有害無害ナイスガイ
マルぼんが帰宅すると、ママさんとパパさんがケンカをしていました。パパさんの「生まれたままの姿で、近くの小学校へ行って校舎をなめる」という奇行が原因です。「小学生の吐く息を、たくさん吸収しているであろう校舎を舐めたいの」という言い訳も、ママさんには「なんでもいいからその奇行やめて! 見ていて気分が悪くなる!」と聞きいれてもらえません。パパさんはママさんにちぎっては投げられちぎっては投げられの毎日です。
子供ならば「お父さんもお母さんも大嫌い嫌い嫌い嫌い!」と発狂して家を飛び出してしまいそうな状況にも関わらず、ヒロシはなにやら考えことをしている様子。
ヒロシ「実はナウマン象のやつが、いじめの一環として『青酸カリを俺の目の前で服用しろ』と言ってきているんだ。この僕に! この大沼ヒロシに!」
マルぼん「さすがに青酸カリはなぁ。青酸カリはなぁ」
ヒロシ「ナウマン象のやつ『服用しなきゃ、おまえの目の前で自殺して七代先まで祟る。そしてお前の息子に転生して、生まれて初めて発した言葉を「パパ、今度は青酸カリ飲んでて」にする』とか言っているし、なんとかならないかな」
マルぼん「こいつを飲むといい。『有害薬(うがいぐすり)』。この薬を飲んだ人は、自分にとって有害なものを全て無害にしてしまう。無害どころか体に良くなる場合もあるんだ。ようするに、こいつさえ飲めば青酸カリであろうがなんであろうが有害ではなくなる」
ヒロシ「よし、こいつを飲んでナウマン象をビックリさせてやろう」
ヒロシは『有害薬』を服用すると、マルぼんと共にナウマン象の元へ。
作者からのお願い・・・ヒロシは特別な訓練を受けているので青酸カリとかを服用しても大丈夫ですが、普通の人は絶対に止めてください。お願いです。ホントにお願いです。(今、作者はパソコンの前で土下座しています)。もっと命を大事に! きっと、あなたを愛する人がいる。あなたを必要としている人がいる。
そして数時間後、マルぼんとヒロシは帰宅。
ヒロシ「あははは。ナウマン象のヤツ、青酸カリを平然と服用する僕を見てビックリし、ショックで幼児化して、哀れに思った通りすがりの老夫婦に引き取られていったよ。あははは。ざまあみろ」
マルぼん「あれ」
ヒロシ「どしたの?」
マルぼん「さっき、『有害薬』の入った瓶を2本出したんだ。1本はキミが飲んで、もう1本は未開封のまま置いていったんだけど、2本とも空になっているんだよ」
ヒロシ「ほんとだ。誰か飲んだのかな」
マルぼん「飲み口に口紅がついている。きっとママさんだ。ジュースかなにかと勘違いしたらしい」
警察官「あー大沼さん?」
ヒロシ「あ、国家権力!」
警察官「実はあなたのご両親が、生まれたままの姿で近くの小学校に侵入して、夫婦そろって校舎を舐めまわしているところを逮捕されました。2人とも『小学生の吐く(聞くに堪えないので中略)。これをやるとストレスが発散できてスッキリするのです』とか変態チックな供述をしていますよ。そりゃもう、恍惚とした表情で」
ヒロシ「あれだけ父さんの奇行を毛嫌いしていた母さんが、いったいなんで。父さんの奇行を見るたび聞くたび、吐き気すらもよおすほどだったのに」
マルぼん「『有害薬』の効果だ! ママさんにとって有害だったパパさんの奇行が、『有害薬』の効果で無害に、いやむしろストレスが発散できてしまう体に良いものになったんだ」
こうしてヒロシは、『生まれたままの姿で近くの小学校に侵入して校舎を舐めまわす夫婦の子』という十字架を背負って、世間という荒波に漕ぎ出していかねばならなくなったのでした。マルぼん『有害薬』の効果は絶大だと思いました。
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