大沼ヒロシの『しあわせにしてよ!』
ヒロシ「しあわせにしてよ! しあわせにしてよ! しあわせにしてよー!!」
ヒロシがまたおかしいです。たすけてください。マルぼんをたすけてください。
ヒロシ「今日、そこのデパートで『ボクも! 私も! 俺も! 貴様も! みんなの幸せ自慢コンテスト(某宗教協賛。参加賞は飲むと病気の治る水。優勝商品は、現世でのあらゆる罪が許され、誰でも極楽に行けるようになる特製免罪符を格安価格の230万円で購入できる権利)』が開催されていたから、参加しようと思ったんだけども……」
マルぼんはどうでもいいです。
ヒロシ「『YOUはあきらかに不幸な人間だから参加はむり』とか言われて参加拒否されたんだ! 頼むよ、マルぼん! 僕をしあわせにしてよ! しあわせにしてよ!!」
マルぼん「むーりー」
ヒロシ「キーッ!!」
『表裏一鯛』。未来の世界の汚水でのみ採れる特殊な鯛を加工した機密道具です。この鯛一匹を2人で分けて食べると、その2人は幸せが反比例する関係になります。
つまり、1人がしあわせになると、もう1人が不幸になるのです。
この鯛は使い方が難しく、未来の世界では雑魚未満の扱いされており『捕まっていたテロリストがこの鯛を食事出された直後に、誇りを傷つけられたと自殺』という話も残っています。
戦時中にこの鯛を食わされた捕虜が、戦後、収容所の食事担当者を捕虜虐待で訴えて、その食事担当者は死刑判決を受けて、その不条理さを訴えた著書がベストセラーになり、教科書に採用されたという話も残ってます。
この『表裏一鯛』を出せと、しあわせ難民のヒロシが言い出しました。
マルぼん「使い方が難しいのですよ、この機密道具は」
ヒロシ「ものは考えようだよ。たとえば『表裏一鯛』を食べた1人が常に不幸な状態なら、もう1人は常にしあわせという状態だろ」
マルぼん「君はくだらないことは、嘘みたいに閃くね」
ヒロシ「はい、マルぼん。ここに、半分を僕が食べた『表裏一鯛』があるから、残りを食べて」
マルぼん「え?」
こうしてマルぼんは人様に「どうしたんだい、その怪我は」と聞かれたら、「転んだだけです」と答えなければならない立場になったのでした。
ヒロシ「いいかい、今日からマルぼんの寝床はベランダに建設されたダンボールハウスだ」
マルぼん「ふぇい(新感覚の返事)」
ヒロシ「食事はこの硬いパンと、泥のようなスープオンリー」
マルぼん「ふぇい」
ヒロシ「おりゃおりゃ」
マルぼん「やん。ペチペチと叩かないでくださぁい」
ヒロシ「しつけです! しつけでっす!」
マルぼん「ふぇい」
ヒロシ「ようし。『表裏一鯛』の半分を食べたマルぼんが四六時中不幸になったから、もう半分を食べた僕は常に幸福な状態になるぞ」
国家権力「ヒロシは逮捕します」
ヒロシ「ええ!?」>
国家権力「『摂取すると気持ちよくなるけど、嘘みたいに体が悪くなり、夢みたいに中毒性のある魔法の小麦粉』をインターネットで知り合った外国人を通じて入手し、売りさばいたろ!」
ヒロシ「すべて貧しさが悪いんです! 僕は被害者です!」
国家権力「今な、うちの署では『犯罪者さよならキャンペーン(流血もあるよ!)』を好評開催中だ! 生きてお家に帰れると思うなよ」
ヒロシ「なんでや! マルぼんは不幸になったやろ! なんで僕は幸せにならへんのや! 助けておかーちゃーん!!」
こうしてヒロシは不幸になりました。当然です。四六時中不幸になって、マルぼんはとても幸せなんですから。だってマゾだし。
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