ぶつぶつ名物うるさいな
ヒロシ「連休を利用して、家族でクワトロ温泉へ行ってきたんだ。はい、お土産の『クワトロまんじゅう』」
ルナちゃん「いいな。クワトロ温泉ということは、名物の『シンタトクム鍋』を腹いっぱい食らってきたんでしょうね」
ヒロシ「は? シンタトクムナベ?」
ルナちゃん「え。シンタトクム鍋を知らないの? ということは、シンタトクム鍋を食べていないの? 信じられない!」
ヒロシ「えっと、えっと」
ルナちゃん「信じられない。信じられない。信じられなーい!」
ヒロシ「うええええん、マルぼん、その土地の名物を必ず食べることができる機密道具出してー!!」
マルぼん「仕方ないなぁ、ヒロシくんは。『名仏像』。この手のひらサイズの仏像を所持していたら、その土地の名物を必ず食べることができるんだ」
ヒロシ「わーい。さっそくだけど、わが微笑町の名物を食べてみたいなぁ」
マルぼん「微笑町は、昔は流刑地で、今はたんなる工業地帯だから、名物とかそんなのはないハズなんだが」
お兄ちゃん「きょー!!」
ヒロシ「わ!?」
奇声をあげて部屋に飛び込んできた男が、突然、ヒロシの首を腕で絞め始めました。ヒロシは相手の腕を噛むなどして、必死で抵抗。絞める男と噛むヒロシ。
マルぼん「よく見たら、あの男、『お兄ちゃん』じゃないか」
『お兄ちゃん』は、平日の昼間から町をウロウロしている人です。たいていはぶつぶつとなにかを呟きながら歩いていて、常に裸足。たまにトランクス一丁です。ヒロシのクラスでは彼の『お兄ちゃん』の似顔絵と「この人要注意」と書かれたプリントが配布されたりしています。
十年位前から同じ感じでウロウロしているので、もはや町の名物と化しています。そういえば、「地球はボクのおかあさんだから、この家もぼくのおかあさんなんだ」と言って、人の家に勝手に入り、トラブルを起こしていたという話を聞いたことがあります。絞めるお兄ちゃんと噛むヒロシ。絞めるお兄ちゃんと噛むヒロシ。絞めるお兄ちゃんと噛むヒロシ。ヒロシがお兄ちゃんの腕の一部を食いちぎったのと、お兄ちゃんがヒロシを逝去させたのは同時でした。司法解剖されたヒロシの胃からは、食いちぎった腕の一部が見つかったそうです。
マルぼんは、食べ物の名物がなければ、人間の名物を食べられるようにしてくれる『名仏像』の効果は絶大だと思いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます