天才画家シス

ヒロシ「サイン会を」



マルぼん「開催しろだって?」



ナウマン象「おうよ。孤高の天才画家・ナウマン象さまのサイン会を開催してえんだ」



 お忘れのかたも多いでしょうが、われらがガキ大将・ナウマン象さんには、絵画という趣味がございます。恐ろしいほど下手で、気の弱い人ナウマン象作の絵を見たら発狂したり石化したりする恐れがあり、妊婦が見ると生まれてくる子供は尻尾とか生えてきます。絵の近くで写真を撮ると、なんか半透明の人間とかが写ったりするそうです。本人は自分の絵の腕前を「素晴らしい」と思い込んでおり、秋葉原や大阪日本橋の画廊で個展を催しては、なんの罪科もないオタクさんたちに絵を高値で売りつけたりしています。いったい、オタクさんが何人死んだと思っているんだ! 人が死んでるんやで! いいかげんにしろよ!



 そんなナウマン象が、サイン会。サイン会をしろと要求してきたのです。正気の沙汰じゃありません。



マルぼん「サイン会か…開催しようと思えば開催できるけど、先立つモノがそれなりにいるよ?」



ナウマン象「無料にしないと殺す。おまえの女房も子供も」



マルぼん「刃物を仕舞ってください! サイン会は無理ですけど、色々な人にサインをしてあげられる立場になれる機密道具なら無料でイケます!」



ナウマン象「おう、それでいいや。よこせ」



マルぼん「『サインコカイン』。このコカインを摂取するとだね、ひひひ。みんなにサインをしてあげられる立場になる」



ナウマン象「はぁ~きくー」



『サインコカイン』を注射器で摂取すると、ナウマン象は笑顔で帰っていきました。



 数日後。



ヒロシ「なんか、ナウマン象の様子がおかしかったよ。異様に激ヤセして」



金歯「体中にアザがあったでおじゃる」



ルナちゃん「ご両親らしき男女と歩いているのを目撃したんだけど、あの時、悲しい目をしてこっちを見ていたわ、ナウマン象さん」



マルぼん「なんだろうね」



 子供の、なにかを訴えるサインを見逃さない大人になりたいものです。

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