君に届けテレパシー

ヒロシ「マルぼん、マルぼーん!」



マルぼん「なんだいヒロシくん」



ヒロシ「今すぐ、哀しみを知らぬ男でも人を感動させることができる機密道具だして!」



マルぼん「いったいぜんたいどうしたの」



ヒロシ「このチラシを見てごらんなさいよ」



マルぼん「ふむ。金歯が配布したチラシか。なになに『朕は哀しみを知らぬ。涙を知らぬ。感動を知らぬ。だから、朕は知りたい。哀しみを。涙を。感動を。だから、朕を感動させた人間には金をやる。朕を感動させてたも。朕を感動させてたも』だって。あははは。頭おかしんだね」



ヒロシ「でも、おいしい話だろ?  感動させるだけで、お金だよ。でもさ、でもでも。僕は本当の哀しみを知らない男だからさ、人を感動させることなんかできやしないんだ」



 過去にちょっと仕出かした出来事(犠牲者あり)のせいで、哀しみという感情を忘れてしまったヒロシなのです。



マルぼん「できるよ、きっとできる」



ヒロシ「できないよ! この手が、血塗られたこの手が! 許してくれないんだ。血だ。血がついている。とれない、とれない、血がとれない~!血ィ!血と過去を洗い流せる機密道具だして!」



 ヒロシがおかしくなったので、マルぼんは機密道具をだしてやることにしました。



マルぼん「『本コード』。このコードは、どんなに本にでも差し込むことができる。脳にも差し込むことができるから、コードを通じて本と脳とをつなぐことができるの」



ヒロシ「つないでどうなるのさ」



マルぼん「本の内容が脳に送られる。で、脳に内容を送られた人は、その本の主人公と同じ行動を自動的にとるようになるんだ」



ヒロシ「感動的な内容の本と脳とつないだら、自動的に人様を感動させる行動をとれるというわけか」



マルぼん「そういうことさ」



ヒロシ「ちょうどいいや。ここに、今までの人生で一番泣いた本があるから、この本と僕の脳を繋いでおくれよ」



 こうして本の内容がヒロシ脳に送られました。



ヒロシ「よし。これで金歯を感動させることができるよ。っと、その前に腹ごしらえ。なんかなーいなんかなーい、ねえ、おかーさん」



ママさん「残念だけど、貴様に食わす飯はねえ。あたいはね、ネグレクト女王になるって決めたんだ」



ヒロシ「ええ!? そんなこと言わないで、ほら、土下座! 土下座だよ! 小学生の土下座!」



ママさん「なにをしても、あげられないの。あなたにごはんは。あげられないの!」



ヒロシ「ごはんください。靴もなめますよって」



ママさん「あげへん。ごはんあげへん」



ヒロシ「三回まわってワンと鳴きますさかい」



ママさん「無理ですの!」



ヒロシ「なんでですの!」



 マルぼんは、さっきヒロシの脳とつないだ本のタイトルを確認しました。「かわいそうな象」というタイトルでした。

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