生きることはオーケストラそのもの

ヒロシ「はぁはぁ…」



マルぼん「どうしたんだい、ヒロシくん。スマホを見つめながら、息を荒げて」



ヒロシ「ぼ、僕、いよいよ出会い系サイトに手を出そうかと思って」



マルぼん「よせよせ。キミみたいに生まれつき運のない人間は、出会い系サイトをやりだしたら最後、紆余曲折の末、誰もいない山奥の地面の中とか、一度沈んだら浮き上がることのできな海の底に永住決定だぜ」



ヒロシ「で、でも出会いが。僕には出会いが必要なんだ。ルナちゃんとか、パソコンを起動させたら会える幼馴染とか義理の妹以外のヒロインとの出会いが必要なんだ!」



マルぼん「スマホは銭がかかるからな。でも、そこまで新たな出会いを求める意欲があるんだ。力をかそう。『デアイ像』~」



ヒロシ「なんだこりゃ、どの家にもひとつはあるようなモアイ像じゃねえか」



マルぼん「『デアイ像』だよ。モアイ像じゃなくて。この『デアイ像』に、新たな出会いを求めて一心不乱に祈れば、きっと新たな出会いがキミを待っている」



ヒロシ「ほんと!? 俄然やる気がでた! 祈っちゃうぞ、僕!」



 ヒロシが『デアイ像』に祈りを捧げて数時間。



ママさん「きゃー!」



マルぼん「絹を裂くような、人妻の悲鳴!  なんだなんだ!」



ヒロシ「あ、隣の浪人生が肉切り包丁を持って暴れている!」



浪人生「お、奥さんのフトモモの肉を今夜のオカズ(エロい意味ではない、本来の意味のオカズ)にしてください!」



ヒロシ「意味不明なことを言っている! こりゃ、本物だ!」



浪人生「坊ちゃんの肉は明日のオカズです!」



ヒロシ「ひょえー!」



 惨劇のあと、救急隊員が駆けつけてきました。駆けつけてきた隊員の1人は、女性でした。



隊員「大丈夫ですか?!」



ヒロシ「う、うう…き、きれいな、人…だ…」



隊員「はい?」



ヒロシ「きゅう」←事切れたことをあらわす擬音。



隊員「しっかりしてください!」



 近くでは、警官に取り押さえられている例の浪人生が、「神はいつだって冒涜されている!」「鼻をつまんだら、宇宙だっていける。歩いて月までお嫁にいける。そう、俺は姫。21世紀のかぐや姫」とか叫んでいます。



 でも、最期に好みのタイプの女性とめぐり合えたヒロシの顔は穏やかでした。浪人生がこなければ、この出会いはなかった。



マルぼん「これじゃあ、『出会い系サイト』じゃなくて、『出会い系サイコ』だ」

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