大脳革命
午前中、大脳が久しぶりに遊びに来ました。
「ボクは世の中は腐っていると思うでヤンス」「ボクにもなにかできることがあると思うでヤンス」と、なにやら壮大なことを語る大脳、「ヤンス」という安易なキャラ付け語尾がつくようになったせいか、妙にやつれた様子。
「そういえば学校は?」とマルぼんが不審に思っていると「トイレ貸して」と部屋を出て行ってしまいました。
しばらくすると、ヒロシたちがすごい勢いで帰宅してきました。
なんでも、大脳が「ベロたんなんでも入門シリーズ14・キミにもなれる! 即身仏入門」という本を残して、消息を絶ったというのです。
直後、ママさんの叫び声、「大脳くんがトイレに入ってでてこない!」
混沌とした21世紀に嫌気がさし、世の中に警鐘を鳴らすべ即身仏への道を決意した大脳。
なぜか大沼家のトイレをその場所に選び、立て篭もっておられます。
さっきから、大脳が鳴らしていると思われる鐘の音が鳴り続いています。
説得をすることにしたマルぼんたちは、まず「ベロたんなんでも入門シリーズ14・キミにもなれる! 即身仏入門」で、即身成仏について学ぶことにしました。
即身仏とは、自分の意志で生きながらミイラになるという仏教でも最高レベルの修行です。
最初は、山に三年間篭り、米・麦・アワ・キビ・大豆を断つ「五穀断ち」というものを行ないます。
次は「十穀断ち」。
五穀断ちの五つに、トウモロコシ・イモ・ヒエ・小豆・ソバの計十穀を三年間断ちます。
「十穀断ち」を終えたら、水をひたすらに飲み体を清める。
最期は空気穴のあいた桶に入って土に埋まり、死ぬまで鐘を鳴らしつづける(止まったらオダブツ)。
マルぼん「これで3年たったらミイラになっていて、即身仏完了」
ヒロシ「でもなんでウチの家のトイレにはいるのさ」
大脳「申し訳ないでヤンス」
トイレの中の大脳が口を開きました。
大脳は、かなり前から即身仏のことを決意していて、その準備を進めてきていたそうです。
「五穀断ち」「十穀断ち」を終えたところで、大脳は即身仏のことを家族に話したそうなんですが、家族は猛反対。
大沼家のトイレに立て篭もったのは、両親に認めさせるためだとか。
大脳「両親がどうしても反対するのなら、ネットで調べて作った『周囲5キロ以内の生き物という生き物が死滅し、10年間、草木一本生えなくなっちゃうガス』で自爆する覚悟もできているでヤンス」
ヒロシ「通報! 母さん警察呼んでー!」
通報で駆けつけた警官から、マルぼんたちは思いもよらぬ事実を聞かされました。
大脳が大沼家のトイレに立て篭もったのとほぼ同時刻、町の各地で世を儚む系小学生が「即身仏になる」と立て篭もる騒動が同時多発しているというのです。
そんな時、ヒロシのクラスの連絡網から新しい事件の一報がはいりました。
ヒロシの同級生の中でも、フトシ君や炭水化物山くんといった、学校のよく言えばポッチャリ型、悪く言えばデブ、もっと悪くいえば生活習慣病直前な連中が、刃物片手に給食室に立て篭もったというのです。
彼らは給食の残りを食べ散らしながら、教師や家族の説得に耳を貸そうとしないとのこと。
町の各地で即身仏事件を起こしているのは、大脳と同タイプの「勉強はできる」ガリ勉タイプのこどもたちであるということが判明しました。
即身仏になろうとするガリ勉たちと、給食室に立て篭もるデブたち……2つの事件は、なぜ同時に起こっているのでしょうか。マルぼんは必死で考えてみましたが、さっぱりわかりませんでした。
ガリ勉たちとデブたち。共通点もあるとは思えません。
ヒロシ「しかし迷惑な連中だよね。ヤツらのせいで、来月開催予定の運動会は中止らしいよ」
運動会? 中止?
……ガリ勉は運動が苦手、デブも運動は苦手。
まさか。
給食室に立て篭もったデブたち(突入した機動隊によって全員逮捕。動機は「腹いっぱいたべたかった」)のせいで、「即身仏になるとか言っている連中は、運動会をサボりたいだけ」ということになり、周りの人たちも「なりたきゃなれよ、即身仏」といった感じで、大脳たちのテンションも下がりっぱなし。
我が子に失望した親御さん達も子供たちの即身仏化をあっさりと了承し、「それならば」と町も動き出しました。
町役場の前にアリの飼育セットの巨大なヤツを建設して、即身仏志望の皆サマに入ってもらい「リアルタイム即身成仏の見れる町」として、町の観光名所にすることにしたようです。
さっきマルぼんも見てきたんですが、大脳たちも「もう止めたい」「助けて。マジで」と照れ隠しなどしていましたが、望みがかなって嬉しそうでした。
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