フリルを着た悪魔

 ここは町内にある空き地。子供たちが集まり、カードゲームや携帯ゲームに興じる場所。ナウマン象と金歯とルナちゃんが集まって、なんか話しています。



ナウマン象「昨日、暇つぶしにヒロシをぶん殴ったんだ」



金歯「またなんでそんなことを」



ナウマン象「ガキ大将の仕事だからなぁ」



ルナちゃん「ガキ大将も大変ねえ。でもヒロシさんがマルちゃんに頼って復讐でも企むのでは……」



ヒロシ「その通りさ」



金歯「あ、ヒロシ! そ、その格好はなんでおじゃるか」



 金歯が驚くのも無理はありません。空き地に現れたヒロシは、可愛らしい女の子もののフリルの服を着ていたのです。



ナウマン象「なんだその格好は。俺を喜ばせようとでも……はぁはぁ……無駄だぜぇ……うっ」



ヒロシ「今だっ! あちょー!」



 ヒロシ、奇声とともに大きくジャンプすると、そのままナウマン象に蹴りをかまします。「ぶげらっ」とか叫びながら吹っ飛び、壁にぶつかって動かなくなるナウマン象。



ルナちゃん「今の動き、どこぞの拳法家みたいだったわ! ヒロシさんは拳法のケの字も知らない、弱さが服を着て歩いているような人物! 短期間で拳法の使い手になるなど、無理な話のはず」



マルぼん「すべては、ヒロシが着ているあのフリルの服の力さ」



 ヒロシの着ている服は実は機密道具。着ると「ふりをするだけで本物になれる服」なのです。たとえば、ちっとも強くない人がこの服を着て強いふりをすると、マジで強くなります。頭なんてちっともよくない人がこの服を着て頭がいいふりをすると、マジで頭がよくなります。可愛い女の子でもなんでもない男がこの服を着て可愛い女の子のふりをすると、体がマジで可愛い女の子に変化します。



金歯「つまりヒロシは、あの服を着て強いふりをしているからナウマン象を圧倒していると」



マルぼん「今のヒロシにとって、ナウマン象は敵でない」



ルナちゃん「あ、あんなところに熊が!」



金歯「近所のおっさんが飼っていたヤツが逃げ出したのでおじゃる! うわー、こっちに来る!」



マルぼん「みんな、死んだふりだ!」



ヒロシ「熊の相手は分が悪いので、続かせてもらうぜ」



 とっさに死んだふりをする、マルぼんと、ルナちゃんと、金歯と、「ふりをするだけで本物になれる服」を着たヒロシ。完。

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