気分はファンタジー


ヒロシ「うえーん! マルぼんー!!」



 ヒロシが泣きながら帰ってきました。



マルぼん「どうした?」



ヒロシ「金歯のヤツが、自分ちの科学力で奇形…じゃなくて怪生物を生み出して、それを打ち殺して『朕こそ勇者!』と遊び狂っているらしいんだ! 金歯の家の庭は、まるでファンタジーの世界みたいになっていて、とても楽しいらしいんだよ~」



マルぼん「『某所の裏の池から採取された水』これを飲ませれば、どんな生物でも奇形…じゃなくて、怪しい生き物になる。それを殺して勇者を気取れば」



ヒロシ「生き物殺すの勘弁だよう。夢でうなされそうで。殺すとかなしで、化け物を見るだけでいいから! それでファンタジー気分を味わいたい!」



マルぼん「それならば…『冒険ハット』! この帽子を被れば、どんなものでも怪物とかモンスターに見えるようになる。これでそこらを怪物だらけにすれば、自分がファンタジーの世界にいるかのような気分を味わえるわけだ」



ヒロシ「わーい!」



 さっそく『冒険ハット』を被るヒロシ。



ヒロシ「うわ。本当にあたりが化け物だらけに見えるね。窓の外を、ドラゴンの群れが飛んでいるよ!」



マルぼん「あれは単なるハトの群れだね。ドラゴンに見えるんだ」



ヒロシ「へー。元はハトか。じゃあ、そこ、部屋の片隅に横たわっている血みどろの女の子のモンスター。元はなんなんだろ」



マルぼん「……部屋の片隅にはなにもないよ? 誰もいないよ? そういえば一年前、庭で見知らぬ女の子の遺体が放置されている事件があったっけ」



 恐怖から狂乱状態になるヒロシ。マルぼんは薬品などを使用して、なんとか落ち着かせました。



ヒロシ「うう。化け物なんてこりごりだぁ」



 そりゃそうです。機密道具を使ってまで化け物を見るなんて、ほんと馬鹿です。だいいち……



ママさん「ヒロシの保険金で買う車、決めた?」



パパさん「まだだよ、ハニー。それよか、はやくヒロシには逝ってもらわないとなぁ」



ママさん「保険金もいいけど、死んだあと、生きていることにしとくのもいいかも。児童手当もらえるし」



 無理して見なくても、21世紀には人の皮を被った化け物がたくさんいるんですから。




 

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