第11話 回忌新宿Ⅴ

 とあるビルの一階、そこに誰もいない。神父は入り口から奥にあるエレベーターへと歩いて向かっていた。足音はロビーに響く。エレベーターは3つあり、一つは勝手に開き、まるで彼を出待ちしていたかのように開いた。


「ふむ、自動魔具も悪くないですね」


 エレベーターの外側、御札が貼られており、自身の魔力で自動的に移動しては勝手に開くようになっている。

 彼はそのエレベーターを乗ろうとした時だった。突如と彼の横を何かが高速で飛んでいき、エレベーターの左右の壁の片方に当たった。



「おやおや、私に追いつくとは・・・しかも追いかけてたほうじゃないもう1人ですね」

「えぇ、あなたの仕掛けた魔具回収に手間取ったけど、こうして間に合ってよかったと思ってる」


 私はハンドガンを片手に彼に銃口を向けていた。彼がここに向かうのは彼と遭遇した時に私は知った。彼はエレベーターに乗るのを止め、こちらへと振り向いた。

 私は回収した釘を全て地面に落とした。それを見た彼は少し険しく驚いていた。


(どういう事だ。呪縛が発動しているはずでは・・・いや、全て抜いてるなら死んでいてもおかしくない。これは個体差による影響なのか・・・?)


 何を思ってたのか、彼はすぐに先程の睨みつけるような瞳へと戻した。


「よく、ここが分かりましたね」

「まるで魔法陣でも描いてるように設置されていた。その中心に何かがあるのは明白でしょう」

「まあ、あなたを相手する予定はなかったですが・・・そうですね。まだ時間は早いですし、少し相手してあげましょうか」


 彼は右腕を前へと出した。


「我が名は『アグラ・バルーチャ』、対魔術戦線の1人である!!」


 彼は何らかの行動を起こそうとしていた為、私はすかさずに右腕を狙おうと標準を合わそうとした時、私は咄嗟にハンドガンを手放した。足元から突如と鎖が出現し、ハンドガンを貫通させた。鎖は途中で勢いをなくし、地面へと落ちていった。地面に落ちた後、何事もなく消滅していった。

 彼の魔術は発現系魔術、その鎖となると指定の範囲内では鎖を出せる。確か、鎖には種類ごとに数が違うとも書かれていた。彼は一体何本の鎖を出せる。


「ほう・・・とっさに判断でそれを手放しましたか。右腕をもらうつもりで攻撃しましたが」


 彼は自身の左右真横から鎖を出現させ、私に向かって発射してくる。人の動きよりも鎖の動きは早い。私は誰でも扱える汎用魔術を身に付けていた。


魔術加速マジックブースト


 私は鎖の攻撃を早く動きながら、鎖を一本一本交わしていく。右手でナイフを取り出し、鎖の一本を斬った。飛んでくる鎖を反射的に斬っては前へと進みだす。飛んでくる場所も全て分かる。あとは懐に飛び込むだけ。

 あの神父を人間だと思ってはいけない。彼の体内の魔力は何かと混合している。まるで人を捨てているかのような、そんな感じだ。

 胸元にナイフを突きつけようとした時だった。私の腕は鎖によって動きを封じられた。その後、両足両腕ともに鎖によって拘束され、身動きが取れなくなった。


「なかなか筋の良い動き。女性だったので、少し油断しました。ですが、一歩私の方が上でしたね」

「く・・・」

「では・・・忠告も聞かなかった愚か者は・・・制裁を」


 後ろから私の右脇腹に向かって、鎖が貫通した。痛み、熱い、体が焼けるような刺激が私を包み込んだ。体から血が立たれ落ち、口からも血がにじみ出てくる。その後、鎖は消滅した。私はその場で倒れ込み、動こうにも体が動かない。


「う・・・ぐ」

「じっくりと痛みながら死になさい。それがあなたの罰ですから」


 神父は後ろへと振り向き、エレベーターへと乗っていた。ドアが閉まる頃、誰かが後ろから入ってきた。

 私に気づいたのか、誰かがこちらへと駆け寄ってくる。それが誰なのかは分からない。もう痛みで意識は朦朧状態だったからだ。


「白御原!!」

「・・・」


 声は聞き取れない。聞き取ろうとしても、もう何も聞こえない。体を持ち抱えられながら、私は意識を失っていった。


「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・行かないと」

「藤崎、無事か」


 白御原が意識を失った後、彼女は立ち上がった。ちょうどエレベーターが一階へと到着したのか、開いていた。藤崎はそこへと行こうと歩き出した時、そのタイミングで、奄美がつい先程到着し、彼女へと声を掛けた。

 奄美も足を止め、状況を理解する。


「・・・気を失ってるだけです。ですが、命に危うい状況です」

「確かにこの状況はやばい。応急処置だけはしておくから、早く追いかけて」

「・・・すみません」


 藤崎はエレベーターへと入り込み、ドアはしまった。そして、既に押されていたのか、上へと向かって動いていった。

 奄美は倒れている新米の治療するために御札を取り出した。


「回復」


 魔力でただ血が出ないように塞ぐだけであるが、それでも少しはマシになる。傷口は小さいがこれ以上地が出続ければ、いずれ死ぬ。あとは緊急信号を出せば、この子を見つけて治療してくれる。それまで生きてくれれば、いいのだから。

 奄美がここに来れたのも、新宿で起こった光の場所を印し、全てがここを指していたのを突き止め、急いで来た。その時には既に終わった後だった。


「こんなところね・・・エレベーターは使えないから階段になるか・・・」


 止まっていても駄目。彼女は階段の方へと走っていた。



 外では今でも魔獣が暴れていた。近くにいた数名の魔術使いがその進行を止めていた。そこへヘリが何台も上空を飛び交う。


「到着次第、各自投下せよ。魔獣は待ってくれない。避難している者も救助せよ」


 白御原は無線で叫んだ。それに続くかのように10階建て以上の建物ぐらいある高さから次々と飛び降りていく。地面に到着しそうな所で、魔力によって落下中の速度を減速させ、地面に到着する頃には少し風で浮いているような感じで着地した。

 すぐに武器を持っている者はそれを取り出して、魔獣へと襲い、持ってない発動型の者達はすぐに攻撃を開始した。

 白御原も飛び降り、自身の魔術で着地した。そして、持っていたナイフを取り出し、他の者達に続いて行動を開始した。それと同時に端末が震えだした。

 耳に当てていたヘッドマイクに繋ぎ合わせ、それから端末に入った着信に出た。

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