町おこし 隣はなにを する人ぞ
マルぼんとヒロシがいつものメンバーと、近所の空き地(私有地。当然のように無断使用)でカードゲームや携帯ゲーム機で遊んでいる時のこと。ナウマン象の携帯ゲーム機が誤って、空き地の隣に済む独居老人(♂)のアトミックサンダーボルトさんの家にはいってしまいました。
ヒロシ「やばい。あれ、アトミックサンダーボルトの家だよ」
ルナちゃん「アトミックサンダーボルトって、よく隣町のレンタルビデオショップで下校途中の小学生に『うちにはハムスターがいるんだ。見においでよ。触らせてあげるよ、僕のとっとこ』とか声をかけているわよ」
金歯「それが原因で家族と縁を切ったとか」
大脳「あっしのおふくろさんも、子供時代に車で連れまわされたことがあるらしいでヤンス」
ナウマン象「うう。取りにいくのいやだな。マルぼん、行けよ」
マルぼん「こういう状態にピッタリの機密道具が『子供を性の対象としてみる変質者の家に無事に出入りできる機』がある」
ヒロシ「こんなささいなことでも機密道具に頼る姿勢はどうかと思う」
ルナちゃん「そうよ。道具を使っているつもりで、逆に道具に使われていることもあるわ」
金歯「マルぼん、いくでおじゃるー」
「人間じゃないならなにもされない」ということで、マルぼんが携帯ゲーム機を取りにいくことになりました。
が、マルぼんがアトミックサンダーボルト宅で見つけたのは携帯ゲーム機ではなく、変わり果てた姿のアトミックサンダーボルトさんでした。
死因は老衰。2018年、微笑町は過疎化が進んで人口が減り、こういった悲劇が幾度となく繰り返されていました。マルぼんは、微笑町のために立ち上がることにしたのです。
マルぼん「『アドバイスマシーン』。あらゆる事柄について、的確すぎるアドバイスをしてくれる機密道具さ。あまりに的確すぎて、未来の世界では考える力がなくなり日がな一日宙を見つめてボーっとしている人間が急増しているんだ」
ヒロシ「僕は人の指示がないと靴も一人ではけない人間だから、余裕さ。よし。さっそく微笑町活性化について指示を仰ごう」
アドバイスマシーン「なにかその町の特色になるようなものを作り出せばいいと思います」
ヒロシ「特徴、ねえ。微笑町は工場だらけで鳥一羽いない町だから特徴なんてないなあ。ねえ、簡単に特色を作り出せる方法は?」
アドバイスマシーン「事件をおこしてください」
マルぼん「事件?」
アドバイスマシーン「某有名連続殺人犯の生まれ故郷では、その殺人犯の生家が観光名所になっています。私が旅行へ行ったとき、バスガイドさんが笑顔で『この家で育った○○は、自分は画家であると偽って、スポーツカーを見せびらかし、何人もの女性を~』とか説明してくれましたもん」
マルぼん「ううん。さすがにそれは…ねえ、ヒロシ?」
ヒロシ「え、ダメなの? もう、要約すると『明日微笑小学校を襲います』という意味の怪文書をあちこちにばら撒いちゃったけど。うちの親父の名義で」
国家権力と報道陣が多勢押しかけ、微笑町はにわかに活気付きました。もうさびしくないよ。
ヒロシ「報道陣が多数押しかけて、近所のお店の人たちはたいそう喜んだそうだよ」
マルぼん「喜び、か。そうだね。町を活性化させるためには、まずはその町の人々が楽しく暮らさなければいけない」
アドバイスマシーン「調べてみたところ、微笑町の年貢は他所よりバカ高いですね。これをなんとかしないと」
ヒロシ「年貢か。お米で直接納めないといけないから大変だよね。うちはパパが金歯のお父さんの靴を舐める仕事をしているから免除されているけど」
マルぼん「まぁ、プライドじゃ腹は膨れんし、そういう仕事もよかと」
アドバイスマシーン「とりあえずこの年貢を引き下げないといけません。やんごとなき人に直訴するか、一揆しかありませんね、こりゃ」
マルぼん「ううん。さすがにそれは…ねえ、ヒロシ?」
ヒロシ「え、ダメなの? 近所の年寄り連中を煽って一揆を決意させて、首謀者の血判状にサインしてきたけど。うちの親父の名義で」
一揆鎮圧の幕府軍が多勢押しかけ、微笑町はにわかに活気付きました。一族郎党連帯責任で、もうさびしくないよ。
ヒロシ「幕府の鎮圧軍が多数押しかけて、近所のお店の人たちはたいそう喜んだそうだよ」
マルぼん「喜び、か。とりあえず町の住民は置いておいて、新参者が『うわっ。この町、楽しっ!』とか思うような町づくりをしないとねえ」
アドバイスマシーン「楽しいといえば、テーマパーク。微笑町をテーマパークのごとく改造しちまいましょう」
ヒロシ「人気のあるテーマパークを参考にしたほうがいいよね。人気があるといえば、あそこ。世界中に支店のあるあそこ。あそこあそこ」
アドバイスマシーン「面倒だからそのまんまコピーしましょう」
マルぼん「それだ!」
ヒロシ「OK。上空からみたら町があの有名やつの輪郭に見えるように建物の配置を変えたり、町の望まれない人たちにいろいろと注入してあのネズミとかあのアヒルとかにそっくりに改造したり、町の暴走族の乗り物に電飾をヤマほどつけてパレードと偽ったり、町の人々を洗脳して『ここはドリームとマジカルの国』と思い込ましたりと、連日連夜打ち上げられる花火に不満を持つ住民に札束握らしたりと、策をめぐらしたよ」
こうして微笑町にはカップルやら家族連れが多数おしかけ、微笑町は栄えに栄えまくり、最後はあそこに訴えられて払うハメになった賠償金で経済的に破綻し、隣町の薄笑町に吸収合併されたのでした。めでたしめでたし。
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