壁
ママさん「ヒロシ! また、テストで89点とったわね!
ヒロシ「89点だったら、そこそこかと」
ママさん「バカ息子! 100点以外は0点と同じ! 罰として、仕置き部屋よ!」
ヒロシ「仕置き部屋! あれだけは堪忍してください!」
ママさん「むーりー」
仕置き部屋。大沼家の奥深くにある、脅威の仕置き施設です。人が1人、立って入るのがやっとという狭さで、座ることもしゃがむこともできません。入った人は、ただ立つことしかできないのです。壁の色は真っ白。窓はなく、電気も通っていないので、夜は本当に真っ暗になります。夏はただひたすら暑く、冬はただひたすら寒い、そんな感じです。大沼家でなにかやらかした人は、1週間、この部屋に入れられるのです。ヒロシの遠い親戚にあたる大沼某という人はつまみ食いをやらかしてこの部屋に3週間入れられて、出されたときは髪が真っ白になって発狂していて、現在も山奥の病院で療養しているということです。
ヒロシ「おーたーすーけー!」
そしてヒロシもついに、この仕置き部屋に閉じ込められてしもうたのです。
ヒロシ「やばいやばい、このままじゃ僕は発狂してしまうよ! たすけて!」
泣き叫び失禁するヒロシ。と、そのとき。仕置き部屋の壁が突然崩れ始めたではありませんか。
ヒロシ「こ、これは」
マルぼん「助けに来たよ」
ヒロシ「ありがとうマルぼん! でも、いかにしてこの壁を崩したの?」
マルぼん「こいつを使ったのさ」
マルぼんは小さなツボを持っていました。そのツボの中には、無数のシロアリが……
マルぼん「こいつは未来の世界のシロアリさ。品種改良されていて、どんな分厚い壁も喰い破ることができる。こいつで仕置き部屋の壁を崩したんだ」
ヒロシ「すごいや、さっすがマルぼん」
マルぼん「このシロアリにかかれば鋼鉄の壁であろうがなんだろうが、光の速さで喰い崩されてしまうよ」
山田「あ。大沼じゃないか」
ヒロシ「あ。山田じゃないか」
マルぼん「ヒロシと同じ野球部に所属している山田くんか」
山田「いまから練習です。がんばって練習して、絶対にレギュラーになるんです」
ヒロシ「まぁ、がんばりなよ。レギュラーの座は、渡さないよ?」
ヒロシ、実は野球部のレギュラーメンバーなのです。そして山田くんとヒロシはレギュラーの座をめぐったライバル同士。
山田「ふふふ。僕は絶対に大沼……キミを乗り越えてみせるよ。キミという名の壁を!」
壺から出てきたシロアリたちがヒロシに群がりはじめていたが、誰も気づいていなかった。
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