ポイズン

女「はい、お弁当」



男「もしかして、わざわざ作ってくれたのか」



女「な、そ、そんなわけないでしょ! 自分の分を作ろうと思っていたら、たまたま作りすぎただけなんだから! な、なんで私が、アンタのために弁当を作らないといけないのよ! かんちがいしないでよ!」



男「なーんだ。それならいいよ。ほかのヤツにあげろよ。今日はさ、凸凹山さんが弁当を作ってきてくれることになってて」



女「!? ば、ばかー!この好色色魔のろくでなしふにちゃん野郎ー!!」」



 ばきっ



男「いてええ! な、なんだ!? なんでアイツ、あんなに怒っているんだ!?」




ヒロシ「僕はたまたま、あの女の人の家を覗いていたから知っているんだけど、あのお弁当は、彼女が、あの男の人のために、わざわざ早起きして作っていたんだよ。なんでその事実を素直に話さないだろう。素直に言えば、お弁当を受け取ってもらえたのに」



マルぼん「素直になったら、あの女の人、無個性になっちゃうからねえ。彼女は近所でも有数のツンデレなんだ」



ヒロシ「なんとかあの恋、成就させてあげたいなぁ。なぜなら、『他人の恋を成就させればさせるほど、死後、よりステータスの高い存在に転生できるんよ!』と、ルナちゃんにいただいた(15万円)本に書いてあった

から」



マルぼん「ようするに、素直になれない人が素直になれる機密道具をだせ、と」



ヒロシ「イエス」



マルぼん「『いいたいこともいえないこんなよモナカ』。このモナカを食したら、言いたいのに言えない、素直になれないオバカサンでも、本音を話してしまうようになるの」



ヒロシ「よし。これでいこう、そこのおじょうさん、これを食わないと命を奪った後、山奥に遺棄します」



女「えええ!?」



ヒロシ「食うか死ぬか、どちらかを選べ! 墓か山か、どちらで眠るかさぁ選べ!」



女「なんなのこの子!」



ヒロシ「名乗るほどのものではない。町のかわいそうな少年さ! かわいそうだと思うなら、食うか死ぬか選べ!」



女「近づかないで!」



男「ちぇすとー!」



女「!!」



ヒロシ「!!」



 さきほどの男の一撃が、大沼ヒロシさん(小学生)の顔面に直撃。なんということでしょう。男は色々と達人だったのです。



男「おい、大丈夫か」



女「な、なによ。よけいなことしないでよ! いま、己の力でこいつを倒そうと思っていたんだから…!」



男「悪態つけるなら、大丈夫そうだな」



女「今笑ったな! なによ、なによ、なによー!」



男「わかってるよ。わかってるー」



 去っていくバカップル。『いいたいこともいえないこんなよモナカ』なんてなくても、2人の絆は深いようです。ああ、むかつく。死んだらええねん、とマルぼんは思いました。強く思いました。そんなことより



マルぼん「おい、大丈夫かヒロシ」



 通りすがりの医者「どうかしましたか」



マルぼん「ドクター! 実はツレがこんな状態に」



通りすがりの医者「どれどれ。むう。これはーこの状態わー」



マルぼん「どうなんです」



通りすがりの医者「いや、その。うむ。家族の方がいないと。うぬ。むう。あの、その。ごほんごほん。えっと…」



マルぼん「ええい、口をつぐみおって! この『いいたいこともいえないこんなよモナカ』を食らえ!」



通りすがりの医者「もぐもぐ。あううう。死にます、この人、死にますー! あと3秒で!」



 マルぼんは『いいたいこともいえないこんなよモナカ』が無駄にならなくてよかったと思いました

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