があがった。それを見て、楓が満足そうな声をあげる。
「ほぉら? 死んじゃいないでしょう? あれくらい厳しくしなきゃ、外道妖怪の相手なんかできないわよぉ♪」
楓のこの言葉に、凛は軽い戦慄を覚えた。普通の人間よりもはるかに打たれ強いあの二人ですらあのような惨事なのだ。とすれば、私はいったい、どのような仕打ちをうけてしまうのだ?
楓は凛の気持ちを察したと見え、
「あ、いっておくけどぉ、今回は卑猥な事とかは一切なしでいきますよぉ」
と注釈してくれた。それはそれで安心したが、逆に言えば、あの二人と同じくらいの仕打ちを受けるのではないかという不安が増大したとも言えた。
恐る恐る、凛は楓に問いかけた。
「そ、それで……私には、どのような鍛錬を?」
「リンちゃんの鍛錬はねぇ――――」
そこまで言ったところで、楓は凛の太ももに向かって両手を薙いだ。すると、凛の太もも部分から下の袴が切れ、凛の鍛えられたスラリとした美脚が露出した。
「へぇッ?! かっ、かかか楓殿ッ!!」
顔を真っ赤に染め上げる凛に、楓は真面目な顔して一喝した。
「お黙りなさいっ!!」
「――――ッ?!」
いつもの楓とは違う、真剣そのものな一喝に思わず身をすくめてしまう凛。そんな凛に向かって、細くしたキツネ目の中に紅く光る瞳をたぎらせ、楓は言った。
「いい、リンちゃん。厳しいことを言わせてもらうけどぉ、今のリンちゃんは、レンちゃんやオオちゃんの足元にも及ばないのよぉ。それくらいはちゃんと自覚できているのかしらぁ?」
「そっ、それは…………!!」
凛は唇を噛んだ。確かに、それは自覚しているつもりであったが、こうもハッキリと指摘されてしまうと、凛のプライドがどうしてもそれを阻害してしまう。特に、自分が煉弥よりも劣ると人から言われると、なおさらだ。
「レンちゃんには力がある。オオちゃんには、速さがある。リンちゃんには、いったい、何があるのかしらぁ?」
うぐぐ……!! と今度は歯噛みする凛。
「それに、今のリンちゃんには得物もないわけでしょぉ? 楓さんのように、式神を武器に変化させることもまだできないわけだし、今のままじゃどうあがいたって、仕置き人として仕事を任せることなんて、楓さんは許可できません」
「……はい」
うつむき、肩を震わす凛。すると、楓がいつもおちゃらけた調子に戻って言った。
「と、いうわけでぇ♪ リンちゃんを、正式に楓さんのお弟子さんにすることに決めたのよぉ♪」
「はい?」
きょとんとする凛。
「だからぁ♪ リンちゃんには、楓さんと同じような戦いの型を仕込んであげますからねぇ♪ そのためには、軽装をしてもらわないといけないのよぉ♪」
ぼむっ! とくぐもった爆発音が一つ。すると、楓がなにやら巫女装束らしきものを身にまとっていた。
なぜらしきものかというと、それは巫女装束と言うには、あまりにも貞操概念のカケラもない露出の高さであったからだ。
ミニスカートのような作りの中からにゅっと伸びた艶やかな生足。それに比例するように、上半身も、可能な限り布面積を最小限に抑えましたと言わんばかりに露出していた。
簡潔に言うと、ヘソ丸出しでスポーツブラのようなものに、巫女装束の名残の長い袖がくっついてるようなものだった。
「うふふぅ♪ 戦闘衣装をまとうなんて、久しぶりでなんだか楽しいわぁ♪」
きゃぴきゃぴ喜んでいる楓だが、凛は楓のまとっている衣装を見て、顔面蒼白となった。そして、凛は恐る恐る、楓に問いかけた。
「かっ、かかかかか楓殿……ま、ままさか、私も、そそそそそのような恰好を……?」
「当然でしょぉ? あ、言っておきますけどねぇ。陰陽道っていうのは、可能な限り周囲の空気から
「そ、そういうものかもしれませぬが、そ、そそそその、や、やはり抵抗があると申しますか……」
蒼白だった顔を赤くする凛に、楓が自分の肩につくほどに右足を跳ね上げた。
「ほぉらぁ。あんな袴なんか着てたら、こういう体術だってまともには使えないわよぉ? あ、心配しなくても、中身が見えちゃわないように、ちゃんとフンドシはつけてもいいからねっ♪」
楓のこの言葉に、いち早く反応を示したのは、脇で突っ伏している一人の変態であった。
「り……り、凛が……ふ、ふん……ど、し……」
驚異的な回復力であると言えたが、楓の無慈悲な指パッチンが竹林に響くと、煉弥の背なかにダメ押しの落雷が一発鳴り響いた。
「ぎぇぇぇっ?!」
ぷすぷす……と黒煙を立ち上らせる煉弥。
「ちょぉ~~っと黙っててねぇ♪」
フンドシとかそれ以前に、そんな恰好なぞ出来ませんと訴えようとした凛であったが、楓の今の様子を見る限り、すでにもう有無を言わさないといった様子であることは明白であった。その証拠に、楓が凛に、
「じゃあ試しに、楓さんと同じように足を蹴り上げてみなさいなぁ♪」
「え? あ、は、はい……」
仕方なしに、凛は楓に言われたように右足を蹴り上げた。しかし、楓程うまくいかず、バランスを崩して、身体がぐらぐらと揺れてしまった。
「くっ?!」
それを見て、楓がくすくすと笑みをこぼした。
「ほぉらねぇ。リンちゃん、剣術はまあまあだけど、体術がてんでダメダメだから、まずはそこから鍛えなおしましょうねぇ♪ そうやって、鍛えながら、周囲の空気から力を取り入れる方法とかを並行して教えてあげるから、まずは徹底的に体術に重きを置きましょうねぇ♪」
「は、はい……」
「じゃあ、まずはぁ、左右の蹴り上げを二百回ずつよぉ♪」
「はいっ!!」
元々はスポコン根性の持ち主の熱血女。いざやるとなれば、その勢いと熱量はかなりのもの。楓に言われた通り、真面目に蹴り上げを始める凛を、楓は嬉しそうにニコニコと見つめていた。
そう――まずは、何かあった時にすぐに逃げれるように、脚力と体力をつけなきゃねぇ。
その光景を、脇で寝ている煉弥とオオガミが、やれやれといったように見つめていた。
「……これで、凛に楓さんの注意が向いたから、俺たちはここでおねんねしときゃあ難を逃れられそうだな」
「……あア。凛には悪いが、ここはじっとして――――」
と、そこまで言ったところで、すとんっと何者かが地に着地した音が二人のそばで響いた。
「……まさか」
「……まさカ」
ゆ~~~っくりと顔をあげる二人。すると、そこには頬を膨らませている楓の姿があった。
「まったく、学習しない子たちねぇ!! キツネの前でタヌキ寝入りをするなんて――――!!!!」
カッ!!!!! と楓の瞳が見開かれるのと、地が鳴動するようなすさまじい衝撃が辺りに響くのは、ほぼ同時のことであった。
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