育て大沼


総理「ヒロシの愚か者!」



アメリカ海軍総司令官「ヒロシハオロカモノデース」



微笑町内核施設管理官「とんでもないことをしでかして……地球に謝れ!」



ヒロシ「といった具合に、最近は怒られてばかりいる僕です」



マルぼん「少しは己の行動に責任をもつべきだよ、君は」



ヒロシ「きっと僕は地球人じゃないんだ。そうじゃないと、こんなに怒られる理由が説明できない。僕は遠い宇宙の果てからやってきた宇宙人。だから可愛がられないんだ。おのれ人類、おのれ人間ども」



マルぼん「……」



ヒロシ「こんなしみったれた家から僕を救い出し、目に入れても痛くないほど可愛がってくれるお金持ちは現れないかしら! マルぼん、僕に無意味に世間を恨む大人になってほしくないなら、良い人にひきとってもらえる機密道具だせや」



マルぼん「この紙に書かれている数字を見てみなさい」



ヒロシ「なにこの数字」



マルぼん「犬やネコの数。町内の保健所でアレされる、犬やネコの数や!」



ヒロシ「いやああああ」



マルぼん「このように多くの犬ネコがアレされているわけなんですが、なかには親切な人引き取られ、可愛がられているやつらも存在する。なぜそいつらは引き取られ、可愛がられているのか。そのデータを集めて、可愛がられる要素を研究した科学者がいたんだ。で、その科学者が研究をまとめたのがこの本。その本を元にして作られたのが、この飴」



 この飴をなめると、引き取られて可愛がられた犬やネコたちのもっていた『可愛がられる要素』がなにもしないのに身に付くのです。



ヒロシ「ようするにこの飴をなめてりゃ、やさしいやさしい金持ちに引き取られて、可愛がられるというわけだね! なめりゅなめりゅー」



 さっそく飴をなめるヒロシ。



ヒロシ「これで僕は、可愛がられる人間になったわけ……うわ!?」



 突然ヒロシの体が浮き上がり、窓をぶちやぶり、外へと飛び出していきました。



 どういうことだと、マルぼんが飴の説明書を読んでみると、説明書には『引き取られて、可愛がられている犬やネコ』の詳細が書かれていました。



・19××年A月。犬。空き瓶に頭を突っ込んで取れなくなっているところを発見される。地元消防隊により救助され、その模様がテレビで放映される。全国から「あの犬を引き取りたい」という問い合わせが相次ぎ、とある家族に引き取られた現在は幸せに暮らしている。



・19××年V月。ネコ。高い木の上に登ったものの、自力で降りることができなくなっているところを発見される。地元消防隊により救助され、その模様がテレビ放映される。全国から「あの犬を引き取りたい」という問い合わせが相次ぎ、とある家族に引き取られた現在は幸せに暮らしている。



・19××年。犬。長い針金が体に巻きついて衰弱しているところを発見される。

地元消防隊により(以下略)。



 頭を空き瓶に突っ込んで、全身を針金をグルグル巻きにした全裸の少年の氷漬けの遺体が、ヒマラヤ山脈で発見され、それが運搬される模様がテレビで放映されたのは、それから数十年後のことでした。全国の博物館から「あの遺体を引き取りたい」という問い合わせが相次いだのは、さらに半年後のことでした。

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