ルナさんは旧ヒロイン

ヒロシ「紹介するよ、こちら『マルぼんと暮らす』の新ヒロインです」



猫「にゃー」



ルナちゃん「ヒロインって、なんの変哲もない猫じゃないの。大丈夫、ヒロシさん?」



ヒロ子「そうよ、大丈夫なの? お兄ちゃん」



 ルナちゃんに心配されても、ヒロシは平然としています。



ヒロシ「今はただの猫だけど、100年くらい生きたら猫又になって、おそらく人間……それも猫耳と尻尾がこの上ないくらい愛らしい美少女に化ける術を身につけると思うんだ。そして僕を愛してくれると思うんだ。その時こそ、マルぼんと暮らす』の新たな1ページが始まる瞬間であり、僕とこのコの騒がしくとも楽しい日々の始まる瞬間であるんだ。その日のために、僕はこのコにピュアなラブを注ぎまくる所存です」



猫「にゃうー」



ルナちゃん「あの、マルちゃん」



マルぼん「言いたいことはわかります。わかります。でもしょうがないんです。ヒロシはしょうがないんです。温かい目で見守ってあげてください」



ルナちゃん「それはわかるけど、町内にこんな人がいると落ち着かないわぁ」



ヒロシ「うっさい、元ヒロイン」



ルナちゃん「な、元ですって…?!」



ヒロシ「主人公である僕がこのコをヒロインと認めたんだ。だから、いままでのヒロインはただの元ヒロインにすぎない」



ルナちゃん「そんな、そんな、猫にヒロインの座を奪われるなんて!」



マルぼん「ルナちゃん、ルナちゃん。ヒロシの望みは猫耳と尻尾のあるネコ娘をヒロインにすることだ。ルナちゃんがネコ娘になれば、おそらくヒロインの座は死守できるよ」



ルナちゃん「あんな人間のクズの望む人間になるのはしゃくだけど、ヒロインの座には代えられないわ。マルちゃん、あるんでしょう、機密道具」



マルぼん「『キャット666』。これはより高次元のネコ娘のコスプレを目指す人のために作られたクスリで、これを飲んでひたすら念じれば猫耳と尻尾が生えてくる」



 さっそく、『キャット666』を服用したルナちゃん。いつも欠かさずやっている祈りのポーズを

バシッと決めて、ひたすら念じます。ものの3分程度で猫耳が頭に生えてきました。



マルぼん「あとは尻尾だ!」



 さらに念じるルナちゃんですが、尻尾はなかなか生えてきません。



マルぼん「念じるんだ、とにかく念じるんだ、尻尾が生えるように。尻尾が出るように!」



ルナちゃん「いたい、いたい! 尻の上のほうが痛い! 激痛!」



マルぼん「尻尾が生えかけているから痛むんだ。耐えよ、耐えるのだルナちゃんよう!」



ルナちゃん「も、もお我慢できなーい! 」



 ルナちゃん、懐から注射器を取り出すと、謎の液体を自らに注入。



ルナちゃん「ふう。夢心地。これは、うちの教団が秘密裏に売りさばいている気持ちよくなるお薬で」



ヒロシ「ふふふ」



猫「うふふふ」



ルナちゃん「なにがおかしいの」



ヒロシ「ルナちゃん。僕の顔に見覚えはないか」



ルナちゃん「貴様は、麻薬捜査官の大沼ヒロシ!」



ヒロシ「このときを待っていた。おまえが、クスリを俺の目の前で使うこの瞬間を」



ルナちゃん「すると、この一連の茶番劇は……」



ヒロシ「おまえたち教団がクスリを密売している証拠を見つけるための罠だったというわけさ」



ルナちゃん「ちっくしょう! まさか同級生の大沼ヒロシが、麻薬捜査官の大沼ヒロシと同一人物だったなんてー!! ぬかったわー!!」



 マルぼんはルナちゃんが尻尾を出すことができるようにした『キャット666』の効果は絶大だと思いました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る