大逆転! 永遠の快楽!

マルぼん「ヒロシ! おい、ヒロシ! 絶対に儲かるすばらしい投資話を耳にしたぞ! 全財産、マルぼんに託して!!」



ヒロシ「無理です、無理。無理無理」



マルぼん「なんでさ。この前、お小遣いもらっていたろ」



ヒロシ「あの金なら、小豆相場にすべてつぎ込んだ!!」



マルぼん「バッカじゃなかろうか!!」



 貯金などせず、金を湯水の如く使うヒロシ。なんという愚か者。こいつは楽して儲けることしか考えていない。なんという愚か者。



 マルぼんは貯蓄の大切さを理解させるため『アリとキリギリイス』という機密道具を出しました。



 このイス型機密道具は、座ることによって『なにかを貯蓄することで、至高の快楽を得ることのできる体質』に体を改良してしまうのです。



マルぼん「貯めれば貯めるほど、快楽は大きくなるんだ」



ヒロシ「あ、う。ほんとだ。なんか、なんかせつない……」



マルぼん「ほら、この貯金箱に10円を入れてごらん」



ヒロシ「こ、これは…これはー!! う、ううう。貯金最高ー!! 貯蓄最高ー!!!!」



 こうしてヒロシは、貯蓄という快楽の下僕となったのでした。そして…



ママさん「ヒロくん、朝よ。そろそろ学校へ行かないと」



ヒロシ「行かないよ、僕、学校行かないよ」



パパさん「なんだと、このろくでなし!! びしっびしっ(顔にしつけをした音です。家庭内暴力ではありません)」



ヒロシ「僕、この前のテストでカンニングしたよ」



パパさん「なんだと、このひとでなし!! びしっびしっ(顔にしつけをした音です。しつこいようですが、家庭内暴力ではありません)」



ヒロシ「僕、背中に『ルナちゃんは俺の惚れている』という文字を彫りましたよ」



パパさん「なんだと、この将来に希望なし!! びしっびしっ(顔にしつけをした音です。人の家庭のことにかまわないでください)」



ヒロシ「うう…」



マルぼん「おい、ヒロシ。なんでわざと親に怒られるようなことばかりするんだよ。もう、学校や病院も『こけた時にできた傷』じゃごまかせないぞ」



ヒロシ「う、うへへへ…」



マルぼん「!! この目!! この目は、快楽を貪っている男の目だ!! 『アリとキリギリイス』の効果だな!? おまえ、なにを貯めている、金じゃないな…あ、そうか…そうか…」



マルぼん「ストレスだな!!」



 ヒロシはびしびしと自分の体を叩き始め、マルぼんの言うことなど聞いていませんでした。

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