第39話 健康的なドラゴン退治

ユーゴさんいわくギルドにいるより健康的なドラゴン退治に向かっていた。ランク1の森でドラゴンが出たらしく、現在立ち入り禁止だ。

イーストシティのランク1冒険者の食い扶持はほとんどこの森で賄われているので早く倒さないと経済的に大変だ。ただでさえ今は危ないときなのに。


懐かしのぷよぷよ(青)を踏み潰して進んでいくが、イアンが言うにはまだまだ先らしい。最果ての森をそんなに奥まで行って大丈夫なのか気になるところではあるが、イアンがいれば大丈夫だと信じてる。



「また飛竜なんだ、しかも同じやつ?」

「カコが言っていた居住地に何かいるというのも有り得るかもしれないですね」

「えー、それ、凄く不味いやつじゃない」

「もしくは前回同様に召喚士か操り士がいるのかもしれないですね」

「どっちにしろ危険…」



ドラゴンが逃げ出したくなるぐらい強い魔物、それこそ魔族だろう。それも大問題だし、召喚士や操り士だって魔族だ。いたら大問題、しかもこんなに近いところで。

どちらにしろ問題になる。私にはちょっと荷が重いような気がするんですけど。


レオナルド殿下についた魔族は微妙なとこで抜けているが、イーストシティを挟み撃ちにしている点では凄くいい案だと思う。


元からイーストシティは対魔族のための要塞でそのための人材、ギルド長とユーゴさん、そして教会の重鎮がいるらしい。そこを最果ての森側から攻めても落としにくい。

そこで王都を落とすためにイーストシティを攻めるのではなく、イーストシティを落とすために王都からと森からの挟撃作戦でいくという、敵ながら天晴だ。



「えい」



適当な言葉でもそこそこの威力を発してくれる投石のおかげで、近づこうとしていたダークバードはまとめて3羽撃墜された。拳銃顔負けの速度だが、一体どうなってるんだろう。とりあえず一石三鳥。


ダークバードの数が多いのは飛竜が降りてきているからか。同じ飛ぶもの同士、場所が被ったら弱いやつが追い出される方式は別のところにも問題を起こしている。

カサカサとダークバードが飛んでくる音がした方向に「えいえい!」と適当に石を投げつける。


ダークバードに対してメテオストライクされても困るからかイアンは微妙な顔をしながらも何も言わない。


なお、防衛戦のときに使った、上に打ち上げる流れスターダストはイアンにより改名された。流れ星が下から上に行くのはおかしいからと、花火ファイヤーフラワーに改名された。

イアンはかなり中二病的ネーミングセンスに優れている。適当なこと言ってるよりも私も決まった…!という気分になるし、いい感じだ。



「人がいた形跡がありますね」



見覚えのある洞窟のところで立ち止まった。

私が荒らした覚えはあるが、ここまで変えた覚えはない。岩が大きくえぐれて、座るのに丁度よさそうな丸い窪みになっている。私はこんなに大きなお尻はしてない。


ふーん、と思って見ていたら上から炎が落ちてきた。



「イアン!」



川から離れて森の方に避けると前に倒した飛竜よりも大きな竜が降りてきた。黒々とした光沢のある鱗が陽の光を反射して、鉤爪や牙は獰猛に磨かれている。


わあお、立派な竜だこと。戦う気満々じゃない。



「名前持ちの竜です、黒竜ゴッドフリット」



名前を呼ばれたのに応えるように黒竜ゴッドフリットは咆哮をあげた。


名前持ちの竜というのは以前に冒険者が挑んだことのある竜という意味だ。傷の位置や珍しい鱗の色、魔法の色合いでわかるらしい。

もちろん私はそんなドラゴンのリストなんて覚えているわけもない。一通りは見たが、暗記するのは数が多くて諦めた。



「メテオストライク《隕石》」



ポーチから鉄球を出してゴッドフリットに投げつける。ゴッドフリットは避ける素振りもなくその鉄球を真正面から食らった。


すぐに槍を伸ばして次の攻撃に備える、イアンも精霊に呼びかけて大きな魔法の行使に備えながら火のファイアを打ち込む。

メテオストライクの威力はいいんだけど、この粉塵で相手が見えなくなるのがいつも困る。


首の後ろがチリチリ焼けたような痒いような感覚があった。敢えて粉塵の方に飛んでいくと私がいたところをブレスが舐めていた。いや、あれは死ぬ。あっという間にHP0になるわ。



「アトラトム《投槍》!メテオストライク《隕石》!」



粉塵の晴れたところに出てきた竜に私の投てき系で今のところ一番強い技を2つとも打ち込んだ。


不思議なことに、ゴッドフリットはまた直撃した。イアンの火のファイア火矢フレイムアローは器用に避けたり、尻尾で叩き落としたりしているのに私のやつは避ける仕草すらしない。


変だなと思いながらもメテオストライクをもう2回叩き込んでからゴッドフリットから距離を取った。あの鱗に鍛冶屋見習いの剣で挑みたくない。



「土のアースウォール、神の怒り《ゼウスの一撃》」



粉塵で位置がわからない竜を丸ごと土の壁をドーム状にして覆い、閉じる前に雷の一撃を加えた。直後、地面を揺するような轟音がして土の壁が崩れた。



「前からメテオストライクの粉塵を利用したいと思っていたんです」

「イアン、すごいね…」



精霊を使って粉塵爆発を起こさせて、それをさらに土壁に閉じ込めて圧縮するというえげつない攻撃をしたイアンは私に褒められて嬉しそうに微笑んでいた。


もちろんこれだけ焼き尽くす攻撃を仕掛けたらドラゴンのアイテムは牙や鱗といった炎に強い部分しか残っていなかった。核である魔石は燃えるらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る