ことわざの達人

ヒロシ「国語の宿題は、えっと…『諺を盛り込んだお話を1本作れ』だって」



マルぼん「『幼馴染とツンデレの2人のヒロインにかまかけていたら、2人両方にフられて、男友達とラーメンを喰いに行くエンディング。これがほんとの「二兎追うものは一兎も得ず」』。こんなカンジか」



ヒロシ「たぶんおそらくそういう感じだけど、小学校の宿題に、幼馴染とかツンデレとか単語を盛り込むのはいかがなものかと」



マルぼん「ここに、この間使った『ことわざ再現機』がある。これを使って現実に、諺のようなことをおこして、それを参考に

物語を創作すればいい」



ヒロシ「よし。この『ことわざ読本』から適当な諺をひとつ選んで、再現機に入力してみよう。ど・れ・に・し・よ・う・かな」



マルぼん「まった。この『ことわざ再現機』は新型で、ことわざの本を中にぶち込むことで、その本に乗っていることわざからランダムでひとつを選んで、再現してくれる機能があるんだ。ランダムのほうが面白くないか?」



「そりゃそうだ」というヒロシの同意を得たので、マルぼんは『ことわざ読本』を『ことわざ再現機』にぶち込みました。そして小一時間。



ヒロシ「なにもおこらないなぁ」



 ため息をつくヒロシ。ちょうどその時、ヒロシの口の間を飛んだハエが、

ポトリと落ちました。



ヒロシ「ハエが死んだ」



 死というものに特別な感情を持っている(死の瞬間を間近に見るとその晩は眠れないほど気分が高揚する、など)ヒロシは興奮して、息を荒げました。その途端、マルぼんの手持ちのガイガーカウンターが、ものすごい量の放射能を計測した後、大破しました。



 ヒロシの部屋のあらゆるものが腐りだし、空を飛んでいた鳥は落ち、草木は枯れ、道を行く通行人たちは血を吐いて果てていきました。放射能以外にも色々もれているようです。ヒロシの口から。



 放射能以外にも、ヒロシの口から色々なものがでてきます。覚せい剤の詰まったトランク、拳銃、国と国との間の微妙な国境線、亡命してきた人、作るつもりはなかった赤ちゃん、引き取る羽目になった徘徊するお年寄り、他多数…



 マルぼんは体を引きずって、『ことわざ再現機』のモニターを確認しました。このモニターには、再現していることわざが表示されます。



『口は災いの元』



マルぼん「なるほど!」



ヒロシ「誤用じゃねえか!」



マルぼん「ご容赦を!」



 マルぼんは『ことわざ再現機』の効果に疑問を覚えました。

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