第3話 魔術使いⅢ

 朝、日差しが私の顔に当たっていた。昨日の出来事もあり、奄美さんは事務所に私を泊めてくれた。あんな光景を目にしては眠れないと思うが、私はぐっすりと寝ていた。

 ボサボサの髪を整えるために事務所にある洗面所の所へ向かった。

 昨日はあまり未定な事務所の中、紙が何束にもなって積み重なっている所が度々あった。掲示板だったり、PCが3台ほど並んでいたりと、それなりには整えられていた。

 洗面所で顔を洗い、髪の毛をある程度整えた。洗面所から出た所、そこに奄美さんが部屋に入ってきた。


「調子はどうだ?ぐっすり眠れたか?」


 コンビニで買った袋を客間にあるテーブルに置き、私へと声を掛けてきた。


「はい。なんとか、疲れは取れた感じです」

「そうか。朝飯買ってきたから、これ食べるといい。あ、私の分もしっかり残しておいてね」


 奄美さんはそのまま奥に行き、来ていたコートを壁にある服掛けに掛けていた。私はその間に何を買ってきたのか、袋の中身を見てみた。

 コーヒーやカフェオレ、パンが数種類程入っており、持ってみればそれなりの重さが手の平から伝わった。それを元に戻した後、私は後ろにあったソファーへと座り込んだ。

 奄美さんがその中から適当に飲み物やパンを取り出し、それを自身のデスクに置き、デスクのイスへと座った。そのままパンを食べ始め、飲み物を飲み始める。

 私はまだ手を付けずにどうしたもんかと思っていたら、


「食べないのか?朝はきっちり食べないと、能は活性化しないよ」

「でも・・・」

「でもじゃない。私の奢りだ。好きなの食べればいい」


 奄美さんの言葉に甘えて、私は袋に入っていた飲み物とパンを取り出し、ゆっくりと口へと運んだ。昨日は何も食べてない。空腹よりも疲れですぐに寝込んでしまったから。時々あるから大丈夫だけど、今後社会人になった時に少々心配だ。


白御原はくみはら燐音りんねさん」

「あ、はい」

「あなたを今日から私達のメンバーとして活動してもらいます。採用形式は表向きはアルバイトになると思うけど。」


 彼女は確信したのだ。今後、メンバーとして最低限に貢献してくれる人だと。昨日の戦いをどこかで見ていた・・・、いや違う。怯えずに私は対応したのを途中から見ていたのだ。だから、奄美さんは彼らにあんなことを言えた。

 私をあの時の行動でメンバーとして加える為に。


「自己紹介まだだったね。私は『奄美あまみ歌穂かほ』、魔術組合所属、奄美事務所社長兼リーダーを努めている者だ。今は2人だけど、あなたを入れて3人になるかな」

「なんでそんなに少ないんですか?」

「つい先月作ったばっかりなんだ。それまでは魔術組合本部に藤崎と所属していたから」


 魔術組合、まるでSFみたいだ。だけど、彼女の瞳からは嘘は見れない。多分、この事は全部本当の話なんだ。私、もしかして面接を受ける場所間違えた・・・いえ、今は悔やんでも仕方ない。ここに私もいる。覚悟の上でここにいる。

 奄美さんは缶を握り、残っていた分を全部飲み干し、一息入れてから私へと言葉を再開させた。


「メンバーになってもらうに限って、色々と私達魔術使いの知識を身に着けてもらわなければならない」

「魔術使いですか・・・」

「魔術使い、私達の体の中には誰もが魔力と呼ばれる力を秘めている。それが覚醒した、偶然発生した、それが魔術使いだ」


 魔術使い、初めて聞く言葉だ。小説やアニメ、ゲームでは頻繁に耳にするが、リアルでそんな人達を聞くことなんて誰が想像できた事か。否、誰も想像は出来ない。表にいる限り、気付くこともない。

 昨日の獣、あれは一体なんだったのか。


「ここに本がある。これを一通り読めば、私達の事を少し理解出来ると思う。何か質問は?」

「では、昨日現れた銃を使った人達も魔術使いなんですか?」

「そうだね。魔術使いには大きく分けて2つの魔術がある。一つは『発現魔術』、私もそうだが、物を実体化して戦う者達だ」

「もう一つは『発動魔術』、こっちは物を実体化せずに戦う人達だ。中には道具を使用して戦う者もいる。例えば、うちにいる『藤崎蒼』がそれに分類する」

「私は魔術なんて使えません」

「君はまだ覚醒してないだけだ。とりあえず、それを読んでみたら分かる。魔術使いに関してや、昨日の『魔獣』の事も詳しく載っているから」


 私はパンを口に入れながら、受け取った

 奄美さんは進められて私は一ページをめくった。魔術組合のマークが描かれており、目次で色々と書かれていた。持っていて分かるが、ページ数は200を超えている。これを全て暗記は流石にきついが、覚えれるところは覚えておいて損はない。

 魔術、魔力を持つ人間がある時突然と発生する力である。それは人それぞれであり、銃器を出現させる者、掌に火をなどを出現させる者、実に100種類以上が確認されている。

 魔術の中でも特に異質と呼ばれている存在『魔眼』、目の色が変わり、今まで確認された魔術の中でも強力であり、謎が多い存在である。

 昨日遭遇した獣、『魔獣』は人の魔力によって自然に生み出される。私達人間の体内だけではなく、空気中にも漂っており、魔力の濃度が濃いと魔獣は生まれる。なお、その濃い場所は人の認識では確認しづらい。魔獣は人を襲い、肉体を奪って魂を食い殺し成長する。そして夜しか活動出来ず、太陽がある場所では体が自然に蒸発、消滅する。よって、太陽がある時は現れる事は一切ない。

 魔術に関してはかなりの種類がある。多分、奄美さんは符系の使い手である。

 銃もハンドガン、アサルトなど色々と豊富だ。銃もあれば、剣や槍もある。大幅的にいえば、発現魔術の方が多い感じに書かれていた。


「だいたい理解しました。てことは私達の活動は夜って事ですか?」

「そうなるね。昼間に本部に顔を出すこともある。ただ、決して夜だけが活動と思わないように。魔術使いになれば、暴れたいって連中もいる事だし」


 魔術を使ったテロとかいそうだ。もし私が魔術でテロを起こすなら、相当な準備をする必要があるかもしれない。そういえば、あるページに魔具とかいう魔術を組み合わせた道具が書いてあったけ。色々とあるせいか、例となるアイテムは一切書かれてなかったけど、そういうのを行使するって事もあり得るかもしれない。


「装備は明日にでも用意しておくさ」

「私の・・・武器ですか?」

「そう。君は今の時点では魔術使いじゃない。だけど、私達の一員には変わりない。それなりの装備はしておかないと、いつ戦闘になるかもわからない。手ぶらだと余計に邪魔になる」


 はっきり言う人だ。だけど、本当にそうなのだから仕方ない。今の私では足手まといが精一杯だ。昨日のあれだって、運良く事を運んだに過ぎない。私はこの世界魔術使いでは弱者だ。

 だけど、私もここで雇われるなら、覚悟はしておくべきだ。戦闘でいつ死んでもいいように身を固める必要がある。


「おはようございます。あれ、2人とも起床されてますね」


 その時、昨日魔獣に止めを刺した赤目の女性が一室へと入ってきた。背中には剣道部が使っているような竹刀袋を背負っていた。長さで言えば、150cm程の大きさ。彼女の背も160cmを超えているので、大きな長剣を持っているように見える。

 この人が言っていた藤崎って人、美人で髪も長い。私よりも魅力ある人だ。そう思うと、私は魅力のない女性になっちゃうか。


「来たか。藤崎、まだちゃんと自己紹介してなかったね」

「そうですね。彼女、ここに連れてきた後すぐに倒れ込むように寝ましたから」

「彼女は白御原燐音、昨日はとっさだったけど、正式に今日からうちのメンバーだ。だけど、まだ魔術使いじゃない。度胸はある方だと心に刻んておいてくれないか」

「分かりました。私は藤崎ふじさきあお、年も近いし、仲良くしていきましょ」

「よ、宜しくお願いします・・・」


 美人な上に言葉使いもきっちりしている。

 でも、これからこの人ともに行動するとなると、色々と迷惑掛けるだろうなって思ってしまう。昨日見ている時、持っていた剣が相当使い込まれたように見えたから。


「よくよく見ると、結構綺麗な子ですね」

「ふにゃ!?」

「驚いた時の声もいい。うん、良い時間ですし、少しこの子借りますね」

「あまり、楽しまないようにね」


 私はそんなに綺麗な女性じゃない。藤崎さん・・・いえ、藤崎先輩とは違って私はただの女性に過ぎない。少し驚いて、いつもの癖の言葉が出てしまった。

 ただ、手を引っ張られる形で私は立たされ、そのまま外へと連れて行かれた。

 それを奄美さんは後ろ姿の私達を見ていた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます