トラウマ
ヒロシ「もしもし。子供電話相談室ですか? あの、楽に死ねる方法を教えてください」
マルぼん「またヒロシの『死にたい』『死んだら楽かも』『というか、死んだ魂が肉体という名の鎖から解き放たれるじゃん。ひゃっほう!』がはじまった。どうしたんだよ」
ヒロシ「実は明日は学校のマラソン大会で」
マルぼん「フムフム」
ヒロシ「だから死にたい」
マルぼん「『生きる廉価版』の異名をとるだけのことはある死生観だけど、遺された者のことも少しは考えなよ。保険だって入っていないのにさ」
ヒロシ「ふん。貴様に運動オンチにとってのマラソン大会がどんなに残酷なものかわかるものか。ゴールしたときに周りの人のしてくれた拍手にこもった『貴様が遅いから帰るのが遅くなるんだ』という怨念がわかるものか。僕の夢はな、将来タイムマシンを開発して古代アテネへ行き、マラソン発祥のもととなったヤツを殺すことだ!」
マルぼん「わかったわかった。この『万能加速装置』をくれてやるから、マラソン大会でひとはなあげてみなよ」
ヒロシ「なんだ、いいものがあるじゃないから。よし。さっそく奥歯に埋め込んで、カチッとな」
マルぼん「ああ、待って。それはあまりに万能すぎて、あらゆるものを加速させてしまうんだ。説明書をよく読まないと、なにがどう加速するのか」
ヒロシ「そんなもの…ふたりには必要ない」
マルぼん「は?」
ヒロシ「僕とマルぼんの間には、愛しかいらない。そうだろ?」
マルぼん「ヒ、ヒロシくん…あたい…あたい!」
ナウマン象「待て!」
ヒロシ「ナウマン象!?」
ナウマン象「マルぼんは俺のものだっ!」
ヒロシとマルぼん…2人の間にようやく芽生えた、愛。しかしそれを邪魔しようというナウマン象。彼を突き動かすのも、また愛であった。こうして、ヒロシと仲間たちを包みこむ愛という名の迷宮(ラビリンス)は、加速度的にその状況を変化させてゆくのであった。
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