ぬくもりの中で

 マルぼんとヒロシが家に帰ると、台所のテーブルには、冷え切った夕食が置かれていました。ママさんの姿はどこにも見えませんでした。



ヒロシ「家庭の味って、おふくろの味って、冷たいんだね」



 ヒロシを不憫に思ったマルぼんは、『あたためライト』という機密道具を用意しました。このライトの光を浴びたものは、どんなものでも適温に温められてしまうのです。



マルぼん「このライトで冷えきった夕食を温かくしたよ」



ヒロシ「うわーおいしいやー」



ママさん「あら、帰ってたの」



ヒロシ「母さん」



ママさん「あ、そうだ。ヒロくん、外車と国産車どっちが好き?」



ヒロシ「え…外車、かな」



ママさん「わかったわ。じゃあ、外車にする。あなたのおかげで手に入るお金だし」



マルぼん「ママさん、その包丁は! その保険の契約書は!」



ママさん「さーらーばいばいさーらばい。げんきにさーらーばーい」



 襲いかかる一児の母にビビったマルぼんは、思わず『あたためライト』をママさんに照射してしまいました。すると、鬼の形相だったママさんがころりとかわり、やすらかな顔つきで去っていくではありませんか。



ヒロシ「きっと、心のぬくもりを取り戻したんだ」



 マルぼんは『あたためライト』の効果は絶大だと思いました。



ママさん「こんなやり方だと、すぐ保険会社にばれちゃうわね。もっと完璧な方法を考えないと。 がんばれ、私! この計画はもう少し……3年くらいは温めておかないとね」


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