ヒロシ「はぁはぁ…」



マルぼん「どうしたのだ、ヒロシ!」



 ある日の深夜、ヒロシが血だらけになって帰ってきました。



ヒロシ「同級生のガチ子さんの家に侵入してきたんだ。はぁはぁ……ちなみに、この血は僕の血ではありませんので大丈夫です。皆さん安心してください」



マルぼん「誰の血なの?」



ヒロシ「なんで侵入してきたかと申しますと、このノートをゲットするためで」



マルぼん「誰の血なの?」



ヒロシ「このノートはですね、ガチ子さんとルナちゃんが交換日記に使っているノート。ガチ子さんは、ルナちゃんの唯一の親友。つまりこのノートにはルナちゃんの本当の気持ちが詰まっているんだ」



マルぼん「誰の血なの?」



ヒロシ「日ごろは僕につれない態度をするルナちゃんだけど、『マルぼんと暮らす』のヒロインである以上、僕のことを好きなのはほぼ間違いないわけで……その証拠をキャッチしようと思ったのですよ。さぁ、さっそく日記をチェック」



ルナちゃん『私の好きな人は「ヒロシ以外のすべての人類」』



ヒロシ「あの女も打ち殺してやる!! 家族もだ! ペットもだ! 一族郎党もだ!」



マルぼん「今、『あの女も』って」



 ルナちゃんへの憎悪だけが生きがいとなったヒロシ。そんなヒロシに本懐を遂げさせてやるために、マルぼんは『ペナル茶』というお茶を用意しました。



マルぼん「この機密道具はみらいのせかいの教育現場で主に使われているんだ。このお茶を飲んだ人は、なにかミスをした時、必ずなにかしらの罰を受けてしまうようになる。さらにすごいことに、このお茶を沸かす際、備え付けの急須を使用することによって、どんな罰を与えるかを任意で決めることができるのさ。どんな罰がよろしいか?」



ヒロシ「じゃあ『ルナちゃんがなにかミスをする度に、ルナちゃんの愛する人が恐ろしい激痛に襲われてもだえ苦しむ』という罰にして。へへへ…人は自分が苦しむより、愛する人が苦しむほうが苦痛が大きいのさ…」



マルぼん「最低」



 ヒロシは暖めた『ペナル茶』を魔法瓶に入れると、さっそくルナちゃんのところへ向かいました。




ヒロシ「12月に入ってから、ルナちゃんは教団指令で駅前で募金活動(募金の使い道は、教祖が株の購入するための資金)をしているはずだ。あ、いたいた。ルナちゃーん」



ルナちゃん「なによ。気安く話しかけないでくれる?」



ヒロシ「寒い中大変だね。はい、温かいお茶だよ。がんばって」



ルナちゃん「え……あ、ありがと」



ヒロシ「じゃあね(うふふふ)」



 去っていくヒロシ。



ルナちゃん「な、なによ…ヒロシのくせに…ヒロシの…くせに…あ…お茶、おいしい。暖かくて、やさしい味…

やさしさ…ヒロシの、ぬくもり…ヒロシ…」



教団員「ルナちゃん、今、募金してくれた人にお礼を言い忘れていたよ! 世が世なら、市中引き回しの上打ち首獄門なミスだよ。気をつけなよ」



ルナちゃん「あ、いけない!」



ヒロシ「ぎゃぁぁぁ…うぐっうぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 路上で悶え苦しみ野田内まわるヒロシをマルぼんが見つけたのは翌朝でした。世の中にはツンデレというめんどくさいジャンルがあることを、もっと意識すればヒロシは死ななくてすんだかもしれません。人類は、萌えについて、もっと深く考察しなければいけない時期に来ているのではないでしょうか。ヒロシのような、悲しい愛の犠牲者が二度と生まれないように、マルぼんは活動していきたいと思います。平成25年2月1日。海の見えるロッジにて。

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