未来ムツゴロウ
ヒロシ「うわ~ん! マルぼーん!!」
マルぼん「どうした?」
ヒロシ「金歯の親父さんが、わが子を見限って、愛犬のタンクを跡取りに指名することになったらしいんだ」
マルぼん「はてさて、金歯はいかなるポカをしてしまったのやら」
金歯の安否が気にかかる人もおられるでしょうが、彼の臓器は別の人の体内で元気にしているのでご安心あれ!
ヒロシ「で、新跡取りのタンクさまのお披露目会に参加してきたんだ。でもタンク様、僕を見るなりバウバウ吼えて…金歯の親父さん『タンクに吼えられるものは生きたまま埋めます』とか言い出したんだ! で、急いで逃げてきたんだけど、動物に懐かれるようになる機密道具だしてーん!」
マルぼん「『懐き鞠』~。この鞠をついている人の姿を見た動物は、その人に懐きまくる。上手につけばつくほど、より懐くようになるんだ」
ヒロシ「鞠つきなら自身がござる」
ヒロシは外に出ると、『懐き鞠』をつきはじめました。
ヒロシ「食うものないから靴を食う~石を食う~♪」
正直どうだろうと思うような歌詞の手鞠歌を歌いつつ、鞠をつくヒロシ。するとどうでしょう。ヒロシの周りに犬(野良)が! 猫(野良)が! 鳥(野良)が! 人(野良)が! たくさんの動物たちが集まってくるではありませんか!
犬(野良)「クゥ~ン…」
猫(野良)「ニャ~ン…」
鳥(野良)「ピピ~ィ…」
人(野良)「お兄ちゃん……」
甘えた声でヒロシに擦り寄ってくる動物ども。ヒロシの鞠つきは、異様なまでの見事さで、多くの生き物を魅了してしまったのです。
ヒロシ「すごいや。色々な生き物が懐きまくりだよ!」
犬(野良)「がうがうがう!」
猫(野良)「フニャー!」
鳥(野良)「ピギー!!」
人(野良)「殺すぞわれぇ!」
突然争いだす生き物たち。おそらくは、大好きなヒロシを独り占めにするべく熾烈な戦いを始めたのでしょう。
ヒロシ「ぎゃー!!」
マルぼん「あ、近くの植物のツタがヒロシの首に巻きついてきた!」
ヒロシ「ぐるじい…」
マルぼん「植物だって生きているんだ。友達なんだ。きっと、ヒロシに懐いたんだよ」
独り占めにしようと、ツタを伸ばしてヒロシを捕獲した植物。絞められるヒロシの首。
ヒロシの苦しむ顔を肴にマルぼんが一杯やっていたそのときでした。どこからかゴゴゴゴゴという音がしはじめ、突然、地面がパカッと割れたのです。
ヒロシ「はわわわわわ!!」
地面の亀裂は恐ろしいまでのスピードで広がり、あっという間にヒロシを飲み込んでしまいました。
ヒロシが飲み込まれ、姿を消すと、再びゴゴゴゴという音が鳴り、亀裂はこれまたあっという間にふさがってしまいました。大地は一瞬にして、ヒロシを飲み込んでしまったのです。
マルぼん「あ!」
マルぼんは空に浮か雲が全てハートの形をしていることに気づきました。
「地球は生き物である」と言った学者さんがいたそうですが、マルぼんも同感です。地球という生き物はヒロシに懐き、ついに彼を独り占めしてしまったのですから。
マルぼんは『懐き鞠』の効果は絶大だと思いました。
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