第42話 サイドB アリス その3 サラマンダ討伐ミッション①
『三年A組ーーっ、黒板先生ーーっ!!』
スピーカーから音声が流れ、いつものように黒板に文字が自動で書き込まれていく。B組にいた時と変わらない。
『サラマンダ討伐ミッション』
『メインミッション
メガサラマンダの討伐 ポイント3000P』
『ザブミッション
サラマンダ五体の討伐 ポイント500P』
『制限時間 三時間』
『参加ポイント 100P』
『場所 ガストア火山地帯』
火山のマップとドクロマークが書き込まれる。
B組よりポイントが高い。
それだけ危険だということだ。
「アリス」
ルカが話しかけてくる。
一番後ろの真ん中の席がルカの席。
私はその前の席。
そして目の前にとんでもない大剣を背負った幼女、ラスが座っている。
横からのぞかないと剣に邪魔されて黒板が見えない。
「アリス、今度はボクが守るから」
真剣な顔でルカは真っ直ぐ黒板を見ている。ルカは前回、私が盾になってから少しおかしい。
今も私の鎧の端をずっと握っている。
「できてるの、あんたら?」
ルカの右隣に座っている、リキマルから声がかかる。
相変わらず、ヘッドホンとギターを装備していた。
「できてない」 「できてる」
声が重なる。
いや、できてないよ、ルカ、何言ってるの?
「残念、あんたタイプなのに、そっち系か、ファンキーだぜ」
リキマルのアプローチにルカはさらに私の鎧を握りしめる。
「ひっひっ、振られてやんの」
リキマルの右隣に座るカナが嬉しそうに笑う。
戦闘バージョンなのか、頭にロウソクを突き立てた鉄輪をかぶっている。不気味である。
「うるせーよ、一生告白されない奴は黙ってろ」
「あぁあん」
犬猿の仲なのか、いつも二人は喧嘩している。
ミッション前だというのに大丈夫か。
『出席をとりますっ、参加者は席について下さいっ!』
スピーカーから声が聞こえる。
その声と同時にロッカーが開く。
出席番号5番アキラ。
A組に来てから初めて見る。
食事の時も皆が食べ終わって、部屋に戻った後しかでてこない。引きこもり男。
ボサボサの髪に初期装備から変わってなさそうなくたびれたシャツとジーパン。
目にはクマができており、顔色が悪い。
ガリガリにやせており不健康そうだ。
そして、手には大きなコントローラーのような物をもっている。
「おいで、マリア」
ロッカーからさらにもう一人、いや、もう一体でてくる。
機械人形というのだろうか。
鉄でできた女性型のロボット。鉄のマネキンを思わせる風貌だが、鎧のような装備が追加されていた。長いロングのストレートの鉄の髪が腰まで伸びている。
前回、合同ミッションで見た時より進化している。
携帯をカスタマイズしてロボットに変えていた。
アキラはポイントをすべて携帯のバージョンアップにつぎ込んで彼女を作り上げたのだ。
他の誰とも会話せず、関わらず、携帯のみと話す。
前回の戦闘はすべてマリアがこなしていた。
異質な人形遣いがそこにいた。
一番前の右端に座るメイド姿のシズクの隣に座る。
マリアはアキラの後ろで物言わず立っている。
「久しぶりね、アキラ」
「マリア、今日もたくさん壊そう。マリア」
シズクの声がアキラの耳には届かない。
ブツブツと小声で背後のマリアに話しかけている。彼にはマリア以外のものが見えていないのか。
「始まるな、カムイっ、二人で戦うのは久しぶりだ」
ラスが左隣に座るカムイに話しかける。
静かにうなづくカムイ。
初期メンバーの中でも二人の力は群を抜いている。
クリスがカムイは何度もクリアしてゲームを繰り返していると言っていた。ラスはどうだろうか。彼女の強さもカムイに近いものがある。
ならば、やはり彼女もクリアを繰り返しているのか。
『出席番号1番 カムイ君』
「......ハイ」
カムイの名が呼ばれ返事と共に消える。
いよいよ始まる。
『出席番号2番 ラスさん』
「はい、はい、はーーいっ」
元気よく返事してラスも消える。
「前のミッション、ワタシ達が行ったらほとんど終わってたのよね」
ルカの左横の席、オカマのクリスが言う。
「急がないとポイント全部あの二人に取られちゃうわよ」
前回カムイはB組にいた。
ラス一人でミッションをクリアするくらい強いということか。
『出席番号4番 シズクさん』
「よしなに」
『出席番号5番 アキラ君』
「マリアと共に」
シズクとアキラ、そして機械人形のマリアが消える。
返事、ハイじゃなくてもいいのか。
行くという意志が伝われば転送されるようだ。
「ハイド、行くぞ」
携帯でルカが犬を呼び出す。
ギリギリまで出さなかったのは体力温存のためか。
レベル20になり、ルカは狩人の上級職、トラップレンジャーに転職していた。
クリスのスナイパーと違い、銃器は扱えないが罠とサバイバル能力がさらに特化していると言う。
装備はまだ前と変わりないが、以前よりはスキルも増え、強くなっているようだ。
『出席番号8番 カナさん』
「呪(じゅ)」
『出席番号9番 リキマル君』
「ギューーーン」
意味のわからない返事のカナとギターを鳴らして返事をするリキマル。
二人ともちゃんと転送される。
黒板先生は寛大だ。
『出席番号11番 クリス君』
「はぁーい」
クリスが消える。
いよいよ自分の番だ。
A組に来るのは早かったかもしれない。
ルカが上位職に慣れてから。ハジメとアイがもっと強くなってから。本当ならそれからA組に移りたかった。
だが、ラスはクリスを使ってB組に混乱を巻き起こした。
カムイをA組に連れて来る為だけではない。
ラスは何かを計画している。
そして、カムイも何かを隠している。
A組でその真相を探らないといけない。
『出席番号12番 アリスさん』
「ハイ」
A組で初めてのミッションが始まった。
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