マッチョ売りのヒロシ

 あれから10年。ヒロシは己の肉体を鍛えに鍛え抜き、マッチョになっていた。



ヒロシ「マルぼん。ぼかぁ、己の肉体を多くの人に見ていただきたいのだ。ブロードウェイの劇場とかに知り合いはいないかい」



マルぼん「いないよ、バカヤロウ」



ヒロシ「なら仕方ない。駅前で披露してくるとするか」



 夜の駅前で、生まれたままの姿となり、己が肉体美を通行人たち見せつけるヒロシ。



ヒロシ「マッチョはいりませんか」



通行人「キャー変態」



ヒロシ「マッチョはみたくありませんか」



通行人「キャー変態」



ヒロシ「愛する家族に、夜の街のネオンの下でマッチョを見たという思い出を語ってみませんか」



通行人「キャー変態」



警官「そこのマッチョ売りの青年! 逮捕アルよ!」



 逮捕、裁判、判決。そして服役。



ヒロシ「僕はどうしてここにいるんだろう」



刑務官「ヒロシ。ここから出るアルよ」



ヒロシ「釈放ですか。もしかして釈放ですか。たくさんの人に肉体を見ていただける毎日が戻ってくるのですね」



刑務官「ある意味そうアル。とりあえず、このバスに乗るアルよ」



 そのバスには他の囚人も乗っていました。



ヒロシ「なんだ。僕以外は、どいつもこいつも政治犯じゃないか」



怪しい男「全員政治犯にしとくって約束だろ。1人だけわいせつ物陳列罪が混じっているじゃないの。政治犯じゃないと、後からもめるんだよ」



刑務官「政治犯が足りなかったアル。許してほしいアル。その代り、代金はお安くするアルので」



怪しい男「プンスカ。次は気を付けてくださいよ。プンスカ」



 ヒロシとたくさんの政治犯を乗せたバスは、いずこかへと去っていきました。



 半年後。



マルぼん「人間の死体に加工を施して変なポーズをとらとらせたモノや、人間の死体を色々な形でスライスして観察できるようにしたモノなどが多数展示された『人間ボディのはてな展』か。こんな催しに来たいなんて、お前も悪趣味だなぁ」



マルぼんの嫁「人間の死体とか内臓とかを見られる機会なんてそうそうないもの。このチャンスを逃す手はないわ。悪趣味って言うけれど、たくさんの方が観に来てるでしょ」



マルぼん「しかしまぁ、こういう催しで展示される死体はどこから調達されるんだろ」



マルぼんの嫁「注意書きに『生前、提供の意思を示した善意の方たち』って書いてあるけど……どうしたの、変な顔して」



マルぼん「いや、ここに展示されている『生前マッチョだった男性』の遺体が、どこかで見たことのある気がして」



 夢はたとえそれがどういった形でも、きっとかなう。自分の信じた道を歩んでいこう!!

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