痩せる! ナウマン象


 ナウマン象が最近、部屋に篭もりがちになっているそうで、ナウマン象の嫁から、「運動不足の旦那をなんとかしてやってくれ」という依頼が、マルぼんにありました。



「マルぼん、よい手段はあるのかい?」



「こいつを使用しようと思うんだ。機密道具『強制お散歩シューズ』こいつを履くと、強制的に十キロ歩かされる」



「それしかないね」



 マルぼんは「森蘭丸似の美少年がナウマン象にあげるって言ってた」と偽って、『強制お散歩シューズ』をナウマン象にプレゼントしました。



『強制お散歩シューズ』の効果は絶大です。必ずや、ナウマン象は部屋から飛び出すでしょう。



               

                    ※ 





 マルぼんとヒロシの社会のゴミコンビが、なんか俺に靴をプレゼントしてきた。



 すぐさま「ろくでもない道具だ」と察知した俺は、速攻で靴を捨てた。



 まったく、手間を取らせる連中だ。俺はいま、金歯から奪った「摂取すると気持ちよくなる薬」を使うので忙しいのに。



「はぁ~」



 薬を体内に入れると、快楽のビッグウェーブが、俺の体を包んでいった。飛んでいる。空を自由に飛んでいるかのような、素晴らしい快感。



「やはりこの瞬間は最高だ」とか思っていると、俺は右腕に無数の虫が止まっているのに気がついた。



「虫…うわ! うわ!」



 俺は部屋を飛び出し、下の部屋にいる嫁に助けを求めた。



「虫が腕にたくさん・・・殺虫剤をだしてくれ!」



「なに言っているのさ。虫なんて、どこにもいやしないよ」



「そんなバカな」



『そうさ。お前はバカさ、ナウマン象』



「ひ! 誰の声!?」



「声なんてしないわよ?」



「バカな! バカなバカな! たしかに男の声が」



『お前を殺すぞナウマン象、お前を殺すぞナウマン象』



「た、たすけてくれ!」



「どこへ行く気なの!」



 俺は家から飛び出し、裸足のまま駆け出していた。



『お前を殺すぞナウマン象、お前を殺すぞナウマン象』



「ひぃ!」



 どんなに早く走っても、無数の虫と、声は俺を追いかけてきた。俺はただひたすらに、走り続けた。




                 

                     ※ 






「ナウマン象、別人のみたいにやせていたよ。目の下にクマまでこさえてた。ありゃ、相当運動しているね。すごいや、『強制お散歩シューズ』」



「だろ? 『強制お散歩シューズ』の効果は絶大なのさ」

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