やめてよグリーンダカラちゃん

マルぼん「あ、今、妹のムリぼんから時空メールが」



ヒロシ「妹? そんなのいたなー」



マルぼん「未来の世界のデザイナーの専門学校に通っていたらしいんだけど諸事情で中退。21世紀で就職先を探すんだってさ。今日の16時に来るって」



ヒロシ「あと一時間足らずか。久しぶりだね」



マルぼん「あ、しまった。引越ししたこと教えていないよ」



 大沼宅とその周辺の家は、一年前、諸事情で立ち退きを強いられ、近くの団地に引っ越していたのです。




ヒロシ「引越しもクソも、この机の引き出しのタイムマシンを使うんだから問題ないだろ」



マルぼん「これはマルぼん専用のタイムマシンなんだ。時空関係の機密道具は法律が厳しくてな、『タイムマシンは所有者以外の操縦を禁ずる』ってのがある。ムリぼんは自分のタイムマシンで来るハズだ」



ヒロシ「なら問題ないじゃん。自分のタイムマシンがあるなら」



マルぼん「タイムマシンはまだ問題があってね、空間を移動する機能がないんだ。同じ場所でしか時間移動ができないんだよ」



ヒロシ「???」



マルぼん「たとえば、未来の世界のアメリカの男性(猟奇殺人犯。少年を好んで襲い、死体をバラバラにして左足首だけを持ち去る)が21世紀のヒロシくんの家に来たいとする。その場合、アメリカの男性(猟奇殺人犯。少年を好んで襲い、死体をバラバラにして左足首だけを持ち去る)は未来の世界のヒロシくんの家があった場所までタイムマシンをもって行き、そこでタイムマシンを使用しないといけないのさ。ムリぼんはそのことは当然知っているよ」



ヒロシ「『のび太の恐竜』みたいなものか。つまり、ムリぼんは、未来の世界の僕の家(引越し前)のあった場所に移動してタイムマシンを使い、21世紀の僕の家(引越し前)に着いちゃうわけだね。これは大変」



マルぼん「あの辺り一帯、住民を立ち退かせた後、急ピッチでなんかの工事が行われていたね。行ってみよう」



 そんなわけで大沼宅(引越し前)へと向かうマルぼんたち。そこにあったのは、『象の檻』でした。戦闘機がひっきりなしに飛び立ち、さまざまな兵器が貯蔵され、市民団体がまわりで絶えず抗議活動をしている『象の檻』でした。怪しい人たちが絶えず凧揚げとかしている『象の檻』でした。



ヒロシ「16時だ」



『象の檻』にサイレンが響いた後、銃声がしました。



 ムリぼんは、一生来ることはありませんでした。

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