余い話
なんか塩まんじゅうが食べたくなってきたマルぼん。ちょうどヒロシが町へと繰り出すというので、「これで塩まんじゅう買ってきてよ」と1万円札を渡しました。そしたらあのバカ、1万円全部で塩まんじゅうを買ってきやがったのです。
「自分の物を人にあげるということは、自分の命を差し出すことと同じだ」という信念を持つマルぼんは、1万円分の塩まんじゅう(その数、100個)を1人で完食することを決意。しかし、10個ほどでお腹がいっぱいになってしまい、余った90個は破棄することに。
庭で余った塩まんじゅうを火葬し、その夜。今は亡き塩まんじゅうを想い、枕を涙で濡らしていたマルぼん……
マルぼん「貴様のせいで大量の塩まんじゅうが、望まぬ最期をとげたよ。どうしてくれる」
ヒロシ「だって、いっぱい買ったほうがおもしいろかと思って」
マルぼん「『右を向いたらエコ、左を向いてもエコ、エコを意識しない奴は生きる価値もない。悪いことは言わないから、来世にかけな』なこの時代に、こんなに大量の塩まんじゅうを余らせるなんて、信じられない。キミには地球人である資格はないね」
ヒロシ「そ、そんなぁ。僕は地球人でありたいよ、緑の宇宙船地球号の乗務員でありたいよ! ど、どうすれば地球人と認めてくれる?」
マルぼん「そうだな。もう二度と、食べ物を余らすようなことをしないなら、認めてあげよう」
ヒロシ「それは無理な相談だよ。僕は本もゲームも、遊ぶ用・布教用・保存用・タイムカプセルに入れて未来に残す用と、同じものを大量に買って、結果的に余らす男だよ。食べ物だって、今回の塩まんじゅうの悲劇を繰り返すにちがいないよ」
マルぼん「それなら余らせないようにしてあげよう。『余口カレー(あまくちかれー)』。これを食べたら、いかなるものも余らせることはなくなるんだ」
ヒロシ「本当だね! よし、さっそく食そう」
あっという間に『余口カレー』を完食するヒロシ。これで彼も地球人のはしくれです。
ヒロシ「あ、くだらないことをしているうちに、もうこんな時間! 実は今日、ルナちゃんとデートでして。ゲヘへへ。七時に駅前で待ち合わせなんで、それじゃあ行ってきます」
マルぼん「まだ五時半だぞ。駅前までは歩いても五分程度しかかからんよ」
ヒロシ「時間に余裕をもたないとねえ」
そんなわけで早々と出発したヒロシでしたが駅前に着くまでの間に、山賊に襲われて身包み剥がされたり、生き別れになった双子の弟とばったり再会したり、マンホールの穴に落ちて下水でワニ(心ない飼い主に捨てられた元ペット)と遭遇して死闘を繰り広げるハメになったり、いきなり剣と魔法の世界『ファイメリア』に召喚されて勇者として世界征服を目論む魔王と戦うハメになったりして、結局、到着は七時ちょうどに。
ルナちゃん「待ち合わせの時間は七時だけど、時間に余裕を持って行動しない人はきらいよ。二度とその豚のように醜く汚らわしくて薄汚い顔を、私の視界に飛びこまさないでちょうだい!」
フられました。
ヒロシ「とほほほ。なんでこんなことに」
マルぼん「『余口カレー』の効果だよ。デートまでの時間も余らなくしたわけさ」
良い意味で余っているものも、悪い意味で余っているものも、余らなくしてしまうのが『余口カレー』の力なのです。
ヒロシ「よくもまぁ、そんな変な効果をもたらす道具を与えてくれたもんだね!」
ルナちゃんにフられたショックで我を忘れたヒロシは、マルぼんの首に手をかけて、そして、
そして……
時は流れました。ヒロシは今、裁判中です。
裁判長「被告人大沼ヒロシを極刑に処す」
裁判長曰く、『残虐非道な犯行で、同情の余地もない』とのこと。マルぼん(故人)は『余口カレー』の効果は絶大だと思いました。
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