(商業都市スーヴェンの商人、語る)
いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。
当店へお立ち寄りいただけるとは、お目が高い。
え? たまたま目が合っただけですって?
それなら、あなた様は幸運ですね。
なにしろこちらの商品は他に類を見ない素晴らしいものですから。
前置きはいいから早く商品を見せろと?
これは失礼いたしました。
こちら、『砂紡ぎの商人』という小説でございます。
とても質の良い一級品でございますよ。
「どのような作品か知りたい」と?
かしこまりました。ご説明いたしましょう。
こちらは砂の世界を舞台にした異世界ファンタジーでございます。おや、今、お顔をしかめられましたか?
……ふむふむ。
「『異世界転生もの』や『悪役令嬢もの』はもう見飽きた! もう見たくもない!」とおっしゃるのですね。
どうぞご安心くださいませ!(大声)
こちらの『砂紡ぎの商人』は他に類を見ない、実に個性的な作品でございます。
私もこの商業都市スーヴェンで何十年も商売をしておりますが、これほどの作品はめったにお目にかかれません。
まずなによりも、世界観の深さに驚かされます。
戦闘、生物、植物、民族、宗教、商売、技術。
どれひとつをとっても丁寧に練り上げられた設定が語られ、その世界で生きる人々の息遣いまでも感じることができるのです。
ここだけの話ですが、作者は実際に異世界を旅してこの作品を書いたという噂がございまして。……ええ、それほどのリアリティがあるという話でございます。
ですから、この作品をお読みになれば、今までに見たことのない新しい世界を旅することができるとお約束いたしましょう。
なるほど。「どのような世界観なのか知りたい」とおっしゃるのですね。
では、あなた様にだけ特別にお教えいたしましょう。他の方には内緒ですよ?
この『砂紡ぎの商人』は、砂に覆われた世界の物語でございます。
そこで暮らす人々の体には紡流(ほうる)というものが流れており、この力によって砂を操ることができるそうです。私は、一種の気の流れのようなものだと認識しております。
この紡流を使うことにより、砂を掘り下げたり、砂をドーム状にして物を覆ったり、砂の中に含まれる特定の成分を抽出したり、あるいは砂を使って敵を攻撃することができるのでございます。
『砂』というありふれたモチーフをこれほど見事に使いこなしている作品はそうないでしょうね。
特に、砂を使った戦闘シーンは見事です。まるで主人公が脳内を駆け巡るかのようでございます。
さて、この物語の主人公は『紡流を無限に持つ男』でございます。
チートなのかって? ええ、ある意味そうかもしれませんね。
しかし、時にはこの特性が裏目に出ることも……おっと、これ以上は申し上げられません。私の口から聞くより、ご自身の目でご覧になる方が楽しめるはずですから。
そして面白いことに、この作品は『砂紡ぎの商人』というタイトル通り、商人たちの物語なのです。主人公は最強の戦士ともいえるチート級の強さを持つ男ですが、あくまでも商人として筋を通している。そこが面白いのです。
商人だからこそ通すべき筋。
それは、ときに戦士よりも厳しい世界なのではないかと思います。
また、登場人物たちの根底には『思想』があります。
時にはその思想によって対立し、時には誰かの思想に救われ、時には自分を赦す理由にもなり得るもの。
彼らの考え方のひとつひとつは大変興味深く、たとえその思想が偏っていたり世間の道徳から大きく違っていたとしても、きちんと筋が通っているのでどれも納得させられるものばかりです。
ふむふむ、「用語が多そうで覚えきれない」と?
そんなときは、こちらを読めばたちまち解決!
設定資料『砂紡ぎの商人』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896787373
作中に登場する用語について実にわかりやすくまとめられています。今でしたらセットでおつけいたしますよ(にっこり)。
……おや、そんな小声でどうしました?
ふむ。「可愛い女の子は出てくるのか」と?
ご安心ください! もちろんでございます!(大声)
活発な僕っ子も、したたかですがチャーミングで憎めない少女も、聡明で大人びた女性も、芯の強い女性も登場いたします! ぜひご期待ください!
決して嘘は申し上げませんよ。
商人は信用第一でございますからね。
砂上の戦神と恐れられる自称商人のイクサ(無限)と謎の行き倒れ少女(無)の二人が出会うところから物語は始まります。
性格も、性質も正反対な二人だけれど、ある意味相性バッチリな二人。
お互いに足りないモノを、お互いが与え合う、少し変わった旅。
旅を経て、二人は成長し、かけがえのないモノに気付いていく物語です。
描写はとても繊細かつわかりやすく、笑いあり、涙あり、アクションありで飽きない展開運び、詩一さんのテクニック、凄いの一言でした!
ネタバレは良くないので、感想を簡潔にだけ述べます!
「とても面白かった!」
希望のあるラストシーン、ある意味でのタイトル回収、完璧でした。
そんなに長いお話でもないので、是非、詩一ワールドを覗いてみて下さい!
後悔はさせません!
嘘じゃないですよ?商人は嘘をつかないんですから!
世界観に没頭して読みました。
砂の世界、砂漠に住むイクサ。
彼は偶然女の子を拾います。
そこからの展開が見たことのない世界観で、ただただ呑まれました。
徐々に心を通わせ、素直になるけど素直じゃないイクサ。
何事にも心から一生懸命なリェリィ。
この二人は互いになくてはならない存在になっていきます。
一つの出会いのストーリーは終わりましたが、彼らの今後を想像させる終わり方で希望が持てます。
好きですね。この世界観。
心に響く言葉がいくつも出てきて、書いておきたい気持ちになりました。
詩一さん!
素晴らしい話をありがとうございます!
きっと私はこの話を何度も読むと思います。
人生は有限です。
当然のことなのに、気づける瞬間はそうありません。
とても悲しいことですけれども、出会える人の数には限りがあります。
出会える仕事や映画や音楽や漫画やありとあるエンターテイメントも。
小説も。
これは冒険の物語です。
若者も、壮年も、男も女も。
遠く異国へ行く人も、生まれた地に留まる人も。
すべての人のココロが一瞬一瞬を冒険するような人生であって欲しい。
もしこのレビューを目にする方がおられたら、偶然の出会いをどうぞ愛おしんでこの作品をお読みになってください。
この小説の一節が、あなたの人生のどこかの場面で、きっと歌のように流れるでしょう。