幸運通帳です

 このクソ寒い日に、なんか必死にアイスキャンディーを食べている人が1人。



アイスキャンディー氏「あたりがでない。あたりでない。あたりが、まだでない」



マルぼん「お困りですか」



アイスキャンディー氏「運試しをしているのです。どうしても運勢がよくなければいけないのですよ、私。なんとかあたりを。あたりを。あたりを」



 くじ引きさんの足もとには、アイスの棒が大量に落ちていました。



ヒロシ「なんか、色々かわいそうだよ、頭とか。病院を紹介してあげよう。空気のきれいなところにある病院を。え、だめ? なら、マルぼん。彼に『運勢をよくする機密道具』を」



マルぼん「そんな機密道具はないなぁ。でも、運勢を貯めて、『ここぞ!』と言う時に一気に使用できる夢のような機密道具ならある」



ヒロシ「ほうほう」



マルぼん「『幸運通帳』。この通帳を持っていれば、己の幸運を貯めることができる。で、通帳についているスイッチを『ここぞ!』という時に押せば、貯めた運を一気に使うことができる。つまり、ここ一番に、とんでもないラッキーを得ることができるんだ」



アイスキャンディー氏「そ、その通帳、所望します!」



 マルぼんとヒロシは、『幸運通帳』をくじ引きさんにプレゼントしました。



 数日後、アイスキャンディー氏から「来てほしい」との連絡がありました。アイスキャンディー氏は、町内の病院にいるとのことだったので、マルぼんたちはそこへと駆けつけました。



アイスキャンディー氏「もうすぐ、俺の子供が生まれるのです。なんとか、無事に生まれほしい。だから、俺は運勢をよくする必要があったのですよ」



ヒロシ「なるほど」



アイスキャンディー氏「さぁ。『幸運通帳』のスイッチオン!」



看護師「もうすぐ生まれますですよ!」



 分娩室に入るアイスキャンディー氏とマルぼんとヒロシ。ああ、命よ、生命の息吹よ!



(アイスキャンディー氏の代わりに、ヒロシがこんなこともあろうかと学んでいたラマーズ法を駆使するなどのエピソードがあったのですが、カット)



看護師「あ、いよいよ生まれますよ!」



 アイスキャンディー氏の奥さんの胎内から飛び出してきたのは、玉の如く可愛らしい赤ちゃん…ではなく、玉そのものでした。



『あたり』と書かれた、巨大な玉。



看護師「あたり…あたりですぅ!  あたりが出たから、入院費は無料です!」



一同「おめでとうございます!」



アイスキャンディー氏「あ、お、俺の…俺の子供は…」



看護師「そんなことより、あたりです! あたりですよー!! 超ラッキーですよ!!!」



アイスキャンディー氏「子供…」



看護師「おおあたりぃ!!」



アイスキャンディー氏「こ…」



看護師「超ラッキー!!」

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