芝生ブルー
マルぼんとヒロシが町を歩いている時のことでした。
おっさん「そこ行く男子小学生とお連れさん。このムチで私の尻を叩いてくれないか。もちろん、それなりの
謝礼はするよ」
ヒロシ「(携帯電話を取り出して)もしもし、警察ですか」
おっさん「あーちがうちがう。変態とちがうから」
マルぼん「変態でないとしたら、いったいなんなのです」
おっさん「私にはすごく大切にしているものがあるのです。多少は古くなっているのですが、とてもすばらしく、かけがえのない宝物です。私などにはもったいないほど素晴らしいものです。でも最近、なぜかわからないけど、その宝物が疎ましくて仕方なくなってきたのです。そんな自分に嫌気がさして……」
ヒロシ「だから、そんな薄汚れた自分をムチで嬲ってほしいと」
おっさん「はい」
マルぼん「ようするにあなたは、自分の宝物の大切さを再確認したいわけだ。それなら、これをその宝物とやらにつければいい」
おっさん「これはいったい」
マルぼん「このクスリをつけたものは、たとえどんなにつまらない物でも、その素晴らしさを再確認することができます。さぁ、これをあなたの宝物の素晴らしさを再確認するのです」
おっさん「わ、わかりました」
マルぼんに渡されたクスリをもって、走り出すおっさん。
ヒロシ「あれはいったいぜんたいどういう機密道具なの」
マルぼん「『トナリノシバフ型ブルー液』。このクスリをつけたものは、どんなものでも持ち主がその素晴らしさを再確認できるんだ」
ヒロシ「ほうほう」
マルぼん「このクスリをつけたものは、まず他人の手に渡る。他人のモノとなったかつての所持品を見たとき、持ち主は無性に切なくなる。そして気づくんだよ、自分が手放してしまったものの素晴らしさを。自分が失ってしまったものの大切さを。『隣の芝生は青く見える』と言うように、他人の持ち物はとても魅力的に見えるだろ。このクスリは、その力を利用して自分の所有物の素晴らしさを再確認できる機密道具なのさ」
ヒロシ「なるほどなー」
数日後。「なにかおもしろいネタはないか。メシのタネになる話はないか」と、マルぼんとヒロシがカメラ片手に歓楽街を歩いていたら、突然、ギャーという悲鳴が聞こえました。悲鳴のしたほうへ行くと、そこはラブホテルの前。あの時のおっさんが血のついた包丁を持って立っていました。近くでは女の人が青い顔で立ち尽くしており、2人の足元には若い男性が腹から血を流して倒れています。
おっさん「ひ、ひとの女房を……最愛の妻を……俺の宝物を奪いやがって!」
マルぼんは『トナリノシバフ型ブルー液』の効果は絶大だと思いました。
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